第8話
実は間違えて第8話消してしまいまして。書き直してますんで読んだ方も新鮮な気持ち(笑)で読んでいただけるかもしれません。
「よく聞きなさいイクス。」
「はい、イグニス兄さん。」
「訓練が終われば君は実戦に投入されることになるだろう。当然だ、僕らは兵器だからね。だが、命のやり取りは訓練ではない。言葉では分からないと思うけれど相手は迷わず殺せ、油断するな、慢心もするな。自分の能力を使って相手の全てを蹂躙しろ。そうでなければ自分たちが殺されるぞ。」
イグニス兄さんは普段見せないような真剣な顔だった。
が、そこでふっと顔を緩め笑顔を浮かべた。
「って、ここまでは建前ね。いいかい、僕らは兵器だが、ただの平気じゃない。自分で試行し行動できるヒトと比べて能力が高いだけの存在だ。と、僕は思ってる。だから何が正しいかとか、自分で考え行動しなさい。何が正しくて間違ってるって言うのは難しいけれども、それこそが大切だと思うんだよね。」
「分かりました!やはり兄さんは頼りになります!」
「ははは、よせよ。それより訓練の続きでもしようか?」
「はい!」
((ってことがあってだな。それからいろいろ考えた結果敵対した奴は基本徹底的に叩き潰そうと決めたんだ。))
((言いたいことはそれだけですか?))
((反省はしている。後悔はしていない。))
((はあ・・・もういいです。しかしどうするんですか。この状況。))
((どうするかなあ、はははははは。))
((笑い事じゃないでしょう!))
いやーホントどうしようか。ジークの言う通りやりすぎらしいし。
俺にそんなつもりは全くなかったんだけどな。
その時、訓練施設内に女の人の声が響いた。
「これは何の騒ぎですか?」
「ぎ、ギルドマスター!」
「リーフィアさんいいところに。ちょっと説明してもらってもいいですか?」
受付のお姉さんはリーフィアさんって言うのか。
それにしてもギルドマスターか。
このヒト強いな、周りの冒険者と比べても魔力の流れが半端ない。
よくよく見れば金色の髪に尖った耳、すらっとした身体つきをしている。
姉さんたちにも負けない凄い美人だし。間違いなくエルフだ。
ギルドマスターと呼ばれたエルフの女の人はリーフィアさんから事情を聴くと、俺の方に近づいてきて話しかけてきた。
「災難だったわね。ギルドの方針で冒険者同士の諍いには基本的に手を出せないのよね。」
「全くですよ。俺身分証明のためにギルドカードを作りに来ただけだっていうのに。どうしてこうなったって思ってますよ。」
「申し訳ないのだけど話を聞きたいから一緒に来てもらえるかしら?」
この提案は渡りに船だった。俺はその言葉に乗ることにした。
「分かりました。仕方が無いですね。」
そしてギルドマスターにそのままついていった。
ついていった先は執務室のようだった。
応接室も兼ねているのだろう。
執務用の机以外にも壺や絵画などが設えられていた。
俺は高級そうなソファーに座るように促された。
「さて、冒険者ギルドシルヴァーン支部ギルドマスター、エルレインよ。よろしくねイクス君。しかし私がいない時に限ってこういう騒ぎが起きるとは・・・やはりギルドの規則は見直すべきね。今回のようないざこざは初めてじゃないのよ。困ったものだわ。」
「それより俺に聞きたい事って何ですか?」
「今ギルド職員にも聞いたけれど当事者にも話を聞きたいのよ。」
「そう言うことですか。酔っぱらいが絡んできて俺の相棒に手を出したので返り討ちにしたんですよ。」
「相棒って言うのはその子?」
「ええ、ジークって言います。」
ジークはお座りの姿勢で俺の横に座っていて、エルレインさんにぺこんとお辞儀していた。
「ところでギルドマスターさんに聞きたいことがあるんですが。」
「エルレインで構わないわよ。聞きたい事って何かしら?」
「クランって何でしょうか。あの冒険者たちが『修羅の斧』だと言っていたので。」
「クランって言うのは同じ目的のために集まった冒険者の集まりよ。「修羅の斧」は主に討伐系の依頼をこなす腕利きの冒険者たちが多いわ。その分気の荒い人たちも多いのだけど。尤も、今日あなたに絡んできたのはクランの名を使って新人いじめをしていた連中ね。恐らく話が届けばクランからの除名処分を受けるでしょうね。」
「修羅の斧の他の人たちが報復に来る可能性は?」
「謝罪はあっても報復は無いわね。あそこのクランのマスターとは顔見知りでね。そう言う事は無いと思うわ。」
「そうですか、それは良かった。」
「良かったって言うのはどういう意味かしら?あなたほどの力があれば報復なんて怖くないでしょう?」
「ええ、まあ報復は大したことじゃないですね。しかし謝罪に来る可能性があるのか、まいったな・・・。」
「あら謝罪に慣れてないのかしら?」
「いえ、そうではなくて。話が終わったら修羅の斧を潰しに行こうかと思ってたので。後顧の憂いは立たなくては、ね?」
「・・・・・・」
「冗談ですよ?」
「・・・まあ、いいわ。それよりも気になることがあるのだけど私からも聞いていいかしら?」
「俺で答えられることなら。」
「普通Eランク冒険者がCランク冒険者、しかも3人も相手に勝てるものではないと思うのだけど。聞いた話だとあなたは尋常ではないほどの力と技で二人を倒した後残りの一人は凄まじい数の炎の槍を生み出してしかもその槍自体も実物の槍のような実体を伴ったものだった。そんな魔法聞いたことも見たこともないわ。あなた一体何者なの?」
「俺が何者なのか?っていう質問に答えるのは簡単なんだけどなあ。話しても構わないかなジーク。」
「あなたが決めたのなら構わないですよイクス。」
「い、犬が喋った!?」
「ほらいいリアクションだろ?これが正しい反応だぞジーク。」
「・・・・・・ショックです。」
こうして俺達はエルレインさんに話を始めるのだった。
銅貨は1枚100円程度です。某コンビニで売っているビック唐揚げ棒より一回りほど大きいのがガラガラ鳥の串焼きです。