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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
第二部 セイレン王国編
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第19話 護衛/トーマスとマイク

 ブロンズ王国の西側に位置するセイレン王国は、ブロンズ王国同様、北側が海に面しており、南側には山脈が広がっている。ただブロンズ王国と異なるのは、セイレン王国は湧水が豊富だという所だ。水源に恵まれたセイレン王国では、麦をはじめとした農作物の栽培が盛んで、その品質も周辺諸国の中では一番と評判高い。また、セイレン王国にはヴァナルガンド教の総本山、ヴァナルガンド大聖堂があり、多くの信徒が集う国としても栄えている。


 ブロンズ王国からセイレン王国に行くには、海沿いの商業街道か、山沿いの旧街道を通る必要がある。今回の旅の責任者であるサラの父親、ブルース・ミラーは旧街道から行くことを選んだ。これにはサラが猛反対したが、この時期は多くの商会が商業街道を通ってブロンズとセイレンを行き来するのでトラブルが起きやすいというブルースの説明に、騎士トーマスと騎士マイクが同調し、旧街道からセイレンに向かう事になった。


 聖ヴァナルガンド教会孤児院を出てから3時間ほど、2台の馬車は山沿いの閑散とした街道を進んでいた。先頭の馬車にはブルース、マイク、ジョルジュ、サラが乗り、後ろの馬車にはトーマス、ルーカス、ステラ、マーサが乗っていた。



「ねえ、ジョルジュ。あなた、あの二人をどう思う?」


「あの二人?」


「んもぉ~話が通じないわね。ルーカスとステラに決まってるじゃない」


「あぁ。どう思うも何も・・・。別に何もないんじゃないか?」


「はぁ・・・あんたって、お調子者の割にこういう事にはてんで疎いわよね」


「なっ!誰がお調子者だ!失礼なやつだな!!」


「へーんだ!本当のことじゃない!大体あんたは昔から」



 ブルース・ミラーは、荷台で騒ぎ始めた我が子に頭を抱えながら馬を走らせる。


「いやはや。なんともお恥ずかしい限りで騎士マイク」


 申し訳ないという顔でブルースが言う。


「お気になさらず、ブルース殿。子どもが活気溢れているのは良いことです」


 騎士マイクは後ろの荷台で繰り広げられる喧騒には目もくれず、微笑みながら返した。


「3年前に妻が亡くなって以来、すっかり勝気な性格になってしまって」


「勝気・・・ですか。私には、彼女がどこか無理にはしゃいでいる様にも見えますがね」


「騎士マイク、それは一体・・・」


「!ブルース殿、馬を止めてください!!」


 そう言ってブルースに馬を止めさせたマイクは、馬車を飛び降りた。


「ジョルジュ!君も来い!!」


 後ろの荷台に声を掛け、ジョルジュも連れ出して、騎士マイクは道の先へと走って行ってしまった。


「なになに?パパどうしたの?」


 荷台から降りてきたサラが父親に尋ねる。


「さあ、さっぱり分からん」


 娘の問いに首を傾げるブルースであった。


「マイクが何かに気付いたのでしょう。我々はここで少し待ちましょう」


 後続の馬車を駆っていた騎士トーマスが、ブルースに声をかける。ルーカスも馬車から下りて、剣を構えている。


「おそらく、盗賊か何かでしょう」


 騎士ブルースが腰の剣に手を掛けた。





 騎士マイクと見習い騎士のジョルジュは馬車から1キロ程先まで来ていた。


「ジョルジュ分かるか?この先の茂みに何人か潜んでいる」


「茂みですか?・・・あ、見つけた。いました、いました」


 目を凝らしながらジョルジュが言った。


「よし、では私はこれから彼らを潰しに行くから、君は馬車に戻って私が交戦中だと伝えてくれ」


「えッ」


「聞いてなかったのか?」


「いえッ、ちゃんと聞いています!あの、お一人で攻めに行くんですか?」


「ああ、いや、うん。私は大丈夫だから。ほら、行ってくるんだ」


 早く行けとジョルジュの肩を押す騎士マイク。ジョルジュもそれ以上は何も言えず、命令通り馬車まで戻ることにした。

 ジョルジュの姿が見えなくなってから、騎士マイクは懐から小さな笛を取り出した。


「さてと」


 スゥ~と息を吸い込み、マイクは思い切り笛を吹いた。が、笛からは音が聞こえなかった。



 馬車に戻ったジョルジュは、騎士トーマスに状況を報告した。すぐに騎士マイクの応援に向かうべきだと主張するジョルジュとルーカスに対し、トーマスは待ったを掛けた。


「あわてるな。俺たちまで迂闊に動けば、それこそ賊の思う壺だ。ここはマイクの帰りを待つぞ」


「し、しかし、いくら騎士マイクでも一人で賊を相手にするのは」


「アイツはひとりじゃない」


「え?」


「アイツには心強い味方がいるんだよ」


「味方?」


 トーマスの説明に疑問を浮かべるジョルジュとルーカス。と、荷台からステラが顔を出し、耳を抑えながら言った。


「なんか、変な音が聞こえる」





 その頃、騎士マイクは笛を吹き続けていた。マイクが笛を吹たびに、どこからともなくカラスが集まってきて、街道はカラス一色になっていた。

 マイクが今度は小刻みに笛を吹くと、カラスが一斉に賊の方へ飛んでいった。5分ほどで賊が地面に倒れ伏した。マイクが笛を吹き、カラスが一斉に飛び立つ。

 マイクは懐から縄を取り出すと、賊を一人ずつ縛り上げた。

 そして、また笛を吹くと、今度は大きくたくましい鷹が舞い降りてきた。マイクは鷹を撫で、その足に文を巻きつけた。


「駐屯所まで頼むよ」


 そう言ってまた笛を吹くと、鷹が飛び立った。


「お~い、マイクさ~ん」


 遠くからブルースの声が聞こえた。馬車を進めてきたようだ。


「トーマス~!ちゃんと待ってろよ~!」


「カラスが飛ぶのが見えたから~もういいかと思って~」


 トーマスが大声で答える。「まったく」と言いながら、マイクは馬車へと歩いて行った。

ルーカスとジョルジュは、マイクが捕まえた賊の人数を見て驚いていた。賊は全部で9人。全員が剣を持っていたらしく、筋骨隆々でたくましい身体をしていた。

 まだ底知れぬ強さを隠している騎士の姿を見て、二人の若者は思わず息を呑むのであった。



トーマスとマイクは騎士リチャードに憧れて腕を磨いてきました。

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