第17話
「知らなかったのか?お姉ちゃんからは 逃 げ ら れ な い 。 」
というやり取りが、3000年前にあったとかなかったとか。
「うおおおおおおおお!」
気合を込めながらブラッドがバスタードソードを構えながら迫ってくる。
よくよく見れば闘気は使っていないが、しっかり魔力で自己強化しているのが見て取れる。
うん、ハゲたちよりかは優秀だな。
そのブラッドに合わせて、槍使いと刀使いの二人も魔力で身体強化を施し、こちらを取り囲むべく回りこんでくる。
そこにブラッドの後ろにいた弓使いの矢が迫る。
縦ロールともう一人の杖使いは魔法を詠唱している。
特に縦ロールは言うだけあってなかなか早い。
そしてアリシアはというとこちらの動きを見逃さないよう決して目を離さず魔法使いたちを守っている。
なるほど、中々いいチームワークだ。
普通の相手ならこれで倒せたかもしれない。
こいつらの敗因は普通じゃない奴を相手にした事だな。
矢を避けたところに、裂帛の気合を持ってブラッドがバスタードソードを振り下ろしてきた。
だが俺はそのまま前に踏み込んでブラッドの横に避ける。
避けられる事など考えていなかったのだろう。
振り下ろした腕をそのまま横に薙いできたが、その剣が当たるより早くブラッドの首筋に木刀を叩き付けた。
それで気絶したのだろう。ブラッドの体が光を帯びて消えていった。
それを見届ける暇もなく横一閃、刀使いの抜刀術が迫る。
避けられないと判断した俺は闘気で木刀を強化すると刀を強化した木刀で受け止める。
ガキィィィィィン!
木刀と刀がぶつかったとは思えない音が響く。
驚愕した顔でこちらを見た刀使いは、衝撃で手が痺れたのかすぐ後ろに下がった。そこへ詠唱を終えたのであろう、魔法使い二人の炎の玉が二つ、それに弓使いの矢が迫る。
縦ロール達は勝負がついたような顔を浮かべていたが、甘い。
闘気を込めたままの木刀で迫る魔法と矢を叩き潰す。
その瞬間、縦ロールたちの表情が固まる。
そこへ油断はしていなかったのだろう、槍使いの突きが俺を狙う。
が、俺は槍使いに向かってジャンプすると突きを避けてそのまま槍使いに木刀を叩き込む。
俺の一撃で気を失ったのか槍使いはそのまま粒子になって消えて行った。
「何が魔法は使わないよ!しっかり身体強化してるじゃありませんか!!」
縦ロールが文句を付けて来る。
「失礼な奴だな。ちゃんと見てみろ、魔法なんて使ってないだろ。魔力の気配も流れも見えてないだろ?」
「うっ、た、確かに・・・使ってませんわね。では今は強化も何もしてないっていうんですの?強化無しだなんてありえないわ!木刀で魔法を潰すだなんて!」
「そうだね、強化はしてるよ。木刀だけ。」
驚愕の顔を浮かべる5人。
人数が減り、守っているわけにもいかないのかアリシアがこちらに剣を向ける。
刀使いは魔法使いたちのほうに下がり刀を構えている。
遠距離組は再び詠唱・そして矢を番えてこちらを狙う。
だがお前たちのターンは終わりだよ。
「悪いがさっさと終わらせるぞ。」
俺は木刀に更に闘気を込め肩に構えると横一線に振りぬいた。
瞬間警戒していたアリシアと刀使いは俺の飛ばした斬戟に何とか反応できたようで刀使いはジャンプして、アリシアはしゃがんで回避した。
だが縦ロールたちは避けられること無くまともに食らい、そのまま吹き飛ばされると痛みを感じる暇もなく粒子になって消えて行った。
「い、今のも魔法じゃないって言うの!?」
アリシアが叫んだ。
「叫んでる暇なんてないぞ?」
俺は既に斬戟を放った後、既に空中に飛んでいた。
斬戟を避ける事に集中してしまっていた刀使いは俺の一撃で叩き落され、消えていった。
そのまま着地するとアリシアと俺は向かい合った。
「さてあと一人。ささっと終わらせよう。」
特に武器を構えることなくアリシアに向かって歩みを進める。
アリシアが切り込んでくる。
だが俺は正面からアリシアの剣を受け止めると、瞬間力を抜く。
剣に力を込めていたアリシアの姿勢は崩れ、その隙を突いて横によけると武器を持った手を狙って木刀を叩きつける。
衝撃と痛みで武器を取り落とすアリシア。
顔は悔しさでいっぱい、というところだろう。
涙目を浮かべてこちらをキッ!と睨んできた。
「これで終わりだ。」
そうして俺はアリシアの意識を刈り取る。
アリシアは粒子になって消えて行った。
「さて、勝負は俺の勝ちだったが、まだ文句のある奴はいるか?」
模擬戦闘が終わり、粒子になって気絶していた面々も復帰し、俺は謝罪を受けた。
最初から謝っていればよかったのに、今は借りてきた猫のようにおとなしくなり、全員俺の話を聞いていた。
「まあさっき言ったとおり相手を舐めて掛かった結果がこれだ。舐めるなと言われたが舐めていたのは君たちのほうだった訳だ。更に言わせてもらえれば、学園長というこの学園のトップがわざわざ俺を連れてきた時点で何かあるな?って察しろよ。君達さ~、学園きってのエリートなんだろう?浅慮にも程があるぞ全く。」
「あの、教官。質問があるのですが。」
刀使いの少女がおずおずと手を挙げていた。
「かまわないよ、えっと・・・・」
「サクラ・サギリと申します。教官のあの木刀を振ったときに飛んできた斬戟は一体何なのですか?あんなもの見たことがありません。」
「え、ああいうの見たことないの?あれは訓練すれば誰でも使える術だよ。秘伝の技でもなんでもないぞ。」
「あんなに凄まじい技だというのに!?」
「凄まじいと言うほどの物じゃない。それより君達に言っておくことがある。」
生徒全員を見渡しながら俺は言う。
「俺は俺のできる範囲で君らを指導する。まあ仕事だしね、全力で鍛えてやる。嫌なら辞めるなり、武術訓練の時間だけ他のクラスに移動してもらうなりしてもらっていい。学園長には伝えておくから。一晩考えて、明日また参加してくれ。じゃあな。いくぞジーク。」
生徒たちが無言でい俺達を見つめる中、訓練場を後にした。
夕暮れ亭・イクスの部屋
「ジーク先生、今回の判定は・・・・・?」
「ぎりぎり、ホントにぎりぎりですが・・・・。」
「ぎりぎりですが・・・・?」
「アウトです。」
「オウフ」
俺はそのままベッドに倒れこんだ。
これで生徒0=イクスさんクビ=王様とのコネもなし=神器に触れられない。
イクスさんピンチ!やはり国家と事を構えるしかないのか・・・・っ!