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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
第四部 サベッジ編
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第43話 ウェディング・セレモニー/騎士のお仕事

 ルーナシア・エルメスターがサベッジ村領主ジョルジュ・レーガンの家を訪ねてから2週間後、ブロンズ王国国王と聖女ルーナシア・エルメスターの結婚が公表された。

 この発表にブロンズ王国中がお祭り騒ぎとなり、王都はにわかに賑わった。

 二人の結婚式はそれから更に1ヶ月後に行われる事になり、国を挙げての一大行事として取り仕切られる事になった。



 そして、結婚式当日。

 ブロンズ王国王都は、今までにない程の賑わいを見せていた。

 ブロンズ王国の国民はもちろん、セイレン王国からも多くの観光客が押し寄せてきていた。

 王都の騎士団は厳戒態勢を敷き、北の騎士団をはじめ王国中の騎士団からも応援を募っていた。

 ルーカス・ウェイカーもまた、王都内の見廻りにあたっており、あちこちの屋台から香る美味しそうな誘惑を振り切りながら職務を全うしていた。


「あールーカスいた!ママ!ルーカスが仕事してる!!」


 雑踏の中から馴れ馴れしく名前を呼ぶ子どもの声が聞こえた。ルーカスをこうも気軽に呼び捨てできる子どもも限られている。まったく、この子どもの教育は一体どうなっているのだと思いながら、ルーカスは声の主に手を振る。


「ルーカス騎士っぽいね」


「騎士だからな」


 鎧を着込んだルーカスを見て、イグニスがキラキラと目を輝かせている。


「あら本当。こうして見ると、本当に騎士に見えるわね」


 そう言いながらルーカスの鎧をバシバシ叩くマーサ。仕草がドンドンおばさん臭くなっている。


「失礼な親子だなアンタ達は・・・」


 かつての恩師とその子どもに向けて、若干の怒りを感じつつルーカスは言った。


「えーだってルーカスが騎士っていうのがねぇ。もう信じられないし」


「信じられないしー」


 そう言ってガハハと笑う親子。


「この親子は・・・!?」


 親子と別れて仕事に戻ろうとしたルーカスの視界の端に、薄汚れたマントを着た何者かがかすった。


「二人ともごめん。気を付けて楽しめよ!」


 そう告げて風のように去っていくルーカスの姿は、あっという間に二人の前から消え去ってしまった。


「かっけー・・・」


 イグニスは瞳をキラキラと輝かせながら、姿の見えなくなったルーカスを追っていた。



 先ほど見えたマントの不審者を追い、ルーカスは路地を走っていた。騎士になって4年、王都に配属されて2年。街中の道は頭の中に入っている。

 視界の先に不審者の後ろ姿を捉えたルーカスは、更に速度を上げる。普段から街の中を走り、非番の日も森に入り木々の間を飛び交って移動しているルーカスにとって、目の前の不審者は街の野良猫よりも鈍く感じられた。


「つかまえた!」


 ガバっと不審者の背中から飛びかかり、地面に倒して押さえつける。ジタバタとあがく不審者の両手を抑え、ルーカスは不審者を完全に捉えた。


「ブロンズ王国の騎士ルーカスだ。出身国と名前を言え」


 押さえつけられてもあがき続ける不審者は、ルーカスの質問に答える様子はない。


「おい!お前!いい加減おとなしくしろ!」


 ルーカスが不審者のマントを剥ぎ取った。


「キャッ!」


 マントの下には華奢な身体の女性が横たわっていた。おまけに、頭の上には獣人の証である耳が生えていた。


「獣人・・・ニューブロンズか」


「!何故貴様がわが国の名を知っている!!」


 ルーカスのつぶやきを聞き、獣人の女性が声を上げる。


「やはりそうなのか。お前、ニューブロンズの密偵か」


「違う!私は誇り高きニューブロンズの騎士だ!」


「騎士?騎士ならば剣はどうした?」


「ぐっ・・・私は、今は、女王様の護衛で・・ぐす」


 獣人の女性は涙を浮かべながら言った。


「女王の護衛だと?ここに女王が来ているのか?」


「ヒト種に、話すことは何もない・・・ぐす」


 泣きながらも秘密は守ろうとする獣人にルーカスは感心しつつ、掴んでいた重心の腕を更に強く握った。


「いたっ!」


「このまま腕を折られたくなければ女王が来ているかどうか答えろ」


「い・・・や・・・だ・・・知らない」


「なら、殺すしかない」


 そう言ってルーカスは剣を構え、獣人の喉元ギリギリに突き立てた。


「ひぃっ!」


「このままひと思いに刺してやる」


「いやだ、死にたくない・・・」


 獣人は涙を流して泣き始めた。


「お父さん、お母さん・・・!!!!」


 ルーカスは剣を振りかぶる。


「ステラ様・・・!!!!!」


 剣の先端が喉に触れ、ピタリと止まった。

獣人は肩で息をしながら、ゆっくりと目を開けた。


「ステラ女王か・・・フフ、ははは」


「???」


 先程まで自分を殺そうとしていたヒトが、自分に馬乗りになったままで笑っていた。

 あまりの不気味さに獣人の女性はまた泣きたくなった。



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