はんぶんこ。
―――窓際だった。
それはまだ春で、午前中で、柔らかい陽射しが真っ直ぐに私に届いていた。
ねえ好き。
ずっと好きだよ。
届かないんだろうとは思ってる、分かってる。
叶わないなんて知ってるよ。
でもそれが、恋ってもんでしょ?
「ねえ、定規貸してー」
後ろからかけられた声に、私は振り向かないまま返事をする。
「やだよ、折るから」
気づいてる?
貸さない訳ないって事。
絶対負けちゃうの。
「折らねえよ失礼なっ」
「今まで折らなかった事がないでしょー」
ふふっと笑いながら、私はやっと振り向く。
なんで最初はちょっと抵抗するのかって、それはこのくらいの会話がしたかったから。
どんな会話でもよかった。
心がほわわんってあったかくなって、その短い会話だけを頭の中で反芻するの。
…ねえ、すごい好き。
満面の幸せを顔に表す。
表したい訳じゃない、だけど自然に表れてしまう。
「折っちゃ駄目だからね」
言いながら、30cmの折り畳みの定規を手渡した。
「さんきゅっ」
受け取って、すぐさま遊び始める。
…そう、いつもの事。
そしていつもの如く…。
「…あ」
折ったな。
その、文字にすれば一言で。
私はすぐに勘付くの。
「ごめん」
全く悪びれていないように笑って、そう言った。
「あほ」
私も笑いながら、言ってしまう。
何本目か分からない、その定規。
折ったのは、全部君。
それでも嫌いになれないのは何でだろう?
「これ、半分頂戴」
0cmから15cmまでの方。
折れた半分を私に見せながら、にっと笑う。
「ええー…」
苦笑しながら私はそう言った。
ほんとは、持ってて欲しかったんだろうな。
だって16cmから30cmの方を私が持ってる訳で。
ちっちゃなちっちゃな、本当に小さな日常のペア。
「いいじゃん、お前の物は俺の物」
笑いながら、そんな事を言う。
その笑顔に、負けた。
「…いいけどさ」
「さんきゅー」
持っていた半分を、自分の筆箱の中に入れた。
はんぶんこ。
君と私で、はんぶんこ。
幸せっていう感覚。
…この時は、ね。
3日後くらいに、床に落ちてる半分の定規を見なければ、ね。
「ねえ、これ」
君が持っていた半分。
「は?いらねえよ」
変わらない、半分の定規を私から奪った時の、あの笑顔。
…そうだよね。
そうなんだよね。
気付いてた…でも自惚れてた。
もしかしてって、ちょっとだけ心の隅っこにあったのかもしれない。
だって全然思ってなかったら、こんなに胸が痛い訳ないでしょ?
「だよね」
何で私、それでも笑ったんだろう。
何で私、笑えたんだろう。
ああもう。
好きじゃん。
すごい好きじゃん。
ホント、何で好きなの?
分からな過ぎる。
だって好きな所上げてって言われたって、1つも上がってこないよ。
何処が好きなのかって、答えられないんだよ。
苦しかったのに、泣きたかったのに、馬鹿って罵りたかったのに。
それでも笑っちゃうんだ。
嫌われたくないからって、今の関係壊れるのが嫌だからって。
めんどくさいって思われたくなくて。
何で好きなの。
何処が好きなの。
ねえ、好きじゃなくなればいいじゃん。
どうしてそれが出来ないの。
―――言ったじゃん、「お前の物は俺の物」って。
ねえ、それだけでも嬉しかったよ?
私自身は必要とされてなかったと思う。
それでも嬉しかったよ。
でもね、嬉しかったけど悲しかったよ。
物だけじゃ嫌。
物だけじゃなくて…私をあんたの物にして。
それともやっぱ、私じゃ駄目?
半分に折れている定規を、そっとポケットに入れた。
End…
はい。
実話です(ぇ
中2だったかな、確かww
実話をもとにした短編を書こうと思いました、しかし最終的に完璧実話に←おい
だからあんまり、語る事もありません^^;
ただね、本当に好きだったよ。
伝えた事はないけど、本当、大好きだったから。
…あはは、恥ずかし(笑)
それでは。
ここまで読んで下さった皆様に、最大の愛と感謝を込めて。
With love…
ありがとうございました!!!