第5話
設定回。やっと町に到達。
異界からの侵略者に対抗するために作られたモノ。
それが生体兵器である。
終わりなき世界と呼ばれる世界に侵略してきた彼らの目的は文字通りの「世界征服」が目的であった。
今となっては何故彼らがエンドレスアースを支配しようとしたか分からない。
が、エンドレスアースの人々は彼らに対抗するため国境・人種の垣根を越えて一つの集団を生み出す。
それが統一国家である。
「侵略者」と「統一国家」の戦いは序盤こそ不意を突いた形で「統一国家」を押していたものの、「統一国家」にも優秀な戦士や魔法使い、そして魔導兵器が存在した。
「侵略者」側にも強力な兵器の数々や優秀な戦士たちがいた。
彼らの戦いは均衡し、それからお互いに決定打を打てることなく50年ほど小競り合いが続いた。
が、その均衡を打ち破ったものがいる。
アダム・フレースヴェルグ、そしてイヴ・クルースニク。
彼等は掛け値なしの「天才」だった。
数々の魔導知識、魔法理論を考案し、それを応用した兵器の数々は「侵略者」たちを圧倒した。
その最たるものが「生体兵器」なのである。
その力はドワーフを凌駕し
その魔力はエルフや魔族でも及ばず
身体能力は獣人を越え
そしてヒューマンと同じ、いやそれ以上に成長した。
彼らの存在は容易く均衡を破り、戦況を尽く覆し、「侵略者」側は一気に劣勢に立たされ、「生体兵器」投入から約5年。
戦争が終結するまでに過去を思えば、さして時間はかからなかった。
その中でも全7体存在する「生体兵器」のうち、最後に作られた制式ナンバーが「規格外」という名が付けられた個体が存在する。
他の6体のデータをフィードバックし、世界に一つしかない永久機関とも呼べる無限に魔力と生命力を生み出す結晶体「星命結晶」を動力とした個体。
それが『NO.EX』、つまりイクスのことである。
「・・・・・・って言うのが俺の肩書なんだけど。」
「まるでぼくのかんがえたさいきょうのほむんくるすですね。ちなみに、生体兵器は私がラストナンバーですよ。多分。・・・・・話だけ聞くとイクスたちがいたから一気に戦争が終わった感じですが実際はどうだったんですか?」
俺とジークは湖のほとりの芝生の上で寝ころんでいた。
俺はジークを撫でながら日向ぼっこを楽しんでいた。
ジークは気持ちよさそうに目を細めながら俺の話に耳を傾けていた。
「あ~・・・・そうだな。なんだかんだで戦争だからなあ。一方的な殲滅とか虐殺ってのはなかったな。戦況が傾いたのは、俺たちが敵の重要拠点にばかり投入されたことが要因だと思うよ。兄さん姉さんは六人一組で運用されることが前提の部隊だったし。俺は俺で単騎にでいろいろ動き回ってたし。正直あのころには戻りたくないわー。」
「でもそのころから自重してないんですよね?」
「失礼な。自重位してたわ!多分。まあぶっちゃけ、「侵略者」側にもめちゃくちゃ強い奴とかいたしね。本気で戦わなきゃやばいのとか。剣振り回すと海が割れたりするんだぜ?そんな戦闘の影響が他の兵に及ばないよう結界張ったりさあ。これでも死にかけたんだぞ?いかん、思い出したらなんか泣けてきた・・・・・。」
「またまた~、イクスに限って・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「マジですか?」
「マジ。」
お馴染みになりつつあるこのやり取りを終えると俺は立ち上がった。
「さて、嫌な思い出が多い戦争の話はもういいだろ。未来に生きようぜ!未来に!そのためにはさっさと人のいるところを目指さないと。行くぞジーク。」
「そうですね。前向きに生きないとだめですね!そうでなきゃお肉も美味しくないですし。行きましょう。」
すっかり肉キャラだなジーク。
俺たちは立ち上がり再び街道を歩き出した。
街道を改めて進む。しばらくすると後ろから何かが近づいてくる気配がする。
「ジーク。」
「はい、およそ500メートルほど後方、何かガラガラという音とドカドカっというような音がしますね。」
「それ馬車なんじゃね?いよいよ第一人類発見か!?」
「そんな大げさな・・・・・しかも複数の音ですね、一定の速度で近づいてきます。」
後ろを気にしつつ歩いていると予想通り馬車が俺たちの横を通り過ぎて行った。
しかも全部で6台だ。
そのほとんどが荷馬車だったので、恐らく商人なのだろう。
先頭の馬車には武装したヒトたちが乗っている。
きっと魔獣等を警戒しているのだろうか、こちらにも注意を払い一人と一匹を彼らはじっと見つめてきた。そのまま馬車はどんどん通りすぎていく。
最後尾の馬車が通り過ぎる時、やはり護衛として乗っているのであろう、フードをかぶり、弓を肩にかけた人と目が合った。
顔立ちから女性だろうか。
取りあえずニコっと笑ってみる。
何故か女性は一瞬呆けた後、顔を真っ赤にし目を反らしてしまった。
((なあジーク。顔を反らされるとか、俺何かやらかしたんだろうか・・・・・これでも一応見た目は15歳でも中身はまだ3歳なんだぜ?ショックだわ~・・・・・))
((えっ、イクス3003歳ではなくて?))
((それはノーカンで頼む。))
その後も馬車が何台か通り過ぎて行った。
その度にじろじろ見られていく俺たち。
ちょっと恥ずかしい。
「こういうのを羞恥プレイっていうんだろうか・・・・・」
「何アホなこと言ってるんですか。イクスのそのコートが珍しいのかもしれませんよ。」
「これか。アダム博士がくれたんだよこれ。いろんなものに耐性があるコートでさ、自分の魔力を常に通して使えって言われてたから、言われた通り使ってたら、コートの形をした障壁みたいな感じになっちゃってさ・・・・ははは。」
「やはり自重していなかった!」
「え~・・・それ俺のせいか?」
そんなやり取りをしつつ、俺達は遂に町ともいえる場所に到達していた。
まだ距離はあるが、7~8メートルはあるだろうか、高い壁が見えてきた。
((高い外壁だな。魔物だけじゃなくてこれ対人戦も意識してるよな。))
((それだけじゃありません。薄いですが結界も張ってますね。低下したのは技術だけかもしれませんね。))
((ああ。))
念話でそんなことを話しつつ壁の方に近づいていくと、俺たちを追い抜いて行った馬車が何台も並び、町の中へ1台ずつ入っていった。
((あれ、身元確認っていうかしてるよな?しかもあの調べてる人達、重鎧着てるよな。だれがどう見ても衛兵だぞあれ。))
((私はともかくイクスどうするんですか?身元証明できるものがないですよ?))
((俺一応旅人ってことで何とか通れないかな。ジークはペットってことで。))
((ひどい!私はあなたの兄弟で相棒ではないのですか!?))
((すまん、ジーク。恨むならアダム博士を恨んでくれ・・・・っ!))
そして俺たちの番が回ってきた。
「見慣れない格好だな少年。一人と・・・・その犬もか?」
そう言って衛兵の一人がが近づいてくる。
ヒューマンだ。
「はい。森の中から出てきたばかりでして。」
「森だと?君はエルフなのかい?」
「いえ、違います。生t・・・ヒューマンです。父と一緒に暮らしていたのですが、父が亡くなりまして。相棒のこいつと一緒に森から出てきたのです。」
「ふむ、そうか。君は自分の身分が証明できるものなどは持っていないかい?ギルドカードがあれば手っ取り早いのだが。」
「いえ、持っていません。ギルドカードというのもなんのことだか分からないです。」
「ギルドカードも知らないとかとんでもない田舎から出てきたようだな。・・・・ああいやすまない、君を馬鹿にしたわけではないのだ。少し待っていなさい。」
そう言って衛兵のヒトは走って門の近くにある詰所らしき場所へ走って行った。
田舎以前に3000年前から封印されてました!
などと言えるはずもなく、衛兵の対応を待つ。
衛兵のヒトは走ってこちらに戻ってきた。
「この代替えのカードを持っていきなさい。門を通って真っ直ぐ進むと大通りに出る。そこを右に曲がると冒険者ギルドがある。そこでギルドカードを作りなさい。自分のカードが出来たらまたここに返しに来てくれればいいから。」
「わざわざありがとうございます。えっと・・・・・」
「クルーズだ。」
「俺・・・・僕の名前はイクス、こっちは相棒のジークです。」
衛兵のヒト・・・・クルーズに右手を差し出され、握り返す。
ジークも俺の言葉に合わせてお辞儀していた。
「ははは、無理に言葉を変えなくてもいいぞ。困った事があったらまたここに来なさい。力になれることがあれば手伝ってやるから。」
クルーズは大仰に腕を広げると大声で、
「ようこそ!シルヴェリア王国首都シルヴァーンへ!」
そう叫んだ。
テンプレ展開好きな人にはたまらない、次回冒険者ギルド編。