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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題)  作者: tei
ep1.病院と兄妹
24/61

3-14

 院長室を出た俺は、外で待っていたらしいみちるさんの先導で、また来た道を戻っていく。

「院長先生、なんておっしゃってた?」

――俺の妹がやったんじゃないかと先生は疑ってるみたいですね。でも、できるわけもないので、警察は動いていないそうですよ。

「そう……」

 院長の怖がりようは、見ているこちらが滑稽に思えてくるほどに真剣だった。でも、そんなこと、みちるさんには言う必要もあるまい。

「二年前。……院長先生は、今のような地位にはいらっしゃらなかった。そのときの同僚だった先生方が、あなたの妹さんの病室で、死んでいたのよ」

 そうか。友人を、失った――のか。

「先生は、それからずっと、あなたの妹さんを怖がって怖がって怖がって怖がって……。彼女の名前を呼ばなくなったのも、そのときから」

――そうですか。

 院長の恐怖の原因は、そこか。

『明日にでも自分が殺されるのではないか、という恐怖』、……ね。

 先を歩いていたみちるさんが、立ち止まった。振り向いて、ぼんやりとしていた俺を見た。

「どうしたの? 着いたわよ」

――あ、はい。

 院長室に入る前とそっくり同じ会話を交わして、俺は、昼間の明るい病室へと入った。

「あ、更衣さん。お帰りなさい」

 にっこりと笑って、アラタ君が出迎えてくれた。

「じゃあ雨夜君、私はこれで」

 短く言って、みちるさんは病室を出て行く。俺はそれを見送ってから、自分のベッドに戻った。アラタ君は俺がどんな話をしたのか気にしていたらしく、すぐに話しかけてきた。

「あのー……事件のこととか、聞かれたりしたんですか? 至夏さんに……」

――え? いや、院長に。どうして?

「何がですか?」

――いや、だから……、どうしてみちるさんに聞かれたと思ったのかな、って。

「ああ……、だって、殺された桜坂さん、みちるさんの友達だったみたいですから――……、でも、違ったんですね」

――うん。

 俺は肯いて、あの赤い本がきちんと俺の枕元にあることを確認した。まあ、読まれても構わないのだけど、流石に誰かに持っていかれたりしたら、紅也の奴怒るかもしれないからな。

「そういえば、更衣さん」

 唐突に、アラタ君は言った。

「更衣さんって、もしかして寂しがりやですか?」

――え?

 いきなり何を、と見つめる俺に、アラタ君は「ああすみません急に」、と頭を垂れる。

――いや、いいけど……。でも、いきなりだな。

「あの、えっと。雪花が、さっき来たときにそう言ってたんです」

――え? あの子が……?

「ええ。……で」

 俺を見つめて、答えを待つアラタ君。……何と答えれば満足してくれるんだ?

――そうだな……俺は。

「はい」

――俺は……。

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