表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

第1章 金猫、山を降りる



山深い谷に建つ修羅院――。

その寺には、外界の誰も知らない秘密があった。

修行の内容は謎に包まれ、住職の「お父様」をはじめ、兄弟子たちの「兄さん達」「姉さん達」との日々は、外の世界では想像もつかない厳しさと温かさで満ちていた。


金の髪を編み込み、首に巻いた少女――金猫。

その首には、猫の首輪がしっかりと巻かれている。

「絶対に外すな!」

お父様の言い付けが、胸に小さく響く。

首輪は単なる装飾ではなく、彼女に課せられた“約束”と“秘密”の証だった。


年頃を迎え、金猫は決意していた。

「今日から、外の世界で普通の生活をしてみせる」


朝の霧が山肌を覆う中、門前で一礼する。

お父様は静かに頷き、兄さん達も姉さん達も微笑む。

「気をつけるのじゃぞ、金猫」

声には心配と信頼が混じっていた。


谷を抜ける山道を下ると、空は一気に広くなり、青く透き通っていた。

通学鞄を背負った少女は、山を降りて新しい世界へ踏み出す。

高校――初めての外の生活。


教室の窓から見える校庭に、制服姿の生徒たちが行き交う。

金猫はその中で自分がどう振る舞うべきか、少しだけ不安を覚えた。

だが、修羅院で鍛えた体と心、そして首輪を守るという約束が、彼女を支えている。


「普通に……普通に、過ごしたい」

小さな決意を胸に、金猫は校門をくぐった――。

金の髪は日光に輝き、編み込みがそっと揺れる。

首輪もまた、光を受けてかすかに鈍く光った。

その姿は、まるで猫のように柔らかく、しかし強く、美しかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ