表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
第四部 サベッジ編
38/60

第37話 眼帯の騎士/サベッジの英雄殿

第四部、開幕です。

 セイレン王国で起こったヒト種と獣人種による内紛は、隣国のブロンズ王国や、セントラル通商連合を巻き込んで、およそ4年続いた。

 ブロンズ王国から派遣された一人の騎士によって、獣人種のリーダー格だった男が討たれ、戦いは終わった。

 戦後、セイレンの獣人達はブロンズ王国を跨ぎ超えて、セントラル通商連合へと渡った。セントラルの有力商人であるカルカゴ・マクルーガーが全員を労働力として雇いあげると宣言したのである。

 そして、戦いに終止符を打ったブロンズ王国の騎士ジョルジュ・レーガンは、ブロンズ王国国王から、自身の故郷であるサベッジ村を領地として賜ることとなった。

 それから2年、かつては荒廃していたサベッジ村が今では見違える程活気に満ちた村となっていた。村の中にはヒト種だけでなく、獣人種も見受けられ、今ではブロンズ王国で唯一獣人が住める村となっていた。

 領主のジョルジュ・レーガンは騎士団を退役し、村の維持・発展に尽力していた。そんな彼を支えているのが、妻であるサラ・レーガンであった。

 ジョルジュとサラは1年前に結婚を果たした。ジョルジュから婚約を申し出たらしい。

 二人は村人からの信頼も厚く、サベッジ村はこの二人を中心にしてますますの発展が期待される土地であった。





 執務室で書類に目を通していたジョルジュは、背後に気配を感じ、ふと後ろを振り返った。振り返った先には誰もおらず、視界にはドアが映るのみだった。

 気のせいかと、再び書類に目を移すジョルジュだったが、やはりヒトの気配を感じた。

 戦場から離れて早2年。命を掛けて剣を振るう事はもう無くなったが、今でも毎朝の鍛錬は続けており、鍛えた感覚にはそれなりの自身を持っていた。

 自分の感覚を信じて、ジョルジュはごく自然に椅子から立ち上がり、壁に掛けてある飾りの模造刀に手を伸ばす。剣を鞘から取り出して、眺めるように構えて、思い切り背後に向けて凪いだ。


「うわっ、とっとっと」


間抜けな声を出しながら、侵入者が尻餅をついた。


「さすが英雄殿。相変わらず鋭い」


 聞きなれた声と、見慣れた姿を確認して、ジョルジュは剣を鞘に収めた。


「お前なあ、顔を出すなら顔を出すと、前もって文でも出せないものかね」


 友人に手を差し出しながら、ジョルジュは溜息をつく。この言っても聞かない友人は、毎度毎度飽きもせずこういう事をしてくる。

 幾つになっても子どもだなと、つい笑みがこぼれる。


「いや、ついつい挑んでみたくなるんだよ、英雄殿に」


 ジョルジュの手を取りながら、男はニヤリと笑顔を見せる。男はボロボロのマントを羽織っており、右目は大きな眼帯で覆われていた。髪もボサボサで、お世辞にも綺麗とは言えない身なりをしていた。


「その英雄殿ってのはやめてくれるか?お前に言われるとなんだか腹が立つ」


 自分の手を取った眼帯の男を立たせながら、ジョルジュは笑いをこらえる様に言った。

 無事立ち上がった眼帯の男は、服の汚れをパンパンと叩いた。もくもくとホコリが舞い、男はゴホゴホと咳をした。


「ゴホゴホッ・・・でも英雄殿は英雄殿だろ、ジョルジュ?」


 自分でたてたホコリでムセながら、眼帯の男は英雄ジョルジュの名を呼ぶ。彼の服からはまだホコリがたっている。


「俺が英雄殿なら、お前は眼帯の騎士様だよ、ルーカス」


 手でホコリを払いながら、言ってやったという顔でジョルジュは悪友に告げた。

 言われた側の眼帯の騎士様は、非常に嫌そうな顔をしていた。それを見たジョルジュは満足げに鼻を鳴らし、自分に向かってくるホコリを追い返した。


「あんた達、また何をくだらない事をしているの?」


 突然の声にジョルジュとルーカスが振り返ると、ドアの前にサラが立っていた。


「なんだか、ホコリっぽいわね。ジョルジュ、書類は全部読んだの?ルーカス、来る時は事前に文を寄越して玄関から入りなさいって前にいったわよね?あとなんか臭い」


「あ、はい、すいませんレーガン夫人」


 サラの気迫に圧された眼帯の騎士は、綺麗な姿勢で頭を下げた。


「分かったらまずはお風呂にでも入ってきなさい。ジョルジュはその書類ちゃんと読んでおいてよね」


 そう言って足早に部屋を後にするサラ。彼女が出て行った事を確認すると、ジョルジュとルーカスは互いに顔を見合わせて、吹き出した。


「ははは、なんだよルーカス。レーガン夫人って、いくらなんでも萎縮しすぎっ」


「だ、だって、なんかもう貫禄が、迫力が凄すぎて、はははは」


 お腹を抱えて笑い合っていると、バンっと勢いよくドアが開けられ、再びサラが部屋に入ってきた。


「あんた達、さっさとしなさいよ」


 それだけ言い残して、壊れるほどの勢いでドアを閉めるサラ。

 ジョルジュとルーカスが「「はい」」と声を揃えて返事をする頃には、もうサラの姿はそこに無かった。


「さ、仕事しよ仕事」


「あ、お湯いただきますね英雄殿」


 自分達の置かれた状況を把握したジョルジュとルーカスは、テキパキと動いた。

 戦で名を馳せた英雄と眼帯の騎士も、一度戦場を出れば、かよわい男子なのだった。



第三部から6年程経過しています。

ルーカス・ウェイカー 13歳→19歳

ジョルジュ・レーガン 15歳→21歳(20歳で結婚)

サラ・レーガン    13歳→19歳(18歳で結婚)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ