馬鹿騒ぎする男子
班で向かい合わせの席になって給食を食べている。雨霧とは朝から一度も顔を合わせていない。授業中に一度だけ目が合ったけれど、向こうから目をそらした。失礼で生意気でとんでもなくむかつく！ 雨霧のくせに！
「つぐみちゃんなんか今日調子が悪い？」
恵子ちゃんが話しかけてきた。
「えっ、どうして？」
「朝からずっと静かだし……ねー！」
「だな。日笠がおとなしいと調子が狂っちまうぜ！」
「どうして私がお騒がせキャラみたいな扱いになっているのよっ！」
私は牛乳を飲み干し、紙パックを握りつぶす。
私がおとなしいと調子が狂うという変態の鶴田は三バカトリオの一人。雨霧の兄貴分みたいな存在のヤツだ。
少し残っていた中身が握り拳を伝って机にボタボタと落ちている。
鶴田は見て見ぬふりを通すつもりらしい。
優しい私の友達である恵子ちゃんは少し引き気味に――
「……じゃあさ、久しぶりに昼休みに遊ばない？ いつものメンバーでドロ警をすることになっているんだ。良かったら雨霧君も誘っていいから」
「雨霧？ はあーっ！？ そんな人このクラスにいたのかなぁー？」
「……つ、つぐみちゃんどうしたの？ あっ、雨霧君とケンカしゃったとか？ まさか別れちゃったとか？」
「ええーっ！？ おまえら別れたってぇー？」
鶴田の声は教室中に響いた。
皆の視線が私たちの班に集まる。
「ちょとやめてよー、そもそも私と雨霧は付き合っていないって言ってるじゃない……」
私は小声で鶴田と恵子ちゃんに話す。
確かに私と雨霧は誤解されるような行動をしてきた。それはこの際だから正直に認めよう。でも、私たちには何もなかったし、これからだって何もあるわけがないのだ。永遠に！
「あっ、鈴木君ありがとう……」
鈴木君は私の席にこぼれていた牛乳をティッシュで拭いてくれた。
「じゃあさ、俺たちはいつものようにサッカーしようぜ、なあ雨霧！」
鶴田が離れた席の雨霧に声をかける。
雨霧はゆっくりこちらを向いて、私に視線を送ってきた。それは何というか……変態が獲物を物色するような目だ！
「そだな……俺も久しぶりに暴れたい気分だ。今日の昼休みは俺たちで校庭を独占しようぜ――ッ！！」
「よく言った雨霧！」
「やったるぞぉぉぉー！」
「おおーッ！」
三バカトリオが中心となってやんちゃな男子達の祭り騒ぎが始まった。
ほんっと男子ってバカばかり。
「鈴木君はあんなバカどもには……」
と話しかけようとしたら、彼はもういなかった。
バカ騒ぎしている集団の中に取り込まれていた。ちょっと困った表情をしている彼に、私は心の中でエールを送ったのだ。
