第19章 巡り会う 3
「あたしたち、っていうか今はあたしだけか。法要のときに使うお館にいるんだけど」
「法要?」
「ここはコルカ領主の墓山だから」
「墓山?」
「領主の家のお墓は全部墓山のどこかに造るの。亡くなって何日目、何ヶ月目、何年目っていう節目の法要や、成人前の子供や傍系なら葬儀も山の中で執り行う。庶民は大抵立ち入り禁止」
補足したのはハルで、解説したのはテミストで、ということはエルでは常識らしい。
この山に勝手に入り込んで、その館も勝手に使っているのだろう現状は、大っぴらにできない事態であるということになるのだろうが、年上の少女はそこには触れなかった。
「君たちも来る?」
「やめておきます」
ハルは一考の余地もなく断った。
「レイさんはマリッカをみつけるでしょう。マリッカが来るとわかってて、いるわけにはいきませんから」
「そう言いそうだと思って今まで言わなかったんだけど」
そういう推測ができたということは、ハルとマリッカの関係をそこそこ把握しているようだ。しばし躊躇って、声を落とす。
「君……目、見えてなくない?」
「お気遣いありがとうございます。大丈夫ですよ」
こちらの返答もすばやかった。大丈夫って、と晶は抗議を込めて口を開いたのだが。
「アキラ、テミスト。僕はね、一度おばさまのところに行こうと思うんだ」
提示されたのは、恐らく最善の案だった。
二人で話したいと千梨が言ったので、晶は洞窟の外へ出た。別に聞かれて困るわけでもないようだったけれど、半端に聞こえては中の方で落ち着かないだろうから、数メートル適当に離れる。
どう切り出したものか迷うように、千梨は空を仰ぎ、首を傾げた。
「あたしはマリッカに、血水晶経由で呼ばれてきたわけだけど」
覗き込まれた。
「君は、巻き込まれたのかな?」
「巻き込まれたっていうか」
口ごもる。正式に召喚されたのでないことは、見た目でわかってしまうのだ。晶のどこにも赤は染みついていない。そんな法則があるとは、昨夜か今朝まで知らなかった。
「……ぶっちゃけ、おもしろそうだからついてきたっていうか?」
「おい」
なるべく軽薄そうに、と努めながら誤魔化した。気に懸けて損したとばかり、じとんと睨まれたのは思惑通りである。呆れられたかもしれないけれど、責任を感じさせるよりはよい。
巻き込まれたのではない。連れていってと、寧ろ縋りついた。
その結果は、とても楽しいもので。望んだ以上のもので。
全然おもしろくないことになってますけど、と付け加えてから、早くも演技を忘れたことに気づく。尤も、それはそれで不自然でもなかっただろう。ふんと鼻を鳴らして、はあと何度目かの溜め息を吐いて、それから浮かべた微苦笑は、年上らしい色をしていた。
「あたしは、やることが済んだら自動で送り返してもらえるのかもしれないけど。君は、どうしようね?」
そう来るとは思っていなくて虚を衝かれる。しばしの沈黙の後に、ははっ、と乾いた声がこぼれた。
「みんな、帰るときのこと心配してくれるんだ。……俺の勝手だったのに」




