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2話で土下座は優秀な証

放課後、俺はとある空き教室に訪れる。

ノックして入ると、そこにいたのは、4人の男女。


背が高いが、前髪が伸びすぎて目が見えていなさそうな男子。


ロングヘアーの、メガネをかけたタレ目の巨乳女子。


ツリ目の、ちょっとチャラそうな男子。


そして、


「あっ、ねっしー遅いですよ?!」


小学生と見間違えそうなくらいに背の小さい女子……賞美院怜奈(しょうびいんれいな)

その小さな体を最大限に使った怒りのアピールは、別に時間ぴったりに付いたはずなのに怒られた気にさせるには十分だったが、


「あー、すまんな、待たせてしまうから、その話は後でにしてほしいなぁ……」

「もう!いつもそうやってねっしーは……」


俺はぷんぷんしているレイナをなだめつつ、俺は待っている3人に声をかける。


「それじゃあ、はじめまして」


三者三様、という言葉はここでは意味を成さないらしく、3人とも戸惑いの目をこちらに向けてくる。

しばらくしたあと、チャラそうな男が、


「あのー、俺らってなんで呼ばれたんですか?」

「一応僕は今後について話があるって先生から言われた……」

「あ、私もです!」

「へ?俺とりあえずここに来いって言われただけだよ?」


不用心すぎないか……というツッコミは喉から出そうになったが、それを堪え、俺は咳払いをしてから、


「君たちに、重要なお話があって、今日は集めさせてもらいました」


俺は深く息を吸って、


「どうか俺とチーム組んで魔戦出てください!」


土下座をした。


そう、土下座だ。


古来よりこの国に伝わる、誠心誠意という言葉を体で表現するために用いられると俺は勝手に考えている。

その姿に、皆は驚き、慌てふためく。


「いきなりどうしたっすか?!」

「あ、あの!私なんかしました?!」

「?!?!」


最後の前髪君は言葉に出てないけどあわあわしている所を見ると、焦っているらしい。

俺は、土下座の姿勢のまま、話を進める。


「まず、私は3Cの音頭イサナ、と言います。

所属は猟犬(ハウンドドッグ)

そこで一応だけど補欠をやっています」


俺は土下座の姿勢のまま、レイナの方に手を伸ばして、


「そこにいる彼女……賞美院怜奈さんに、俺は1つ頼み事をしました。

 魔戦に出てないやつで、魔法がうまく使える人を、探してほしい、と」

「それで、調べた結果あんたたち3人が選ばれたわけってことよ!」


笑顔でそういうレイナを、俺は横目で見つつ、再度、顔を上げてから、


「いきなりこんなことして本当に申し訳ないと思ってるけど、俺はこの学園で過ごしてきた2年半で、思った。

あんな化け物共に勝てんのか、って」


だけど、と俺は付け加え、


「俺は、そうじゃない、勝ちたい、って思ったんだ。

 そのためには、猟犬(ハウンドドッグ)じゃあダメなんだ。

 まだ俺の知らない人達の力が必要なんだ」


俺は地に額を擦り付ける。

俺だって本当は猟犬(ハウンドドッグ)で1番を取りたかった。

しかし、あのチームは、もう1番をとることを半ば諦めかけていた。

リーダーはまだ諦めてはなさそうだったけど、時間の問題に見えた。

だから、俺は、急に芽生えたこの気持ちを、どうしようか考えて、こういう行動に写った。


今目の前にいる3人からすれば、迷惑かもしれない。

だけど、レイナに頼ってしまうほどには、今の魔戦は、俺は嫌いだった。


適性が強いやつほど勝つ、そんな環境に。


「そんな事言われても……」

「もし俺らがやりたかったらチーム入ってるっすよ……?」

「…………私、適性ないですよ?」


でも、今だけは、こんな環境に満足している。

だって、目の前に、こんな原石たちがいるのだから。


「君たちには、魔戦に出れる……いや、魔法に関しての才能がある」


俺は、そこで魔力を展開する。手のひらサイズの魔力を、一個。


色分けされていない魔力は、無色透明だ。


さっきの授業では、わざと濃く魔力を作って、何となくそこにいるのかな?という風に見せていた。

だから、色分けされていない魔力は、透明だ。


なのに、彼らには、


「魔力、分かってるよね?」


そう、無色透明であるはずの魔力が見えている。

または、知覚出来ている。

どんな形にしろ、魔力というものが分かる。

これは、なかなかない才能だ。

俺はたまたま全色使いだったから、他人との魔力の違いが顕著に出ていたから、そこからなんとか分かるようになったけど、この子達は違う。


「見えてるっすよ?」

「聞こえてる……」

「え……私は……香りがしますよ……」


三者三葉の答え。

これはこれで予想外だけど、俺はその言葉を聞いて、破顔しそうになる。

彼らは、分かる。

つまりは、


「魔法、違う方法で使えるでしょ?」


独自の魔法理論を持っている、そう俺は直感している。


今の魔法は、割とアバウトに見える。


色分けされた魔法は、魔法言語というものを色のついた魔力で作ることによって、世界の理に干渉し、魔法を引き起こすことが出来る。

その魔法言語は、世界を構成するプログラムの一部、とも言われていて、生み出す魔法に魔力の色が関係していれば、少量の魔力でも出すことが出来、関係なければ無いほど、大量の魔力を消費しなければならない。


「「「……………………」」」


3人とも、何も話さない。

それはつまり、否定とは言い難い、ということだ。

俺は安堵の息を地に向けて吐きつつ、一言。


「今から、君たちの魔法を、見せて欲しい」


そう頼んだ。

次話にご期待くださると、嬉しいです。

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