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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
第二部 セイレン王国編
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第24話 虐殺/聖女の異端狩り

 聖女ルーナシア・エルメスターは、セイレン王国の商人の家に生まれた。贅沢な生活はできなかったが、不自由はなかった。両親は彼女を愛し、彼女もまた両親を愛していた。  

14歳になったその日、彼女の元に大聖堂からの御使いがやって来た。「あなたは新しい聖女に選ばれました」そう告げられたルーナシアは、戸惑いながらもそれを受け入れ、彼女の両親もそれを大いに喜んでくれた。多くの人々の期待を背負い、ルーナシアは聖女となった。

ルーナシアが聖女になって1年、隣のブロンズ王国の領内で、獣人による襲撃があった。ルーナシアにとっては衝撃的な事件だった。聖女の起源は獣人であると、大聖堂の蔵書を読んで知っていた彼女は、大変な憤りを感じていた。多くの人々を導き助けた聖女、その地位を代々受け継ぎ守ってきた教会、にも関わらず獣人たちは勝手なことばかりしている。噂では、セイレン王国領内の村でも、教会の教えとは異なる信仰、儀式を行っている獣人の村があると聞いたこともある。

ルーナシアは人々の期待に応えたかった。セイレン王国の平和が続くことを、世界が安寧であることを望んでいた。その為に、邪魔をするものを排除しなければならないと、そう考えるようになった。

それから3年、隣のブロンズ王国はとうとう獣人によって国王が暗殺される事態にまでなっていた。国王暗殺の賊を討伐する為に派遣された部隊も、交戦の末に多くの犠牲者を出している。そして、初代聖女と同じ名前を持つ少女ステラ、彼女が受けた仕打ちを、ルーナシアは許すことができなかった。

だからルーナシアは、最初からこうなることを予想して、こうすることを決意して、ここに来ていた。自分の采配で誰かの命を奪う。それが聖女である自分の、努めなのだとしんじて。




 村長を殺して外へと飛び出していった4人の騎士を追って、ルーカスとジョルジュも飛び出した。村長の家を出た二人の前には、騎士甲冑に身を包んだ騎士が少なくとも20人はいた。


「付いてきた馬車は1台だけじゃなかったのかよ」


 歯を食いしばったジョルジュが、悔しそうに呟く。ルーカスも唇を噛み締めている。

 騎士たちは家々に立ち入り、その家から悲鳴が聞こえてくる。やがて悲鳴が止むと、甲冑を赤く染めた騎士が出てきた。村のあちこちで広がるその光景を、ルーカスとジョルジュは剣を掴んだまま動くことなく見ていた。

 かつての自分たちの村も、こんなふうに獣人達に襲われていたのだろうか。いち早く村から逃げたジョルジュ、家の中で隠れていたルーカス。そうして生き残った二人は、実際に村が襲われる光景を見ていたわけではない。だが、いま二人の目に広がるこの地獄絵図こそ、3年前のあの日の光景だったに違いないと、二人は確信していた。


「止めないと・・・」


 ルーカスの絞り出したような声を聞いて、ジョルジュがハッと我に返る。ルーカスは剣を抜き、今にも騎士たちに飛びかかりそうな状態だった。ジョルジュはルーカスを見て、今度は眼前で虐殺を繰り返す騎士たちに目を向けた。自分たちだけでは、ここにいる騎士全員を止めることは絶対にできない。冷静にそう考えるジョルジュだったが、その腕は腰に備えた剣を握って離さない。尊敬する師から授かった剣を握るその手は、ブルブルと震えていたが、それでも剣を抜こうと自然と動いていた。幼い頃に自分が憧れた騎士は、自分がなりたかった騎士は、こんな事を許さない。


「行くぞ、ルーカス」


 そう静かに口にしたジョルジュは、剣を抜いて走り出した。



 パァンと、乾いた音が鳴り響く。

 シスターマーサが、聖女の頬を思い切り叩いた音だ。


「今すぐ、騎士たちを止めてください」


 震える声でマーサが言った。叩いた手も震えていた。


「・・・」


 ルーナシアは叩かれた頬をさすりながら、マーサを睨みつけた。


「なぜですか?彼らは、ステラさんを生贄と称して殺そうとした異端者たちですよ?」


「それでも、こんな、こんな事が許されるはずがない!」


 マーサが力強く言い放つ。


「私からもお願いです。私は、こんなこと望んでいない」


 ステラも聖女を睨みつけるように言い放った。

 ルーナシアは交互に二人に目をやると、再び竹笛を鳴らした。



 笛の音とともに騎士達は剣を下げ、ゾロゾロと村から出ていく。ルーカスとジョルジュが戦っていた騎士も、笛の音を聞くとピタリと動きを止めて、剣を鞘に収めた。


「な、なんだ」


「引いていくのか」


 ルーカスとジョルジュは状況がつかめないまま立ち尽くしていた。

 そんな二人のもとにサラが駆け寄ってきた。


「あんたたち、けがはない!?」


「あ、ああ。そっちこそ大丈夫だったか。一体何があったんだ」


 ジョルジュが戸惑いながら尋ねる。


「シスターマーサが聖女様を引っぱたいてやめさせたのよ」


「ええ・・・」


 サラの口から出たまさかの回答に、少年ふたりは更に戸惑った。


「それより、生き残った村人を探すのを手伝って!ステラとシスターが村中を見て回ってるの!」


「わ、わかった!」


 そう言って、ルーカスとジョルジュも剣を収め、生き残った獣人を探し始めた。



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