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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題)  作者: tei
ep2.姉妹(キオク)
61/61

3-8

「さてさてそれでは早速!」

 大黒は一人ハイテンションで、教科書を開く。俺たちも、まるでそれが合図であったかのように、一斉に教科書とノートを開き始める。さっきまでのことがあるせいか、大黒以外の三人は若干ロウテンション気味だったのだが、大黒にそれを気にする気配はない。

 そうして勉強会が、始まった。

 ――五分後。

「…………」

「…………」

「…………」

――…………。

 ――十分後。

「…………」

「…………」

「…………」

――…………。

 ――三十分後。

「…………」

「…………」

「…………」

――…………。

 さらさらと。

 シャープペンがノートの上を滑る音だけが、三十分間も、延々と聞こえ続けていた。

「……、うーんとさ」

 その沈黙に耐えかねたように、大黒が口火を切る。俺たち三人は手を止めて、大黒に注目する。大黒は少しためらいがちに、

「なんかさー。私のイメージしてた勉強会と、違うんだよねー……」

 と、ため息混じりに言った。

「小白ちゃんのイメージしてた勉強会……?」

「どういう意味だよ? 大黒ー」

 咲屋は首をかしげ、島は大黒を気遣うように、聞く。

「なんていうかなー。こう、クラスメート四人が集まったってことはね、うーん……もっとこう、話に花が咲いても良いんじゃないかな〜、と……こう思う訳なんだけど」

 まあ、言いたいことは何となく分かる。島は「あー……」と納得したように。咲屋は「そうなの?」と、いまいちよく分かっていないように、反応を返す。大黒は「そうなの」と肯き、

「だから、もう少し楽しくやらない?」

 無茶を言う。

 勉強を楽しくなど、できるはずがない。――……ということは、大黒が言っているのは。勉強ではなく。……世間話、か?

「ってことは大黒? オレらは、話した方が良いってことか?」

「うん。そう」

 自分から勉強を教えて欲しいと頼んできたくせに、大黒ははっきりと答えた。ころころと考えの変る奴である。

「何について話せば良いんだ?」

「そうだね……」

 うーん、と考え込む大黒。咲屋は大黒と島の会話を聞いているのかいないのか、またいつものように、ぼーっと中空を見つめている。

「じゃあ、更衣君、決めてくれない?」

――…………。

 どうして、俺が。

「だめかなー?」

 あからさまに嫌そうな顔をしていたのだろう、俺は。大黒は、少し困ったように腕を組む。

「じゃあしょうがないから、適当に話そうか」

「それって普通の会話じゃ……」

「悪い?」

「いいえ」

 しょんぼりと肩を落とす島。前途はまだまだ多難のようである。

「それじゃあ――……」

 大黒が話し始め。

「へえー」

 島はそれに相槌を打ち。

「…………」

 咲屋は身動き一つせずぼーっとして。

「やっぱり何か違うっ!」

 大黒は叫んで、机をばん、と叩いたのだった。

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