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6話は6色の6話であるのだろうか?

「おっ、イサナの被害者じゃん」


意気揚々と声をかけるヤシル。

それは、イサナの試合が始まる少し前。

ヤシルは昨日あった猟犬(ハウンドドッグ)と何があったのかをイサナから聞き出し、野次馬根性……ではなく、単にイサナが意味でひたすらに隠していた真の実力を見るために、ヤシルはここにいた。


「あっ、こんにちは」

「うっーす」

「……こんちは」


声をかけられた3人は、ヤシルの姿を見るなり、挨拶を返す。

ヤシルは緑魔法で1番の使い手と言われるだけあり、割と有名なので、顔が後輩に知られているなどよくある事だった。

ヤシルは2個ほど隣を開けて席に座り、頬ずえをついてフィールドを見る。


そこには、真剣な表情の猟犬(ハウンドドッグ)のメンバーが、必死に最後の調整なのだろう、話し合いをしている。


「あ、あの」


ヤシルしかいない現場にかけられた声に、ヤシルはそちらの方に顔を向けると、そこにいたのは、ロングヘアーの巨乳眼鏡っ娘。


「あーと、何さん?」

「あ、私、1Aの小日向作花(こひなたさつか)、といいます。

 魔戦とかには全然関わってないけど、よろしくお願いします」

「あ、いやいや、別に魔戦してなきゃここにいちゃいけない、なんてことないし、もしかしたら3人ともこの勝負の結果によっては魔戦に関わらなきゃいけなくなるんでしょ?」


その言葉を聞いて、ほかの2人もヤシルの方に顔を向ける。


「そ、それなんですけど、この勝負、音頭さんは勝てるんですか?」

「…………というと?」


ヤシルはイサナから、イサナ主観での話しか聞いていない。

なので、正直気になっていた。

この3人が、どんな心持ちでこの話を持ちかけたのか。


「正直、私たちとしては、勝敗は二の次なんです」


その言葉に、ヤシルはある懸念が走る。


「…………最初から入る気はなかった?」

「いえ!そういうことじゃなくて!」

「あ、いいっすか?」


サツカがわたわたと慌てている様子を見かねたのか、助け舟を出したのは、つり目のちゃらそうな男の子。

ヤシルはそっちの子が説明してくれるのだろう、と目線を向ける。


「俺は2Bの只伊武助(ただいぶすけ)っす。

 特に所属とかはないっす」


やけに軽そうに話してくる彼に、本当に説明できるのか?というそもそもな疑問を抱き始めるヤシルに対して、イブスケは、


「俺らは、魔法に関してはかなりの興味があって、魔戦よりも、音頭さんの使う魔法に興味があるんすよ」

「魔法?」


確かに、魔法に関しては全色使いというだけあって、イサナは多彩な魔法を使うが、もしかしてこの子達も全色使い?と考えていると、


「だから、結果は二の次で、音頭さんの魔法が見れたらまずオッケーなんすよ」

「…………それじゃあ最初から入るつもりは無い、ということかい?」

「いえ、最初から入るつもりではあったっすよ」


は?と思わずヤシルはアホな顔をしそうになるが、慌ててその理由を聞こうとした瞬間、


「さたでーないとぉぉぉ!!!」


ヤシルの首の後ろから衝撃が来た。

まぁ、本人が軽いのもあるので、大した痛みではなかったが、その犯人に対して、ヤシルは睨みをきかせる。


「れぇいぃなぁ!」

「あひゃひゃ!やっしー怒った!」


笑っているレイナに対して、ヤシルはげんこつの一髪でも食らわせてやろうか、と思ったが、こいつが来たってことは、


「イサナが来たのか」

「おぅ!起こしてきたんですよォ!」


割とレイナは頼むとしっかりやってくれるのだが、その言葉以上にふざけて返してくるから、頼みたくはない、とイサナとヤシルで言っていたが、試合の日などは、よく寝坊しないようにレイナに頼み、いつも痛い目を見ている。


「今日はどうやって起こしたんだ?」

「バズーカ!」

「家は?」

「対策されてたの……」


しょぼん、としているレイナに、ヤシルは驚く。

レイナの突発的な行動を防げた、ということは、それ以前に起きていたという可能性が高い。

つまり、それほどに、


「準備は?」

「負けはないね」


その言葉に、ヤシル以外にいた後ろの3人も驚いていた。


「さ!始まるよ!」











「あの、これって……」


サツカの言葉に、ヤシルは丁寧に答える。


「あぁ、まず、魔戦のルールは、あのさっきイサナが投げられた推奨に溜まっている魔力が尽きたら、そいつは脱落、ってのは知ってるよね?」

「はい……」


サツカはこの学園にいながら魔戦について詳しくないのだろう、フムフムと真面目に聞いている。

その姿に、あんまり周りにいない人種だな、と思いながら、説明を進める。


「それを5対5で戦う。

 基本、オペレーター、っていう係を1人つけたりとかするから、オペレーターはなし。ハンデは偶にある時はあるけど基本はなし」

「オペレーターは……後で調べときます」


別に気を使わなくてもいいのに、と思いながらも、自分で調べるというのは、魔法使いにとっては重要な事なので、ヤシルはあえて説明はしない。


「あの…………」

「ん?なんだい?」

「あ、1Cの龍堂火桜(りゅうどうかざくら)、といいます」


前髪で目の隠れた根暗そうな男子は、ヤシルに質問する。


「俺ら、最初に音頭さんがどんな人かって調べたら、すごい悪評が高かったですけど、どんな人なんですか?」

「あー、あいつの事だから……ねぇ…………」


イサナの評価はまっぷたつに割れているのを知っている身からすれば、可哀想になってくるヤシルだが、本人いないしまぁいいか、と話し始める。


「基本、猟犬(ハウンドドッグ)は、全員の色を統一していないけど、速さ、っていう一点に力を入れてるチームなんだよね」

「それは、事前に聞いたんですけど、それでなんで補欠って言ってる音頭さんがなんでさんざん言われてるんだろうなぁ、って」


そこまで聞いているのに、俺に聞くのは、本人に直接会ったからなのかは分からないけど、そう聞いたら、普通そういう認識になってしまうと思ったが、とヤシルは思いながらも、


「まず、あいつは世にも珍しい全色魔法使い、ってのは知ってるか?」

「あー、魔戦やってるやつらが憎らしく言ってたね……」

「全色使いって、6色全部っすか?」

「そうそう、6色全部」


あんま長ったらしく説明するのもあれだな、と思い、ヤシルはスパッと言うことにし、


「あいつは、基本的には猟犬(ハウンドドッグ)の基本であるスピードを重視しながら、的確に相手の嫌な色の魔法でネチネチ攻めるのが大得意なんだ」

「それでなんであんな恨まれてるんですか?」

「この言い方だったらどんな敵にも勝てるように見えるけど、中堅以上のチームは、魔法の得意不得意だけでどうにかなる次元じゃないから、基本的にはイサナは自分が勝てると思うやつ以外の試合には出ない」

「それで…………」


だけど、最初の頃はむしろ格上との試合ばかりやらされてたんだ、とヤシルは語ってしまいそうになったが、あいつは一二年の時の話をされるのを嫌がるので、後からとやかく言われるのも嫌なので、やめておいた。


「あのー、2つに割れてるって言ったけど、もうひとつってなんすか?」

「あ、もうひとつってのは、出来損ない、ってこと」

「出来損ない?」


サツカの聞き返しに、ヤシルがその話をする際に、悲しげな顔をしているのを見たのは、サツカのみであった。


「あいつは、全色使いだが、それと同時に魔法の適正は50ぴったり」

「それって、ギリギリ?」


カザクラの言葉にその通り、と返したヤシルは、話を続け、


「そう、この魔法学園に入るために必要な適性の最低ライン、それがあいつだ。

 だから、あいつは魔力の量も、魔力の回復も、魔力への適性も、魔力に関する才能は、すべてがこの学園での最低だ」


3人はその言葉に苦い顔をする。

3人が事前にイサナの話を聞いた中で、半分くらいが、猟犬(ハウンドドッグ)のリーダー、大神剣についての内容だった。

その中で、目立ったのは、大神剣の魔法の適性はが、83だということ。

これは上位でも通用するレベルの魔法の適性。

それなのに、適性がたった50のイサナでは、勝ち目がないと3人は思ってしまった。


「でもさ」


そこで、ヤシルが声を出す。


「あいつが戦うのは、勝てる試合の時だって、言ったよな?」


長年いるからこそわかる音頭イサナ、という人物の片鱗を教えようと、


「…………まぁ、見てりゃわかるか」


でもまぁ、イサナのことだから、戦いで伝えるんだろうなぁ、と思い、やはり辞めた。

レイナも口を挟まない以上、もう伝えることはあいつが伝えるだろうな、と言い訳をして、ヤシルは話すのをやめて、試合を見届けることにした。


どうせあいつは、何か俺らを驚かしてくれるのだろうから、とヤシルは期待していたから。

次話にご期待頂けると、嬉しいです。

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