表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い瞳で悪魔は笑う(仮題)  作者: tei
ep1.病院と兄妹
27/61

――それにしても紅也のやつ、強引だったな……。

 消灯時間が近付いてくる中、俺は呟いた。消灯時間は夜の十時。今は、……九時の五十分。

「そうですねー、どうしてあんなに……」

 途中で、アラタ君は言葉を切る。紅也のことをとやかく言いたくないのかもしれない。

「それにしても、ナイフ通り魔とか、怖いですよね……。雪花、大丈夫かな」

 ああ、そういえば。

 ナイフ通り魔、か。流行っているんだったっけ。

 ナイフ、ナイフ、ナイフ……。

 普通――。

 普通、通り魔って、刃物で背中を一回切りつけるとか、そういうものなんじゃないのかな。……昨晩見た二人みたいに、あんなに無残な殺し方を、するものだろうか。

 いや。

 そんなコトはどうでも良い。俺が引っかかっているのは、もっと根本的な、……そう、凶器の――ナイフだ。

 ナイフ。

 俺がここにいる理由。いや、原因。

 そして、その原因の原因。

 咲屋灰良。

『ぱちっ』

 病室の電気が消された。

「それじゃあ皆、おやすみなさい」

 何時の間に来ていたのか、みちるさんが言って、行ってしまう。時計の蓄光針は十時を指している。あと二時間で、俺とアラタ君はここを抜け出すことになっている。入院患者が深夜に出歩くなんてことを、医者が許可するはずはない。なので、外出許可など申請すらしていない俺たちである。幸いここは二階の窓際なので、簡単に抜け出せる、はずだ。たいした計画を立てているわけではないので、恐らくいきあたりばったりの脱出劇となるだろうが、……まあ抜け出せるだろう。

「あの……更衣さん」

 アラタ君が、小さな声で、隣のベッドから声をかけてきた。俺も、ひそひそ声で答える。

――何?

「その、……すみません。更衣さんには何の関係もないっていうのに」

――気にしないでくれ。どうせ何を言ったって紅也は聞かないしな。それに、俺だって雪花や君が心配だし。……でも、俺なんて、本当に行って良いのか? なんか個人的な話になりそうだったら、俺、どっか行ってるから……。

「有難う御座います」

 暗がりの中で、ぺこりと頭を下げるアラタ君の姿が微かに見えた。俺はもう一度、気にしなくて良いと言って、カーテンを閉めた。

 さて。

 紅也が俺に、ついていけと言ったということは、そこで何かが起こるのに違いない。と、いうことは。

 俺は本棚に手を伸ばして、小さなペンライトを手に取った。左手には、勿論赤表紙の本。

 何が。

 何が、――書いてあるのか。

 光りが漏れないように注意しながら、本を照らす。

 一ページ目には、昨日の紅也の字が――……、なかった。代わりにそこに記されていたのは、英文だった。まるで、あたかも普通の英語本のように、ずらりとアルファベットが並んでいた。……ああ、そうか。これは恐らく、紅也なりのカモフラージュなのだろう。他の人に見られても、良いように。

 だからって、英文ってどうなんだ? しかもこれ、見た感じ聖書だぞ? 悪魔の癖に。

 呆れながら、俺はページをめくる。

 案の定。

 そこには紅也の字が、丁寧に書き込まれていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ