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7話で既に本気モード

降り立ったのは、森の中。

俺は静かに息を吸って、耳を澄ませる。

大体の奴らはここで身体強化魔法を使うんだけど、あいにく倹約家である俺はその魔力でさえ惜しいと感じてしまう。


…………っ……


聞こえた。

人間の素のままの能力だって、馬鹿にはできないな、と思い音のするほうを見る。

いつも通りに来てくれるなら、嬉しいけど。


俺は静かに魔力を展開する、


が、その魔力は魔法をギリギリ発動できるくらいの極小の魔力。

体に薄い膜が出来ているくらいの魔力。

色は黄色。


「ぁぁぁぁぁぁあああ!」


来た。


あいつの戦法は、基本的には常に同じ。

相手を見つけたら、即倒しにかかる。

奇襲に近い戦法だ。

しかも、あいつは単純に速さのみを求め続けているので、防ぎようがない。


いつもやっている側だけど、やられる方はこんな気持ちなのか。

知っていてもビビりそうだけど、俺は魔法を発動する。


電気の魔法。


これによって身体能力を限界ギリギリまで引き出す。

本当は身体強化の魔法と併用しないと、次の日絶対筋肉痛になっちまうけど、仕方がない。


右からのパンチ。


身体能力的に劣っている面もあるので、ぎりぎりで回避する。


「おいおいっ!俺のパクリで勝てんのかよォ?!」


そのままラッシュに持ち込むケン。

基本的にはボクシングの型が中心で、蹴りで自分の隙を潰して戦う戦法は、適性の高さとそのスピードから、一対一では最強なのでは?と言われるくらいの練度を持っている。


そう、俺の使っている黄色の電気と身体強化のブレンドした魔法は、もとはケンが好んで使っている魔法だった。

それを身体強化なしで立ち向かっているのは、無謀すぎるが、それでも、ギリギリでも避け続けることが出来ているのは、


「だから勝てないんだよ!お前は!」


似ている。

何回もコンビを組んでやって来ているからわかる、動き。

規則性がある訳では無いが、当たらないのを受け入れている動き。


一つ一つに、倒そうという気概がない攻撃。


そんな攻撃で、倒されるわけがない!


「ちっ……」


ケンは一旦後ろに下がる。

すると、ケンは自分の違和感に気づいたのか、自身のプロテクターを見る。


「こっの……」


ケンのプロテクターの魔力は、たしかに減っていた。

全体から見れば2割程度だが、確かに削れていた。

俺は自身の魔法が成功したことにより、ニヤリと笑う。

それに触発されたのか、ケンはさっき以上の出力で、こちらに向かってきた。


俺は事前に準備しておいた魔法を続々と発動させる。

しかし、


弾かれたっ?!


さっきから使っていたのは、通常自分の手の届く範囲でしか存在できない魔力を、練習によってある程度離れていてもその場に残るようにした魔力で、遠距離からの魔法の発動をして、プロテクターを削っていたのだ。


一応名前としては置く魔法、と言っているが、それが弾かれた。


ということは、


「魔装まで使ってるのかよっ?!」

「相手にとって不足はねぇ!」


もうちょっと油断してくれれば、プロテクターがもっと削れたのに、と俺は歯噛みしながら、一旦放出した魔力を集めて、後ろから赤の炎の魔法を浴びせる。


魔装とは、適性の高い者達が好んで使うもので、これがあるのとないのどでは、かなりの差がある。


魔装とは、体の表面に密度の高い魔力を展開させ、プロテクターの上にそれを作ることによって、プロテクターの魔力が減る前に、自分の魔力を犠牲にすることが出来る。


しかし、この魔装は、適性が90くらいないと、すぐに魔力が枯渇して使いものにならなくなってしまう。


「効かねぇ!」

「しってる……よっ!」


稲妻を迸らせて放つ拳にかすってしまい、プロテクターの魔力が少し消えた。

さっき俺がちまちま削った分と同じくらい減ったのを感じて、ちょっと悲しい気持ちになるが、即座に俺は魔法を使う。


「くっそ!」


スモッグ。

光学迷彩。

消音。


黒と白と緑の魔法を一気に使った。

これで離れると思わせる。


背後に回った俺は、ケンを後から殴る!

拳に込める魔法は、衝撃が貫通する魔法。

直接触らないと使えないけど、使えればプロテクターの魔力はごっそり削れるはず!


「分かってたっ!」


ケンはまともに食らうが、手応えがない。

おいおい……


「やっぱりやってて正解だったな!」


こいつ、もう本気モードかよっ!


「早くないか?!それ?!」

「短期決戦じゃねぇとお前は最大に面倒だ!」


体からバチバチと稲妻が迸っているケンの瞳は、爛々と輝いている。


限界を超えた身体強化魔法と、電撃強化魔法。


こいつの本気モードは、3分間という制限を付けられていて、それ以上は体がもういうことを聞かないくらいの諸刃の剣だし、次の日は絶対安静にしていないと行けないほどの代物だ。

それなのに、今使うのか?!


俺は狂った予定を着々と立て直すために、隠れようとするが、


「がはっ!」

「にぃがぁさねぇよぉ!」


魔法を発動しようとした瞬間に、俺の土手っ腹には、ケンの拳が当たっていた。


次話にご期待頂けると、嬉しいです。

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