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8話目で始動します。

後に数メートル吹き飛ばされる。

思考が真っ白になりかけるが、頭をフル回転させる。


身体強化魔法を発動。

さらに電気魔法の出力をあげる。

あいつが出し惜しみしないなら、それを耐えるのみ。


そうして見えたのは、拳。


「どらぁ!」


眼前に咄嗟に張った障壁は、威力を殺してくれたおかげか、後に飛び退くことで、ダメージはない。

プロテクターの魔力を確認する間なんて取らせてくれるわけもなく、次の拳が来る。

格闘の心得は多少なりともあるが、それでこいつの本気モードをさばききれるか、と言われたら、正直自信が無い。


なので、それに追加して、俺は両手に青の魔力を展開する。


正直、これ以上魔力を使うと、しんどいを通り過ぎてかつための魔力が切れてしまうのだが、それでも負けるよりかはマシだ。


「はっ!またパクリかよぉ?!」

「悪かったね!」


両手で発動したのは、ヌルッとした液体を出す魔法。

これは、中堅チームの一つである流水(フロウ)というチームの1人が使う魔法で、格闘に対しての受け流しを用意にする魔法だ。

一応として頭に入れておいたけど、即座に使えてよかった。


「そこに!おめぇは!ねぇのかよ?!」


迫り来る拳。

なんとか防御するだけで精一杯になってしまう。

そこで聞こえてきたケンの言葉に、俺は方の力が抜けた気がした。


「俺の、戦い方、ね」

「そうだよぉ!」


ケンは蹴りを使って俺の土手っ腹に再度ダメージを食らわせる。

感覚だと、あと1発もらうとプロテクターの魔力は尽きる。

つまり、敗北。


それなのに、俺ができたことといえば、ケンの攻撃にヒィヒィ言いながら防いでいただけ。


俺はここに何をしに来た?


気づくと、目の前にはケンが現れた。


そして、俺はひとつの魔法を使った。


倹約家(エコ)


瞬間、ケンの拳は俺を透けた。

ケンはその事に驚いているのだろうが、そんなことに時間は使っていられないのか、ラッシュを繰り出す。

しかし、既に俺はそこにいない。


「がはっ?!」


すると、俺ではないうめき声が聞こえる。

そう、俺ではない。

つまり、


「てめぇ!何を使った?!」


ケンの呻き声だ。

背後からの攻撃。

確かにケンはそう感じただろう。

しかし、後ろを向いても、俺は見えない。


「がはっ?!」


さらに背後からの攻撃。

ケンは振り返り、叫ぶのをやめ、1歩も動かなくなる。


耳を澄ませている。


物音。


「そこだぁ!」


ケンの本気モードでしか使えない技のひとつ、空牙。

魔力をまとわせた突きによって、その尋常ならざるスピードから出される衝撃波は、ケンの持つ唯一の範囲攻撃とも言える。


だが、


「いねぇ……」


息が上がるケン。

そろそろ時間が近づいてきているのだろう。


俺はケンの背後から姿を表す。


そして、一瞬で詰め寄った。


「ふざっ」


確実に当たる距離。

だが、あいつは、


「けんなぁ!」


振り返って見せた。

当たれば終わる。

それを知っていて出た勝負。


本当に俺が、そこにいると思ったか?ケン?


「てめぇは……」


頭上を見上げるケン。

そこにいた俺は、ケンのその体を、雷の魔弾で、貫いた。


「何をしやがったんだ……」


それと同時に、試合は終了を告げた。











「お疲れ様」


俺が試合を終えるなり、ヤシルがタオルを投げてきた。

俺はそれをキャッチして、顔を拭く。


「まさかなぁ、お前が勝つとは……」

「信じてなかったんか?」

「いーやまさか、お前が魔戦において嘘をつくような人間ではないと思ってたよ」

「だーかーら、お前は人の目を見て言葉を話せんのか?薄情者!」


俺がヤシルを締め上げていると、後ろの3人に気がつく。


「お、見てくれたかい?」

「……はい、お疲れ様でした」

「…………お疲れ様です」

「おつかれっす」


どうやら聞きたいことがあるらしいけど、人がいる手前聞くに聞けないらしい。

しかし、


「おいおい、あんな隠し玉、どこで練習してやがったんだよ?」


後ろからかかる声への驚きに、俺は唖然とした表情になる。


「え、あ、お前、後遺症は?」

「あぁ、それならお前と試合するってんで改善してきた」


もとから直せる要素はあったしな、とにこやかに言うケンに対して、俺はポロッと、


「じゃあもし俺がお前のばてるのを狙っていたら……」

「確実に俺の勝ち」


こいつ……わざと疲れた振りしてやがったな……

俺はそんなケンに対して睨みを効かせていると、本人もその睨みに気づいたのか、


「おいおい、お前も隠し事してたんだし、お互い様だろ?」

「隠し事って行ってもなぁ……」


俺はどこを説明すれば良いのかわからず、ヤシルに助けを求めるが、ヤシルはお前がなんとかしろ、という目で俺を見てくる。


「じゃあ、あの背後からの攻撃は?」

「あー、それね、白魔法にある、光魔法よ」

「光魔法?」

「そう、俺が今日使っていたのは、大体が光魔法」

「光魔法ってーと、白黒(モノクロ)のとこのサブのやつのか?」

「それそれ」


俺が頷いて返すと、ケンは顎に手を当てて、悩み始めた。


「でもさぁ、あの攻撃って、直線上にいないとダメじゃなかった?」

「そこは、まぁ何とかしたよ」


中堅チーム、白黒(モノクロ)

そこは白と黒の適性を持つもの以外は入ることが出来ない不思議なチームで、各々が不思議な魔法を使う。

その中でもサブリーダーの使う魔法は、光魔法といって、速さでいえば高速なのに、融通が利かないせいで、使い手の目線を見たりして予測すれば、簡単によけれるという紛い物の魔法と言われていた。


「なんとかってなんだよ」

「…………言わなきゃダメか?」

「……負け犬の遠吠えだと思って聞いてくれ」

「……………………鏡だよ」


流石に自嘲されちゃぁ俺も後味が悪いと思い、説明する。


「鏡……ねぇ……」

「それだけで分かってもらえるか?」

「……多分、それあいつらも実践してるだろうな」

「…………それはどうかな?」


もしあいつらが白黒で固めているんなら、この魔法の模倣は難しい。


なんたって、鏡には……と思っていると、口に出してしまいそうになるので、俺を変えるため、


「じゃあ、これでおさらばだな」

「……本当に、行っちまうのか?」

「……そうだなぁ……」


正直、ここにいたくない、という訳では無い。

ただ、俺が1番を目指したいがために、やっているだけなのだ。

そして、それと同時に、


「お前らとも戦って見たいしなぁ……」

「は?」

「あ、いや、いつも俺って真似してばっかりだしさ、適正低いし、集団でこられたら返す実力なんてないけどさ」


空を見上げて、俺は本音をこぼす。


「こんな適正に塗れた魔戦を、いっちょひっくり返してやりたいな、って思って」


笑われた。

俺の連れてきた3人以外のヤツらに。

そりゃそうだ。

魔法の成績だけでいえば、劣化版もいいところの最最底辺学生なのに、適正で大体の勝負が決まる魔戦をひっくり返すだなんて、


「いやぁ、お前らしいな」


笑った後にケンから言われたのは、その一言だった。


「は?」


俺は思わず聞き返す。


「いやぁ、お前のおかげで吹っ切れたわ」

「いや、何の話だよ?」

「ん?俺らも本格的に1番目指すわ」

「おいてけぼりにするな!説明してくれ!」

「お前が、1番目指す、適性をひっくり返す、って言葉を聞いて、俺達もやってみたくなった」

「はぁ?!」

「ま、抜けるのは確定だから、お前もう戻るのなしな。

 よし!お前ら!帰って作戦練るぞ!」


おうっ!という威勢のいい返事とともに去っていく猟犬(ハウンドドッグ)


俺はその後ろ姿を見ながら、肩を落とす。

その後、振り返らずに、俺は後ろの3人に問いかける。


「俺は、最底辺だ」

「お前らより魔法の扱いが下手だ」

「だけど、そんな俺でも、1番になってみたい」

「こんな頭のおかしい奴に、それでもついて行こうと、思ってくれるか?」


「「「それよりさっきの魔法何 (ですか)(っすか)?!」」」


おいおいカッコくらいつけさせてくれよ……。


だけど、この日から、俺達のチームは、始動する。


そう確信した。


次話にご期待頂けると、嬉しいです。

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