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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
第三部 セントラル通商連合編
33/60

第32話 大商人の野望/思いもよらない客人

 一夜明け、ルーカスとステラは執事らしき人に起こされて、顔を洗い、服を着替え、朝食を摂った。

 食堂に案内された後、執事らしき人が去り際に放った「昨夜は遅くまでお楽しみだったようですね、フフフ」というセリフに、ルーカスとステラは頬を染めていた。

 別に本当にお楽しみだったわけではない。二人で遅くまで、マクルーガー氏にする話の内容を整理していただけだ。

 妙な誤解を受けた二人はなんだか気まずくなり、黙々と朝食に手を付けた。



 二人がちょうど朝食を食べ終わる頃、今度はメイドさんがやって来た。彼女がマクルーガー氏の部屋に案内してくれるようだ。


「お二人の他にもう御一方お客様がいらっしゃるそうです」


「俺たち以外にも客人が?一体どういう人なんですか?」


 ルーカスの問いに、メイドさんは遠慮がちに目を伏せた。


「それは私の口からはとても・・・。申し訳ありません」


「あーい、いえ。なんだか言いにくい事だったみたいで・・・」


「いえ、ただ、あの方はヒトでは・・・いえなんでもありません。申し訳ありません」


 申し訳なさそうに言うメイドさんに、ルーカスもなんだか申し訳なさを感じた。なにやってるのよ、とでも言う様にステラが脇腹を小突いた。

 そうこうしている内に、昨日も案内された応接間に通された。

 昨日と同じようにソファに座り、いつの間にか出された紅茶とクッキーを貪りながら、マクルーガー氏を待つ二人。

 ルーカスは何か話そうとも思ったが、何も思いつかなかった。

 昨日の夜、ステラとは散々話したが、本当に話したい事は結局なにも話せなかった様な気がしていた。

 ルーカスが悶々と悩んでいるのを見て、ステラもまた何かを感じ取ったのかチラチラとルーカスの方を見ていた。

 二人の間に流れる緊張が頂点に達した時、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


「「はぁい!」」


 突然のノックに、二人とも変な声が出てしまった。


「やあ、遅くなって済まなかったね」


 ノックの主はマクルーガー氏だった。マクルーガー氏はドカっとソファに座ると、板を向いてフーっと息を吐いた。顔を上げてスーカスとステラを見る。その表情は、僅かに緊張している様にも見えた。


「早速、君たちの見たこと、聞いたことを教えてもらいたい」


 マクルーガー氏の言葉を聞いて、ルーカスとステラは顔を見合わせ、ゆっくりと話し始めた。

 ルーカスとステラは、昨夜の話し合いで、マクルーガー氏に何もかも全てを話してしまう事を決めていた。

 全てというのは、ステラの事も含めてだった。

 これはステラ自身が言い出した事だった。

 ルーカスは、当初は反対していたが、ステラの説得で最後には折れてしまった。

 ステラの過去について、ステラ自身の口からマクルーガー氏に語られた。

 マクルーガー氏は驚きの表情でその話を聞いていた。時折、「そうか」「聖女・・・ステラか」「ふうむ」と何か思うところがあるように頷いていた。

 最後まで話し終え、ステラは大きく息を吐いた。話疲れたのかソファに思い切りもたれかかっている。


「ありがとう。君たちの話を聞けてよかった。おかげで、これから我々が取るべき道が見えてきたよ」


 優しく微笑むマクルーガー氏の笑顔に、ルーカスとステラもホッとした。


「さて、実はもう一人客人を招いていてね、ぜひとも君たちに会ってもらいたいのだが、構わないかね?」


 突然のマクルーガー氏からの申し入れを疑うことなく、ルーカスとステラは「いいですよ」「構いませんよ」と頷いた。

 先ほどメイドさんが言っていた、もう一人の客人のことだなと二人とも思っていた。

 そういえばメイドさんが言っていた「ヒトではない」って、そういう事だろうか、とルーカスは考えていた。

「どういう人なんですか」と尋ねた自分に、メイドさんは「ヒトではない」と答えていたが、あれはどういう・・・そこまで思案してルーカスは自分の愚かさを呪った。

 この正解でヒト出ないものと言えば、一つしかない。しかも、ついさっきまで、それに関する話をしていたではないか。

 ルーカスはステラを見ながら口を開いた。


「マクルーガーさん、客人というのはもしかして獣人」


「失礼します」


 ルーカスの言葉をかき消すように、ドアが開き、声がした。

 ドアを開けてそこに立っていたのは、紛れもなく獣人だった。


「はじめまして。グレゴリー・フェンリル・ロハスといいます」




第2部冒頭以来、再登場のキャラになります。

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