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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
最終章
58/60

最終話その7

先遣隊がニューブロンズ王国に向けて出立する直前、ルーカスは王城のルーナシア・エルメスターに拝謁していた。

「まさかステラさんが直接乗り込んできて、宣戦布告までしていくとは」

カップに注がれた紅茶を飲みながら、聖女から王妃になったルーナシアは優雅に語った。

「国王陛下はたいそうご立腹だったわよ」

ルーカスは何も喋らない。

「貴方の目的を果たすには、少々状況が悪くなったのではなくて?」

フフフと、ルーナシアは悪戯に頬笑む。

「まあでも、手がないわけではないのでしょう?いいんですよ?貴方がそれを実行してくれれば、こちらも事を運び易くなるわけですし」

紅茶を含んで口を湿らせる。

「ニューブロンズから西側に進むと、小国郡があるはずです。ニューブロンズ経由で行った方がいないので、辿り着けるかは分かりませんが」

「十分です」

ルーカスは一礼して部屋を後にした。

一人になったルーナシアは、カップの縁に愛しげに触れた。

「それだけ想われるステラさんが、少し羨ましいですね」








時は戻り、ニューブロンズ王国王城内。

玉座の間で対峙しているルーカスとステラ。

ルーカスを照らしていた月光は、いつの間にか消えたいた。

空が白んでいることに、二人は気が付いていなかった。

「俺と一緒に来てもらう」

「私にこの国を見捨てて行けと言うの?」

「元々そのつもりだったんじゃないのか」

「それは…だけど!」

「このまま残っても、悲惨な末路しかないんだぞ!」

「覚悟の上よ!ここに来たときから、全部!」

「この意地っ張りが!」

「ルーカスだって!そんな無責任な事を言うヒトじゃなかった!」

いつの間にか口論となり、お互いの口調も昔のように戻っていた。

ただ、かつての二人はここまで激しい言い合いをした事はなかった。

どこかに相手に対する遠慮があったのだが、今の二人にはそんなものなかった。

「この国のヒトも獣人も、みんな生かすとルーナシアは約束してくれたんだ」

「ルーナシアさんとそんなに仲良くなったんだ!」

「それは今、関係ないだろう!」

「あるよ!結局ルーナシアさんの企み通りって事じゃない!ルーカスだって、あのヒトと」

ステラがその先を口にする前に、強引にルーカスが口を塞いだ。

自分の唇を重ねて。

「!!!」

目を見開いて、ルーカスの肩を掴むステラだったが、強く抱き締められ逃れることは叶わない。

ルーカスの肩を掴んでいた手は、ゆっくりと更に奥、背中に回されていった。

二人は抱き合うような姿勢になり、長い時間、互いの唇を重ねたのだった。

「君の事だけを考えてきた。どうすれば迎えに行けるのか、ずっと」

「ずっと会いたかった。ずっと、ずっと…」

そして再びキスをした。


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