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ステラズ・クロニクル  作者: 森田ラッシー
第一部 ブロンズ王国編
13/60

第12話 帰郷/墓標

ルーカスとジョルジュ、3年ぶりの故郷です。

 第14期サベッジ山脈調査隊が『北の騎士団』駐屯地を出発して半日、調査隊は最初の目的地であるサベッジ村に到着していた。

 着いて早々、ウィルソン団長の指揮の下、野営テントが組み立てられていった。一通りのテント設営が終わると、今度は班ごとに食事の準備が始まった。

 ルーカスとジョルジュは、そろって副団長リチャードの班に組み込まれていた。これはもちろん、リチャードの意図したものである。班のメンバーはリチャードの他に、『北の騎士団』所属の騎士トーマスと騎士マイク、志願兵の青年ライナーがおり、全員で6人となっている。

 ルーカスとジョルジュは村に到着してすぐに、副団長リチャードの命令で水場の探索に向かった。とはいえ、サベッジ村出身の二人にとっては簡単な仕事であり、本来ならものの数分で終わる任務であった。そんなすぐに終わる仕事を、二人はすぐに終わらせようとは考えず、懐かしい故郷の探索に時間を当てることにした。

 燃え落ちて何年も経過した家屋が立ち並ぶ中を、ルーカスとジョルジュは昔の風景を思い出すようにゆっくりと歩んでいた。


「集会所の向かい側がサラの家で、そのとなりがルーカスの家だったな」


「俺の家はもう完全に崩れてると思うよ」


「案外、何か残ってるものがあるかもしれないぜ」


「どうかな」


 ゆっくりと歩みを進めながら、二人は崩れ落ちてた家屋の前に立った。ルーカスの家であった。最早、それが家だと証明するものはほとんど残っていなかった。


「ほら、何もないだろ」


「他の家よりも燃え方がひどいな」


「多分、直接火を付けられたからだよ」


 ルーカスの足が自然に動き出し、かつての自分の家から距離を取るかのように動き出していた。ジョルジュはルーカスについていき、二人は村の南端に来ていた。

 古びた墓石が立ち並ぶ中に、比較的新しく大きな墓石があった。


「これが慰霊碑ってやつか」


 ジョルジュが墓石に手を掛けながら、刻まれた文字を読む。


「亡くなった村人の名前が全部刻まれてるみたいだ」


「父さんと母さんと、リーナの名前もあるかな」


「・・・あったぞ、見るか?」


「いや、いいよ・・・」


 そう言ってルーカスは両手を組み、亡くなった家族を偲んだ。隣に立って、ジョルジュも同じように両手を組んだ。しばらくの間、二人はそのままでいた。





 二人が班に戻ると、ちょうどテントが設営できたようだった。水場の報告を終えると、ルーカスは腰に下げた袋から草を取り出して並べ始めた。


「ルーカス、お前この草どうする気だ」


 友人のおかしな行動を訝しみながら、ジョルジュが問う。


「これは全部食べられる草だ。ここに来るまでの道中に生えてた。あと、肉も」


 そう言って今度はうさぎを取り出した。


「今夜のディナーは豪華になりそうだな」


 ジョルジュを筆頭に、班員たちがじゅるりと舌なめずりをした。

その晩、肉を食べたのは副団長の班だけだった。



 夜は班ごとに順番で見回り任務をすることになっていた。副団長の班は明け方近くの為、班員たちは早めに眠ることにした。

 ルーカスは眠る前に、リチャードがステラから言付かったという紙袋を開けてみた。

 袋の中には小さなペンダントが入っていた。ペンダントには模様が刻まれていた。


「お守りか、何か、かな」


 ルーカスはペンダントを首から掛け、瞼を閉じた。





 ザザザ、と木々が揺れる。見張りをしていた志願兵が辺りをキョロキョロと見回すが、何も変わったことはない。


「なんだよ、風かよ」


 焚き火に薪をくべながら、志願兵は地面に腰掛けた。

その瞬間に、ブシュッと志願兵の首元から血が吹き出した。


「れ?」


 何が起こったのか分からないまま、志願兵の意識は沈んでいった。


「あー、おろしたてのナイフが血まみれだ」


「隊長、そんなこと言ってる場合じゃありませんよ。どうするんですか、まさか追っ手が来るなんて」


「あー、そりゃ来るだろう。しかも、わざわざ俺たちを誘い出すようにこんな開けた場所で野営ときた」


「どうなさるおつもりで?」


「あー、そりゃお前、せっかくのお誘いだ。とことん付き合おうじゃねえか」


 ザザザ、と風が木々を揺らしたその後に、ザザザザと先ほどよりも木々を揺らすものがあった。

 獣人の群れが、サベッジ村を取り囲むように展開していた。


次回、再戦。

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