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第5話 封印が外れる夜



その夜。

金猫は、月光の差し込む部屋の中で目を覚ました。


――チリン……。


鈴が、静寂の中で勝手に鳴っている。

寝返りを打とうとした瞬間、首元が熱を帯び、鈴が淡く輝き始めた。


「……どうして……勝手に鳴って……?」


金猫は首輪に触れようとした。

しかし、指先が触れた瞬間――

脳裏に“誰かの声”が響いた。


> 『外してはいけない。外せば、お前はお前でなくなる。』




お父様の声。

けれど、それに重なるように、もう一つの声が囁いた。


> 『外しなさい。思い出して。私は……“あなた”なのだから。』




鈴がひとりでに揺れる。

髪がふわりと浮かび上がり、金猫の瞳が金色に染まり始めた。


「……あなたは、誰……?」


鏡を見ると、そこにはもう一人の“自分”が映っていた。

同じ顔、同じ髪。

ただし、その瞳は鋭い猫のような光を放ち、首輪をつけていない。


> 『私は“金猫”のもう一つの側。封じられた“修羅の魂”。』




部屋の空気が凍りつく。

鈴が高く鳴り、窓ガラスがひび割れる。

外の夜空が歪み、黒い影のようなものが這い出してきた。


「っ……な、に……あれ……」


> 『封印が……解け始めたのよ。私たちの“過去”が戻る』




その瞬間、金猫の意識が真っ白に弾けた。



同じ頃、鋼牙は夢の中で異様な気配を感じ取り、飛び起きた。

首にかけた黒鉄のリングが灼けるように熱を帯びる。


「……金猫……封印が……!」


彼は夜の街を駆け抜けた。

月明かりの下、彼の瞳もまた琥珀から紅に変わり始めていた。


屋根の上、遠くに立つ金猫の姿が見える。

風に髪が舞い、鈴の音が闇を切り裂く。


――チリン。


その音に呼応するように、彼女の背後で異形の影が形を成した。

猫のような耳、黄金の尾、そして……涙のように光る瞳。


「……“もう一人の私”が、目を覚ます……」


風がうねり、世界が軋む音がした。

そして――封印の夜が、始まった。




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