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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題)  作者: tei
ep2.姉妹(キオク)
51/61

2-3

「うん、確かに君の判断は、それ程間違っちゃいないよ」

 病院からの帰り道(訳の分からないことに、この病院は入り口付近に○○病院と銘打ってはおらず、俺は結局ここの名前を知ることが出来なかった)、紅也は俺の前を軽い足取りで歩きながら、そう言った。今日の私服はもちろんワンピースでもスカートでもなく、真っ黒なTシャツと黒っぽいジーパンという、珍しくも何ともない、普通の格好をしている。にしても、こいつはどんな格好をしていても、その顔のおかげで、どうしても男子には見えないな……。

――お前さあ……。

「ん?」

――いい加減、髪、切れよ。それ……校則違反だぜ?

「気にしない気にしない。で、話に戻るけど」

 にやにやと。

 嫌らしい笑みを浮かべて、紅也は立ち止まり、俺の顔を覗き込むように、腰を低くした。

――…………。

 何だろう。何だか――何でだか、若干腹が立ってくる気すらする、嫌味な笑顔。しかも、それが常人離れした――……いや、実際普通の人間ではないのだが――およそ人間では不可能なほどに、完成された、『綺麗』な笑顔なのだ。……腹が立つのも、道理と言えよう。

 とは言っても。

『それ』は、俺が感じることの出来ない領域にある、『感情』なのだけれど。

 他人に対する――……

 感情――……

 ね。

「君の、咲屋灰良……彼女の告白に対する、その対処は、間違っちゃいない」

――間違ったとは思っていない。

「だろうね。君はいつだって、自分が最善だと思った行動を取っている。間違った、なんて、思ったコトもない。……うん、まったく結構。良いものだよ、間違いを犯さない人間、ってのは」

――なんだ、その言い方。皮肉めいて聞こえるぞ。

「いや、皮肉を言っているわけじゃ、ないんだ。ただ、捉え方ってのは、人それぞれだってコト」

――…………?

「『自分は間違ったコトをしていない』。うん、そうだろうとも。でも、それはあくまで主観だよ。言われた方が、つまり『彼女が』、どう思ったか……、君にも誰にも、分かりはしない。それこそ、僕のような悪魔ででもなければね」

――…………。

「『自分は間違ったことをしていない』……百人いれば、百通りの見方があり、百通りの考え方がある」

 つまり、そういうことさ、と。

 紅也はくすくすと、本当に楽しそうに、笑った。

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