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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
第二部 セイレン王国編
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第22話 生贄/聖女の企み

 聖堂でお茶とお菓子をご馳走になり、5人は聖堂を後にした。聖堂を出るステラの手には、1冊の本が抱えられていた。本の名前は『ステラズ・クロニクル』、聖堂の応接間で見つけた本だった。

 自分と本の主人公が同じ名前であり、同じ獣人でもある事が、ステラの胸に引っかかっていた。聖女ルーナシア・エルメスターによると、星語りの巫女の座を継承している村があるそうだが、もしかしたらそこに自分の過去につながる何かがあるかもしれない。そう思ったステラは、セイレンに滞在する1ヶ月の間、本を貸してもらえるようにルーナシアに頼み込んだのであった。

 本を借りる代わりに、ステラは自らの素性をルーナシアに明かした。自分が記憶喪失で、森を彷徨っているところをルーカスに見つけられ、孤児院で世話になっていると。

 その話を聞いたルーナシアは「もしよろしければ、星語りの巫女を受け継いでいる村へご一緒しませんか?あなたについて何かがわかるかもしれませんし、あそこには私も一度行ってみたいと思っていたのです」と、目を輝かせていた。

 ステラはしばらく思案した後、これに頷いた。



 聖堂から宿泊所に戻るまでの道中で、ステラはルーナシアと話したことをみんなに伝えていた。自分の事が分かるかもしれないなら、その村に行ってみたいという事、とはいえ自分だけで行くのは怖いという事、胸に抱えている思いを言葉に紡いだ。

 ステラの思いを聞いて、みんなは村に行くことに賛成した。また、一緒に行くとも言ってくれた。

 ステラはそう言ってくれる友人たちに心からの感謝の念を抱き、笑顔で答えたのであった。



 次の日、ルーナシアの使いを名乗る男が宿泊所にやってきた。男は書簡を手渡すと、さっさと帰っていった。

 受け取った書簡には、これから7日後に村に行く事と、馬車の手配をした事が書かれていた。また、セイレン滞在中、好きな時に聖堂に遊びに来て欲しいとも書いてあった。

 サラの父ブルースと、騎士トーマス、マイクは話を聞き、子ども達に対し、十分に気をつけるようにと説いた。シスターマーサも、危険なことには近づかないようにと念を押していた。



 7日後、宿泊所の前に迎えの馬車が止まる。ステラと一緒に行くのはルーカス、サラ、ジョルジュ、マーサの4人だった。ブルースと騎士二人は商談がある為、一緒に行くことができなかった。

 ルーナシアが馬車から降りてきて、5人に挨拶をする。


「みなさん、今日はよろしくお願いします」


「こちらこそ。聖女であるあなたの助力を請うことができ、教会を代表してお礼を言わせてください」


 シスターマーサが丁寧に頭を下げる。それを見てステラも、あわてて頭を下げた。


「おね、お願いします!」


「ステラさん、こちらこそ、今日はあなたにとって良い1日なるといいですね」


「・・・はい!」


 聖女の気遣いに、ステラは心からの笑顔を浮かべるのだった。



 女性陣の様子を少し離れたところから見ていたルーカスは、通りの向こうに馬車が1台止まっているのを見つけた。


「なあ、ジョルジュ、あの馬車なんだろう?」


「ん?どこだ」


「ほら、あれ」


「ん~、お。ん~なんだあの馬車は」


 二人は目を凝らして馬車を観察するが、だいぶ離れているせいか特徴が掴めない。諦めた二人は顔を寄せて、声がもれないように話し始めた。「騎士トーマス、騎士マイクに言われたように、十分に注意していこう」と。



 セイレン王国王都ヴァナルガンディを出発した馬車は、王都の西に流れる大河に沿って、南方の山へ向かっていった。山の名前はセイレン山、いくつもの峯が立ち並びまとめてサベッジ山脈とも呼ばれていた。

 街の中は石畳が敷き詰められていたが、山道に入るとそれはパッタリと途絶えてしまい、平にならしただけの道になった。王都を出てから2時間ほどで、目的の村には到着した。


 村は木でできた柵で囲われており、簡素な門が設えられていた。門番もいないので、この門に何か意味があるのだろうかと思いながら、一行は村へと足を踏み入れた。

 何軒か家が立ち並んでいるが、どの家も風が吹けば崩れそうな荒屋だった。住民らしい獣人たちが、家の中から一行を覗き込んでいるのが分かった。

 明らかに歓迎されていない雰囲気に、ルーカスは気分を害していた。横に立つステラも不安げな表情をしていた。と、突然ルーナシアが一歩前へ出て行った。


「私は聖ヴァナルガンド教会セイレン大聖堂所属、聖女のルーナシア・エルメスターです。この村の村長さんにお話をお伺いしたいのですが、どなたかご案内お願いできますでしょうか?」


 堂々と胸を張ったルーナシアに姿に、ルーカスをはじめ全員が圧倒された。それは村の獣人たちも同じだったようで、家の中からぞろぞろと出てきたかと思うと、全員が一つの家の方を指差した。


「ありがとう。ありがとうございます」


 ルーナシアは獣人たちの指差した家へ向かい、すれ違う獣人達にお礼を言いながら歩いていた。



 獣人達に教えられたこの村の村長の家は、他の家よりも少し大きいだけの荒屋だった。いまにも崩れそうなのは他の家と同じだった。

 ルーナシアが元気よく扉をノックすると、中から白髪の獣人が出てきた。


「はじめまして。私は聖ヴァナルガンド教会」


「さっき外で喋っておったのが聞こえている。それより聖女ルーナシア様が、こんな村に何かごようですかな?」


 村長は自己紹介など後回しに、本題に入った。そんな村長に、ルーナシアは優しく笑いかけ、穏やかな口調で切り出した。


「この村の星語りの巫女様にお会いしたいのです」


 星語りの巫女と聞いた瞬間、村長の眉根がピクンと跳ねたのを、ルーナシアは見逃さなかった。


「星語りの巫女様は、どちらにおいでなのでしょうか?」


 更に詰め寄るように言ってくるルーンシアから、村長は視線を外し、口をゴニョゴニョさせていた。


「巫女は修行中の身じゃ。おいそれとたやすく会わせるわけにはいかない」


「なるほど、ではせめてお声だけでも」


「いくら聖女様とて、許可できませんな」


 意外と頑固な村長だった。


「あらあら、ではこの子に見覚えはありませんか」


 そういうとルーナシアはステラを自分の近くに呼び、村長に顔を見せるように言った。

かぶっていたマントのフードを下げて、ステラがその顔を見せた。

その途端―。


「ひ、ひいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!ステラぁっ!?何故ここに?お前は死んだはず、ハッ!?」


 異様なまでに慌てふためいていた村長が、自分の失言に気付き、黙り込んでしまった。


「やはり、ご存知だったのですね。お聞かせ願いますか?この子のことを・・・?」


「・・・・・分かりました。お話ししましょう。星語りの巫女の話を」





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