第0話
ちょっと考えて書き直して新しい作品として投稿してみました。暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。
暗い通路、その中をを誰かが歩く音がする。こちらに近づいているようだ。
そして足音が止まると、鉄格子越しにこちらに声がかけられた。
「イクス。」
「アダム博士。俺の処分が決定したのかな?」
博士と呼ばれた男は納得がいかないという表情を隠そうともせず、イクスと呼ばれた少年を見つめた。
「評議会での処分が決定した。多重結界による封印術式を用いて封印するそうだ。君は戦争を終わらせた英雄だというのに・・・すまない、僕にはどうすることもできなかったっ・・・!」
アダムは俯きながら力いっぱい手を握り締めていた。
「いえ、『処分』されなかっただけでも運がいいと思うしさ。ヒトから見れば確かに俺は化け物だしなあ。しかもその化け物を殺すこともできない。だから封印するしかないんでしょう?俺がヒトなら同じことをしていたと思いますよ?だから気にしないで下さい。封印されるだけなら死ぬ分けじゃないだろーし、いつか封印がポロっと解けるかもしんないし、ね?」
イクスはそう言うとアダムに微笑みかけながらそう答えた。
「本当にすまない・・・。」
泣きながら謝罪するアダムにイクスはこう言った。
「謝やまるなよ博士。俺は博士に『生んで』もらってよかったと思ってるし。他の兄弟達はわかんないけど、概ね同じ意見なんじゃないのかな。博士達にいろいろ教えてもらった事、俺は十分楽しかった。だから大丈夫さ。」
「そうか・・・・・そう言ってもらえただけで僕は君らを『生んで』よかったよ。」
涙を拭い、アダムは微笑んだ。
「ここだけの話だ。君の中にある隷属コードを封印が解けると同時に解除するように仕込んでおいた。」
「・・・・・・は?」
先ほどまで泣いていたというのに、いたずらっ子のような笑みを浮かべてとんでもないことを口走った生みの親を驚きと共に見つめるイクス。
その反応に満足したかのようにニヤニヤしながらアダムは続けて言った。
「君の言うとおりいくら多重結界を用いるとはいえ絶対ではない。いつかは封印が解けると僕は予想している。それこそ君が言うようにポロっとね。その時には評議会も統一国家も無くなっているかも知れない。そうでなくても隷属コードが消えて君は自由だ。そしたら君はどうしたい?」
そう問いかけられ、イクスは少し考えた後、
「うーんそうだな~。取りあえず好きにいろいろ見て回ったりしたいかな。敵との戦闘ばっかりでまともに見て回ったりしたことないし。博士の言ってた食べ物とかも食べてみたい気がするね。もっとも、俺ってば兵器だから別に食事とかしなくても大丈夫なんだけどさ。」
アダムは一瞬きょとんとした顔をしたかと思うと何か暖かいものを感じ、気がつけば笑っていた。
「あっはっはっはっはっはっはっは、・・・・・・・・・そうなるように祈っているよ。封印術式は明日行われるそうだ。僕は立ち会うことが許されなかった、だからこれが最後だ。元気でな、『息子』よ。」
息子と呼ばれたことにイクスは驚きつつも、柔らかい笑みを浮かべ
「『父さん』こそ、元気で。」
そう言葉を返したのだった。
翌日、イクスと呼ばれた人の形をした生体兵器『NO.EX』の封印術式が決行された。
最初から最強でもいいじゃない。生態兵器だもの。byふうらいぼう