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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
最終章
53/60

最終話その2

第52話。

 ニューブロンズ王国の王都は高い城壁に囲われていた。リリーナの話では、内側に同じような城壁がもう一つそびえ立っているそうだ。

 夜になるのを待ち、ルーカスはリリーナと騎士3名を連れて王都の中への侵入を試みた。

 当初、難航すると思われた王都への潜入はリリーナのつ鶴の一声で、容易に実行された。

 「王族専用の脱出口があるからすぐに王城まで行けるよ」



 秘密通路の入口に一人、出口に一人、王城内への隠し扉前に一人ずつ騎士を配置して、王城内へはルーカスと縄に縛られたリリーナだけが潜入した。

 「こんな簡単に俺を侵入させて本当に良かったのか?」

 「お前をステラ様の前へ連れて行く。それがステラ様からの命令だったから」

 暗い回廊をコソコソと歩きながら、二人は声を潜めて話していた。

 リリーナ・フェンリル・ロハス。

かつて、ルーカスの前からステラを連れ去ったグレゴリー・フェンリル・ロハスの娘。

ルーカスは彼女の真意を測りかねていたが、彼女の実直な性格が嫌いでは無かった。

故郷で開放するという契約の下、彼女にはニューブロンズまでの道のりを案内させた。

そして今また、彼女は自身の仕えるステラの命令にしたがい、ルーカスをステラの元へ案内している。

ステラに害を成すかもしれない自分を。



 足音を殺して進んでいた二人がピタリと立ち止まる。

 目の前の真っ暗闇の先から、かすかに獣の匂いがしたのだ。

 「獣の匂い?いや、これは・・・」

 周囲を警戒しながら、ルーカスは縄を掴んだ手を強く握り締めた。

 ピンと張った縄から、ルーカスの緊張を感じたリリーナは頭から生えた耳で周囲の様子を伺った。

 (さっきの匂い、間違いない・・・)

 リリーナは獣の匂いの主について、思い当たる節があった。

 できれば最も会いたくない、遭遇したくない人物。それは―。

 「あー、なんだか懐かしい匂いがすると思ったら、お前かリリーナ」

 まるで暗闇に引き込むかのようなその声は、二人の目の前から聞こえた。

 (やっぱり!最悪だ)

 リリーナの予想は当たってしまった。

 ヌゥっと姿を現した人物の名は、アズール・フェンリル・ウォーカー。

 ルーカスの家族を殺し、故郷を焼き尽くした獣人である。



 「あー、ヒトに捕まって、てっきり殺されたかと思っていたが。まさか敵の手引きをするとはなぁ。いったい、どんな手を使ったんだ?ヒト様よぉ?」

 右目を覆った眼帯が、回廊の窓から差し込んだ月光を反射させる。

 アズールの姿を見たルーカスは、眼帯で覆われた自らの右目を労わるようにさすった。

かつて、彼との戦いで傷つけられた目だ。

「ずいぶんとご挨拶だな。アズール・フェンリル」

リリーナを後ろに下がらせながら、ルーカスは剣を抜いた。

「なっ、お前・・・!」

前に出るルーカスに驚くリリーナ。

 「下がっていろリリーナ。こいつとはここで決着を付ける」

 「あー?ああ、ブロンズではよくも蹴飛ばしてくれたよなあ?」

 アズールはルーカスの事を、あまり覚えている様子では無かった。彼はルーカスとは、ブロンズ王国での宣戦布告の時が初対面だと思っているようだった。

 「覚えてないのか・・・」

 ルーカスの呟きにアズールは頭をかしげながら、剣を構えた。

 「あー、そっちがやる気なら、殺されても文句はねえよなあ?」

 「そうか・・・覚えていないか」

 アズールの言葉を無視して、ルーカスは一歩踏み込んだ。

 瞬間、アズールは後ろに吹き飛ばされ、地面に伏した。

 「あのアズール隊長を・・・」

 リリーナは目の前で起きたことが信じられないといった様子だった。

 ニューブロンズ王国最強と言われる狂人アズールを、いとも容易くふきとばしてしまうなんて、この男は一体どれだけの実力を隠しているのだと、リリーナは改めて目の前に立つルーカスに畏敬の念を抱いた。

 「あー・・・マジかよ。腕が折れてらぁ」

 ゆっくりと立ち上がりながら、アズールは右腕をぶらぶらと揺らしていた。

 「さすが、あの程度ではくたばらないか」

 ルーカスが再び剣を構えた。

 「あー、さっきからお前、妙に引っかるなぁ。昔どこかであったか?」

 「・・・わざわざあんたに話してやる必要もない」

 再びルーカスが一歩を踏み出した。

 ガキィンと剣戟の火花が散った。

 「あー、さすがに2度も同じ手はくわねぇよ?」

 左腕で剣を持つアズールだったが、表情にいつもの余裕が感じられなかった。

 「みたいだな」

 静かに口にしたルーカスは、思い切りアズールを蹴り飛ばした。

 「なっ!!!」

 距離を取ったルーカスが、剣を持ち替えて、アズール目掛けて突きを放つ。

 体勢が不安定なままのアズールは、左手の剣を自分の正面に持ってくるのが精一杯だった。

 「アズール隊長!!」

 思わずリリーナが声を上げた。

 「あー、うるせぇよ」

 アズールの左胸に、ルーカスの剣が深々と突き刺さっていた。

 「お前に殺された両親と妹、そして、我が師の報いを受けろ」

 「・・・あー、お前あんときのガキか・・・」

 最期にアズールは目を見開いて、ルーカスの目を見た。

 まるで、次はお前が報いを受ける番だとでも言うように。


アズールがあっけなく死にました。生への執着がもう少しあったはずなのですが、致命傷には抗えず。彼がこれまで誰かを殺してきた報いを、彼は受けていきました。死ぬことが報いなのかは分かりませんが。

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