表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

第3話 放課後、封じられた鈴の音



放課後の校舎は、ゆっくりと夕陽に包まれていた。

窓から差し込む橙の光が、廊下を金色に染める。

その中を、修羅院金猫の長い髪がふわりと揺れた。


ほのかは、こっそりとその後をつけていた。

理由は自分でも分からない。ただ──あの“鈴の音”が、心の奥に刺さって離れなかったのだ。


金猫は校舎裏へと向かい、誰もいない中庭に立つ。

首輪の鈴を両手で包み込み、静かに目を閉じた。


「……今日も、見守ってくださりありがとうございます。お父様、兄さん、姉さん……」


その声は祈りのように穏やかで、けれどどこか切なさを帯びていた。

次の瞬間――


――チリン……。


鈴がひとりでに鳴り、金猫の周囲に淡い金光が漂い始める。

風もないのに、髪がふわりと宙に浮かび上がった。


「……な、なに……これ……?」

思わず声を漏らすほのか。


金猫がゆっくりと振り向く。

その瞳は、昼間とは違う――猫のように縦に細く光る黄金の瞳。


「……見てしまいましたのね、春宮さん」

その声音は優しいのに、どこか張り詰めていた。


「わ、私……その……」

言葉を失うほのかに、金猫は小さく笑った。


「大丈夫。あなたには、何も悪いことは起きません。

 けれど……どうか、今日見たことは“夢”として忘れてくださいませ」


金色の光が強まり、ほのかの視界が真っ白に染まる。

気がつくと彼女は、教室の机に突っ伏していた。

窓の外はすでに夜。


「……夢、だったの?」


けれど――手首のあたりには、金色の細かな猫の毛が一本、残されていた。


――チリン。


遠く、夜風に乗って鈴の音が響く。

その音が“警告”なのか、“呼び声”なのか、まだ誰にも分からない。



--

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ