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5話は戦闘好き

後日、俺はとある教室の前に来ていた。


一応、魔戦のチームは、部活とほとんど同じ扱いをされる。

よって、各々のチームには部室が与えられ、そこにみんな集まるのが主だ。

そして、俺が今部室の前でかれこれ5分息を吸っては履いてを繰り返しているのには、れっきとした理由だがある。


みんなに抜けることをまだ言ってない。


だってさ、断られそうなことばっかしてるから、まだ抜ける報告しなくていいよね、とか考えていたら、まさかこんな形で強制的に部室来ないといけないとは思うわけないじゃん、と自分に言い訳したが、脳内ヤシルが、


『そういうの、無駄な言い訳っていうんだよ?』


と囁いてくる。

うるせーわいクソミドリ!

脳内ヤシルのおかげで、妙にやる気が出てきて、部室に勢いよく入る。


「おー、イサナー、やっと来たかー」


そこに居たのは、猟犬(ハウンドドッグ)のフルメンバー。


リーダー、大神剣(おおがみけん)

サブリーダー、乾道元(いぬいどうげん)

他に柴山創(しばやまそう)金蔵具象(かねくらぐしょう)豆田憲章(まめたけんしょう)


見慣れたメンバーがそこにいた。


俺はみんなのいつも通りの姿にホッとしつつ、ポケットに隠していた、1枚の紙を、みんなに見えるように出す。


「…………これは?」

「見ての通りだ」


大神のトレードマークである、犬耳っぽい髪型が揺れた。

あいつがこういう反応をする時は、大抵不機嫌になった時。

いつもは俺がなだめ役として回っていたが、今回は違う。


「俺は、猟犬(ハウンドドッグ)を、抜ける」

「今更なにいってんだイサナ」

「俺は、上を目指す」

「ほう、もしかして生命(ライフ)に入れてもらうのか?」

「いーや違う」

「ふぅん……じゃあほかの中堅に拾ってもらうのか?」

「それも違う」

「じゃあ……やめんのか?」


大神は悲しそうな顔をしてくる。

大神には世話になった。

サブリーダーにならないかと誘われてもいたが、俺みたいな補欠にそんな座は似合わないと突っぱねた時もあった。

恩はある。

だけど、


「俺は、お前らとも戦ってみたい」

「…………嘘だろ?」


残された選択肢は少ない。

下位チームに入る、または、新しくチームを作る。


新しくチームを作る、というのは簡単そうに見えて実は難しい。


十二チームあって接戦ならよかったのだが、いまは上位にチームが完全に強すぎるため、生半可にやってちゃ勝てっこないし、下位チームだって試行錯誤して中堅チームを倒そうとしているのに、そこにあるのはやはり、適性の差。

適性の高いやつは、必然的に既にチームに入っていて、新しくチームを作るとなれば、引き抜くかまだ見つけられてないやつを探すしかない。


もし俺が、めちゃくちゃ強くて、適性があって、花形プレイヤーだったら、話は違ったが、


俺みたいな適性が低くて器用貧乏なやつは、どう足掻いたって主人公になれるわけがない。


だから、俺の目を見て大神は嘘だろ?と聞いてきた。


「俺は、新しいチームを作って、1番に立つ」


だから、と俺は付け加え、


「ちょっとした卒業記念に、俺と勝負しようぜ、大神」











反対はされなかった。

いつもの練習では、割とみんな模擬戦しまくってたし。

俺は全くみんなに勝てなかったけど。


しかし、条件は出された。



負ければ今の話は無し。



俺は、次の日に試合をしてもらうように頼んだ。

あの3人に俺の戦いを見せるためだ。

いや、俺が口頭で勝った、って言ってもいいのだが、見てもらいたかったのもある。


俺の、戦いを。


俺は、速攻家に帰って準備を始めた。

レイナとかヤシルの力は借りない。

というか、もう十分前から借りてはいた。

俺が新しくチームを作るために必要だった要素を俺が習得するために。

レイナの実験をしながら、俺は着々と準備を進めていた。

レッドの時みたいな不甲斐ない試合はしたくない。


だから、俺は全力で大神を倒す。











「おっ、きたか」

「遅れたか?」


俺がついた頃には、俺以外のメンツは全員揃っていた。

俺が来たのは、魔戦のために作られたフィールド。

端から端まで見渡せるフィールドは、いまは何も置かれていないグラウンドみたいな感じだ。


「ほれ」

「乱暴に扱うなよ、壊れもんだぞ」


大神から投げ渡されたのは、菱形の水晶。

これは、魔戦において勝敗を決めるためのものだ。

これを制服に備え付けられた、首の後ろの窪みにはめ込むと、


「やっぱやるのか?」

「もちろん、お客さんもいるしな」


特に音を立てることなく、瞬きをする間に、ブロテクターが身につけられている。

これは魔力で構成されていて、魔法が当たるとどんどんそのプロテクターに内蔵してある魔力は消えていく。

そして、これがゼロになった瞬間、敗北が決まる。


俺はプロテクターの感触を確かめながら、観戦席にいる数人の方を顎で指す。

そこには、レイナとヤシル、そしてあの3人がいた。


「ふぅん……異端者と緑と……ほかの3人は誰だ?」

「あの3人が新しいチームメイトだ」

「は?」


てっきり大神のことだから、俺が仲のいいヤツらを引き抜いたとおもっているのだろうが、俺からの予想外の返答に、口を開けたままだった。


「そいつらにさ、言われたんだよ」

「俺がお前に勝ったら、チームメイトになってくれるって」


大神は、その言葉を聞いて、犬歯をちらりと見せながら、


「その言葉どおりに行くと、なんだかお前、勝てる自信があるらしいな」

「あぁ、もちろんだよ」


俺は、操作パネルの前にいる乾を見ると、乾は深呼吸したあと、


「これより!大神剣!音頭イサナの魔戦を行う!

 オペレーター無し!フィールドはランダム!ハンデなしのソロ勝負!」


俺と大神は、それぞれ足元から転移の光に晒される。


息を吸い込む。


吐き出す。


これさえ意識しないと忘れるくらいには、緊張してる。


けど、この転移の光がやんだら、それともおさらばしないといけない。


「それでは」


俺は笑顔を作って、


「始めっ!!!」


試合に望む。


次話にご期待頂けると、嬉しいです。

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