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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
第四部 サベッジ編
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第42話 聖女降臨/結婚宣言

「実は私、ブロンズ王国国王と結婚しましたの!」


「は?」


 聖女様の口から、一体どんなのろけ話が飛び出るかと身構えていたジョルジュは、のろけの斜め上を飛び越えてきたルーナシアの発言に、呆気にとられてしまった。


「どうです?驚いたでしょう?」


 ずいっと身を乗り出してジョルジュの顔を覗き込むルーナシアは、獣人虐殺を指揮した残虐非道な血まみれ聖女のイメーシとはかけ離れた、見る者が見れば見惚れてしまうほど無垢な笑顔を浮かべていた。

 そのあまりの可憐さに、さすがのジョルジュも思わず頬を赤らめてしまう。


「ジョルジュ、ちょっと」


 ルーナシアの笑顔に見とれていたジョルジュを呼び戻したのは、妻サラの一声だった。ちなみにサラは、割れたガラス片の様に鋭く刺さりそうな視線をジョルジュに向けている。

違うんだサラ、これは決してルーナシアって案外かわいいなとかそういうのではなくて、戦場での彼女と今の彼女との差がありすぎて、その差にときめきそうになって・・・。

 心の中で最愛の妻への弁明の言葉を考えてはかき消すジョルジュであった。


「で、誰が誰と結婚したって?」


 ブツブツと呟いている夫を無視して、サラは物怖じすることなくルーナシアに話かけた。


「フフフ。サラさんも聞いてくださいます?実は私、ブロンズ国王と結婚したのです!」


 先ほど同様、満開の花のような笑顔を振りまきながら、聖女ルーナシアが言い放つ。

しかし、それに対するサラの反応はルーナシアの期待するものでは無かった。


「へぇ、おめでとうございます」


 なんとも心のこもっていない祝福の言葉が、聖女に振りかけられた。


「え、ちょっ、それだけ!?」


 さすがに素っ気ないサラの態度に、ルーナシアも取り乱さずにはいられなかった。


「?だって、なんか妥当と言えば妥当だし・・・」


「いくら私の事が嫌いだからって、そんなあまりにも冷たすぎやしませんかー!」


「別にそういうわけでは・・・」


「そ、そうだぞサラ。これは大事だぞ。国王と聖女の結婚とか、もうブロンズ王国から獣人を追い出す気まんまんじゃないか。新しい火種になりかねんぞ!」


「ジョルジュさんは私をなんだと思ってるんですか!」


「え、獣人虐殺の血まみれ聖女かと・・・」


「・・・」


 あまりにもあんまりなレーガン夫妻からの扱いに、ルーナシアは頬をふくらませて抗議の姿勢をとった。



「ではお二人共、私の結婚の件はどうか内密にお願いしますね。近々結婚式の招待状が届くと思いますので、是非いらしてくださいね」


 レーガン邸でディナーをご馳走になり、ルーナシアは馬車に乗って帰っていった。今夜はサベッジ村の宿に泊まるそうだ。

 護衛は足りているかとジョルジュが心配すると、このあと眼帯の騎士様が合流されるのでと言われた。

 ルーカスは聖女の護衛任務の為に村に来ていたようだ。

 それならそう言えよなと、レーガン夫妻は幼馴染に向けて届かない文句を言った。



 明くる日、サベッジ村から北に向かって伸びる街道を、一台の馬車が駆けていた。

 聖女ルーナシア・エルメスターの乗る馬車である。中には聖女とその護衛が2人、馬車の先導と、後ろにもう一人、眼帯の騎士が乗っていた。

 眼帯の騎士ルーカス・ウェイカーは、腰の剣に手を掛けて、周囲を警戒していた。

 猛スピードで下り坂を進む馬車を、何者かが追ってきている気配を感じていた。

 このスピードについてこられるのは、間違いなく獣人である。

 獣人虐殺の聖女と、ブロンズ王国国王の結婚は、まだ公にはされていない。だが、セントラル側から獣人の国、ニューブロンズに情報が漏れているとすれば、早々に刺客が放たれていてもおかしくはない。

 ルーカスは腰に下げた巾着袋から小石を取り出した。しばらく手に持った小石を眺めていたかと思うと、思い切り後方に向けて投げた。

 と、コツンという音とともに「ギャっ」という声が聞こえてきた。

 後方から追いかけてきた刺客に当たったようだ。


「今なにか聞こえましたかルーカスさん?」


 馬車の中からルーナシアが心配そうに尋ねてくる。


「大丈夫ですよ。なんでもありません」


「ならいいのですが」


 ガタガタと車輪を回しながら、馬車はブロンズ王国王都へ向けて進む。



聖女ルーナシア・エルメスター。いきおくれ回避に成功。

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