第21章 力なき 1
ライオン、虎、豹、チーター、ピューマ、ジャガー、山猫。あるいは、あちらの世界に相当する種が存在しない、猫科の動物。十頭ばかりが気持ちよく寝そべっているのを、少し離れた高台から晶とテミストは眺めていた。この高台には上がってこられないらしい。
ここにいる獣は元は人間なんでしょう、と言ったのはテミストだった。女魔術師ラリサは漂着者を獣に変えて飼っているのだと、世間では恐れられているのだと。
悪い人だけだよ、とハルは事もなげに答えた。例えば、人を殺しては財を奪うことを生業とする海賊のような。それも更生の余地があれば見逃すという。特別更生することもなく、その後も人を殺し続けるかもしれないけれど、そこまではラリサは感知しない。そこを追及したのがマリッカだったわけだ。
あの中にケアルやコトが混ざっていたとしたら、自分はきっと安心しただろう。それが正直なところである。気楽そうに、平和そうにしているのを見れば、悲惨な末路とも感じなかった。動物にされたからといって反省するわけではないから、それで反省する人間であれば最初から手を出さないから、あまり気を許すなとハルは注意したけれど。ラリサのこともまた、改めて恐ろしくは感じなかった。
「あたしも魔術師だったら、ハルと何か分担できたのかしら」
ぽつんとテミストが呟いた。
「魔術の話になったら出る幕がないものな」
ハルはラリサと共に、日がな一日閉じこもっている。無論、目のことで、だ。
魔術によって視界を得ることは、珍しいものではないのだという。遠くのもの、隠れているもの、過去のこと、未来のこと、見えない景色を見る方法には事欠かない。そうした術を恒常的に発動させておくことは流石に手軽ではないようで、残る問題は手軽でないそれをどうして可能にするかということなのである。魔術師でない二人には、口を挟む余地もなかった。
とはいえ考えようによっては、並べると思う方が烏滸がましいのかもしれない。ハルは幼少時から魔術を学び、実践してきた――ひょっとしたら実戦で使用してきたのだから。
「ハルって、自分は魔術師としては未熟だって言うじゃない。……比べる相手の格が違うだけなんじゃないかしら」
「そんな気がする」
魔術師の、というより専門職の、基準や常識の感覚は素人にはわからない。
魔術を学べないものかと、テミストは一度ラリサに訊いて、二重の意味で時間がないと一蹴されていた。ハルの方に専心すべきラリサに教えている時間はないし、独習できるものではない。ハルを手助けできる程度の力がつくまでの年月、一緒にいるわけでもないだろう。伴侶になって添い遂げるつもりならともかくね、と付け加えたのはからかったのだろうが。
目のことや魔術のことに限らなくとも、二人にできることはみつからなかった。ラリサの庭たるこの島では、屋内も屋外も自由に歩き回れない。どこにどんな魔術のしかけがあるものか、ラリサとハルは把握しているそうだが、自分たちには見当もつかない。客人はのんびりしておいでと、女主人は笑ったけれども。
投げ出すように、晶は寝転んだ。空は高く、青い。生まれ育った世界では、生まれてこの方拝めた試しのないほど、澄んでいる。




