蛇の足とは知りながら(設定編)
「誰でも突然かかる病」の本文では書ききれなかった設定。
結構真面目な内容、かな?
蛇の足とは知りながら①
「誰でも突然かかる病」について、備忘録というか何と言うか。(むしろ言い訳)
登場人物に全て語らせると、設定とか全く出てこないもんですね。
彼らにとっては、それは常識だから。
町の風景とかも、全く出てこなかったので、あせって何とかひねりこんでみたり。
元が明治時代の日本を舞台にして書いていただけに、「分かるよね」的な省略が多くて、無国籍加工をしたら彼らがどんな場所でどんな格好で生活しているのか説明する必要が出てきたのですが。それは彼らにとっては当たり前なのですよ。つまり、意識に上らない。したがって、説明の必要を感じない。
結果、本文には最低限の説明(?)しかなされないということに。あまり説明くさくなっても、不自然ですから。
というわけで、蛇足とは思いつつ、ちょっと説明足らんやろというあたりを書いてゆこうかと。
一応、予定としては、「宗教について」「身分について」「政体について」あたりはちょっと薀蓄っぽく語れるのではないかと思います。
蛇の足とは知りながら②
「誰でも突然かかる病」解説編その1『宗教について』
この話、時代背景なんかは全部あらすじに詰め込んで本文ではほのめかすだけと言う不親切仕様となっておりますが。
あれでも頑張ってまとめたんですよ、あらすじ。
本当は5行くらいにしたかった。無理ですね。
モデル・明治維新を国籍不明でざっくりまとめたんですが。かなり単純化して。いくらなんでもあれ以上はまとめられませんでした。っちゅうか、あれじゃ諸侯がおそまつすぎる・・・。ま、本文には関係ないし!
前置きが長くなりましたが、宗教について、と言いますか、「お寺について」。あくまでこのお話の中の、ですよもちろん。
えー、何であらすじの話から入ったかと言うと、あそこに『神王』と言うのが『祭事を司どる』とか書いてあったと思うのです。その祭事というのは「神殿」で執り行われるもの。つまり神様を祀ってある場所は「神殿」。
神殿は、神様を祀ることが最重要で、人間のことは関知しないのが基本。
どうして神様をお祀りするのかと言うと、今の暮らしがあるのは神様のおかげである、と言う考えからです。この神様は「祟り神」つまり、人間にとっては災厄となる自然を象徴する神様なので、災厄が起こらないように、なだめすかすのが神殿の役割となるのです。
対して「お寺」と言うのは、人間の心を平安に導くのがお役目。
元は外国から入ってきた思想を、この国独自の解釈を経て、現在では人間の欲をそぎ落とす修行の場であり(=僧の修行)、人間の悩みや何やらを相談できる場所(=一般人にとってのお寺)となっている。
尚、お寺というのは一般名称で、正式には寺院であり、よってそこで一番偉い責任者は「院主」とよばれています。……本文で説明できなかった。
まとめてしまうと、神殿=神様相手、寺院=人間相手、と住み分けができていると言う。
ちなみに、彼らの収入源は、神殿は領主や地主など、土地に責任のあるところから、寺院は周辺の住人、困ったときに相談に乗ってもらう人から寄進を得ています。
蛇の足とは知りながら③
「誰でも突然かかる病」解説編その2『身分について』
身分といっても、詳しい話は歴史と関わってきますので、登場人物と関係ある辺りだけをざっくりと述べてゆこうかと思っております。
まずは、貴族と平民があります。
大雑把に、王に仕えているのは貴族、それ以外が平民。
で、この王様が二人存在するので、貴族にも二種類あるのですが、ここでは政王のほうの貴族について。
一番上は政王。神王と違って政権交代がありますので、諸侯の大親分といったところです。
二番目は諸侯。政王から土地を治める権利を認められた大貴族です(中には中小貴族もいますが)。
三番目、政王に直接仕える政府運営に携わる上級貴族(場合によっては諸侯よりも立場が上)。尚、政府運営に諸侯が関わることもあります。
四番目、諸侯に仕える地方政治に携わる中級貴族。
五番目、上級貴族の部下となる中・下級貴族。
六番目、中級貴族の部下となる下級貴族。
この五番目と六番目の貴族は、ピンきりの階級に分かれており、騎士階級はここに入ります。
ただし、奇数と偶数で所属が分かれているので、六番から五番に出世なんて事はありません。
身分制度は融通が利かないように見えて、結構抜け道などがあり、平民であってもこの五・六番目には潜り込めたりします。政変前後には特に境界があやふやとなり、ヨリアスは平民から五番目の上級騎士にまで出世したのですが、政王退位の煽りをくって、「急場凌ぎで与えられた地位には意味がない」と新政府側(当時はまだ反政王府諸侯軍)から判断され、親友は士族としてではなく暴徒として処刑されてしまいました。
ちなみに、この「士族」と言うのは三番目以下の貴族の一般名称。特に騎士階級に使われることが多い名称です。
平民には特に家格などはないことになっています。職業の違い、貧富の差が存在するだけです。
婚姻は、上三つ、三番と四番、二番と四番、三番と五番、四番と六番、さらに平民と下二つの間で結ばれることがあります。もちろん同一階級の婚姻が尤も多いのは言うまでもありません。
蛇の足とは知りながら④
「誰でも突然かかる病」解説編その3『政体について』
政体って言うのは、要するにその国の形、政治形態のことだと思うのですが、本編時点の政府だけに限ってもたぶん説明不足になると思いますので、その前、政王政府が成立したあたりから。
……だと神王の説明ができないので、ざっくりと歴史の流れを。
古代:それぞれの地域ごとに祀る神があり、それぞれの首長が治めていた。
↓ ・勢力拡大を図ったり何たりで大きな権力を持つ王が現れる。
↓ ・王が国をまとめ、それに傅く元首長たちという構図が出来上がる。
中世:国にただ一人の王、それに仕える貴族の図式が完成する。
↓ ・王は国を代表して神に仕え、国を治める。貴族は手足となって地方を治める。
↓ ・貴族のさらに手足となる者たちが地方で力をつける。
近世:地方で力を持った者が勢力を集め、権力を握る。
↓ ・王(神王)の存在を認めつつ、実質的に国を動かす力を奪う。
↓ ・王を「神王」として、権限を神に関する物のみに限定する。
近代:神王と対を成す「政王」と名乗るようになる。
↓ ・政王は元は地方貴族であったことから、勢力が衰えれば次が台頭するようになる。
↓ ・平和と乱世が交互に訪れるが、実権を奪われた神王は逆に安泰となる。
現代:幾つめかの政王政権が末期となり、外圧もあって速やかに政権移譲が行われる。
↓ ・政権移譲に当たって、後釜に貴族を据えるには時間がないので神王を据える。
↓ ・神王を中心に、貴族を配置して政府を発足させる。
現在:政権移譲後のごたごた(内乱)もいくつかあったが、おおむね平和である。
モデルは当然日本史です。むっちゃ簡略化アンド適当。
政権移譲前後の内乱は、政王政府(またはその関係者)vs諸侯(の一部)だったのですが、神王政府(=新政府)が成立した後の内乱は、この政府の方針などなどが気に食わなかった新政府高官が中心となったものです。
政府の形が固まるまでは、こういったごたごたが起こるのは当然で、政王が神王に政権移譲をしたのは、相手が諸侯では必ず反発するものが多く現れ、それを一つの家では抑えられないことが分かっていたからです。
ちなみに、ヘーデン君がアーベイ氏と出会ったのはこの新政府以降の内乱の時です。彼は道案内係でした。
さて、現在の政府の形体について。
トップは神王を推戴していますが、ほぼ敬して遠ざける方式、今までとあまり変わりない扱いです。ただ、政府の会議報告とかなされる程度。政治の実権は政府にあります。神王も今まで政治に関わってこなかったので、急に国を動かすよう言われても困るっちゃー困るでしょうが。
政府を構成するのは、反政王の諸侯関係者、及びその協力者である神王貴族。が中心ではありますが、それまで国を動かしていた政王政府の実務関係者も一応含まれています。彼らが一番諸外国の事情に詳しいですからね。
こんな感じで政治の中枢は反政王派が巾を利かせているので政王びいきの人々は「なんだこいつら」てな感じに嫌っているのが現在の新都の姿です。




