9話がひれふしました
遅くなりましたが、更新頻度は戻します
あの戦いから、3日が経った。
なんでこんなに時間が過ぎたかというと、新チーム結成の手続きが、面倒だったからだ。
顧問に関しては、うちの担任の佐藤先生と事前に話をつけていたのだが、いかんせん新しいチーム自体が珍しいものなので、書類等で結構手を患ったし、なにより戦った日は返してしまったが、チームを作る時には、創設チームの全員も、似たような書類を書いてもらわなくては行けないらしく、それでも面倒だった。
「お、終わったのか?」
「おー、やっとこさ終わらせたよ……」
「おつかれー」
気楽に声をかけてくれるヤシルにやっとこさ返しながら、俺は顔を上げた。
「それで、メンバーはあの子達で決まりか?」
「ん?まだ疑っていたのか?」
「いやぁ、未だに新チームが作られた、ってことが信じられなくてね……」
佐藤先生に聞いたところ、ここ5年は新チーム結成なんて全くなかったらしく、書かされた書類も、ところどころホコリをかぶっていて、正直難儀だった。
「それで」
ずい、と顔を近づけてくるヤシルに対して、俺は少し後ろに体をそらす。
「最後のメンバーくらい教えろよ」
「あら?言ってなかったか?」
「そうだよ、ずつと気になっていたけど、お前があんまりにも忙しそうな感じだから、聞かないでやったけど」
「おうおう、話すからそんな目で見んなよ」
そう、魔戦は基本、5人で行われる。
4人のフロントと一人のオペレーターで行われる。
そして、誰がオペレーターになると入っていないが、俺以外に呼んだのは、3人。
つまり、俺はもう1人誘っていなければ、チームを作れない。
「何してるの?」
と、そこで丁度いいことに、横からひょつこりとレイナが顔を出してきてくれた。
その事に俺は丁度いいとばかりに、レイナを指差し、
「こいつ」
「えぇえぇぇええぇ?!」
「うるさいよっ!」
ボコッ、とレイナから叩かれながらも、未だ驚いた顔を継続するヤシル。
その顔に俺は笑いを零しながら、
「ぶふっ、やっぱりお前は驚くと思った」
「いや、だって…………」
「あー、そっか、私はオペレーターででるよ」
レイナはヤシルの言いたいことを理解したのか、簡素に説明する。
賞美院怜奈。
彼女は稀代の天才として呼ばれることが多い。
魔力がなぜ魔力足り得るのか、というテーマに対して、とある論文を発表したせいで、この学園では、学生かつ研究員というポジションの人間である。
しかし、本人の魔法の適性は60と平均の学生並だが、彼女の特殊な魔力操作は、そんな適正なんてどうでもよくなるくらいにすごいものだった。
他人の魔力の掌握。
彼女は微かな例外はあれども、視認した魔力を操作できる。
それは、今までの魔戦なんてどうでも良くなるくらいには大変な能力で、入学した当初は、引っ張りだこだったし、彼女自身も、魔戦というものに興味があったが、魔法省から、あまりにもチート過ぎるから駄目、というお達しが出てしまい、彼女は泣く泣く魔戦に関われないでいたが、
「ほれ!」
「ん?なんだこの写真……」
レイナは嬉しそうに携帯の写真をヤシルに見せる。
ヤシルはその写真をマジマジと見ると、
「…………まじ?」
「マジもマジ、大マジ」
そこには、魔法省からの直々のお許しの書状。
俺はレイナに頼み込んで、幾ばくの実験の資料と、実験への献身的な付き合いで、レイナの能力はオペレーターの場合は使えないということを証明した。
…………まぁ、間違って使っちまった場合は、判明次第俺らが無条件で敗北、って条件もあるけどね。
「これでレイナさんは念願の魔戦進出なのです!」
ふんす!と答えるレイナに、ヤシルは俺の方を見て、
「ずるい!」
「…………魔力切れって、70回超えたくらいから、息をするように出来るんだぜ」
「…………」
魔力切れは、普通の人がなると、気持ち悪くて立てなくなっちゃうんだけど、それをレイナと限界を見つける実験に付き合うのは、死ぬかと思ったな……。
なんて思っていると、ヤシルは納得したように俺の顔を見て、苦笑いを浮かべる。
「ま、俺は俺なりに頑張ってレイナを引き入れたの」
「まぁよくやったわな」
「私は終始万々歳!」
ビーズをして快活に笑うレイナに、俺は溜息をついていると、
「あ、じゃあ来週の土曜日、2時から練習試合しような」
「おー…………ってどういうことだ?!」
「おー、やっしー強気だねぇ」
レイナはヤシルの言葉に小さく拍手をするが、俺はそれどころではない。
「いや、早くない練習試合?!」
「まー、早いけど、早いうちに、練習くらい、しておきたいだろ?」
俺はその言葉に歯噛みしてしまう。
正直、生命のメンバーは、一人一人自体は強くないのだが、まとまると強い。
正直、メンバーが少なすぎてどうするか俺は悩んでいた。
猟犬は、個人の戦いに重点を置くため、人数は必要なかったのだが、普通はチームは10人いるのが理想的だ。
チーム内で、試合をすることが出来るから。
俺は目の前に大型チームで練習相手として丁度いい存在を束ねる人間を目の前にして、
「おねげえします」
平伏した。
次話にご期待くださると、嬉しいです。