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第7話 黒き修羅、紅の誓い



「金猫、下がれ!」


鋼牙の声が夜を裂く。

観察者の放った黒い獣が、波のように押し寄せてくる。

その一体一体が、かつて修羅院で封じられた“怨念”の残滓。


鋼牙は深く息を吸い込み、首の黒鉄のリングに手をかけた。

「……お父様、どうか今だけは――」


――ガシャッ。


リングが光を放ち、黒炎のようなオーラが鋼牙を包み込む。

制服の下から修羅の刻印が浮かび上がり、瞳が紅く輝いた。


「修羅院・第二の印――“破戒”」


轟音とともに、鋼牙の腕から紅の刃が形成される。

一閃。

獣の群れが、次々と炎のような光に呑まれていった。


観察者はその光景を見ても、まるで興味を失わぬように微笑む。


「やはり“修羅の継承者”だな。

 だが、君の力は未完成だ――封印の“半分”は、あの娘の中にある」


鋼牙は歯を食いしばる。

「金猫は……戦わせない。彼女は、ただの女の子として生きるんだ!」


黒炎が弾け、紅と黒の光がぶつかり合う。

一瞬の隙を突き、観察者の影が鋼牙の胸を貫いた。


「っ……ぐ……!」


金猫が叫ぶ。

「やめてくださいっ! 鋼牙兄さんを――!」


その瞬間、金猫の鈴が破裂するような音を立てて鳴り、

黄金の光が爆ぜた。


光の中で、金猫の瞳が金と紅の二色に染まる。

「……“私”を怒らせたわね」


観察者が驚愕する。

「まさか……封印の“両極”が、同時に目覚めるとは……!」


風が唸り、夜空が裂ける。

金猫と鋼牙、二人の修羅が並び立つ。


「修羅院の名において――」

「封印の力を、再びここに」


二人の声が重なった瞬間、

世界を切り裂くような閃光が闇を貫いた。


そして、観察者の姿はその光の中に呑まれていった。



光が収まると、そこには崩れた校舎の屋上と、

膝をついた金猫と鋼牙の姿があった。


「……また、誰かを……傷つけてしまうのね」

金猫の震える声に、鋼牙は微笑む。


「違うさ。

 守ったんだ……この世界も、君も」


金猫は首に残る鈴の破片を握りしめた。

夜風が二人の髪を撫で、月が再び白く光を取り戻していく。


だが――その月の裏側で、観察者の声が静かに響いた。


> 「修羅の封印は、まだ終わっていない……

真なる“観察者”は、まだ目覚めていないのだから」




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