第14話(最終章)『封印ノ果テ、光ノ中へ』
静寂の山に、夜明けの光が差し込んでいた。
長い戦いの跡、修羅院の境内には、ひと筋の金色の光が流れている。
金猫は崩れた石段の上に立ち、胸の奥に残る“鈴の破片”を見つめていた。
その輝きは、かすかに鼓動のように揺れている。
「……これが、私たちの修羅の証。」
彼女はそう呟き、掌を開いた。
そこには、鋼牙の血に染まった布と、焔牙の残した“印の札”が握られている。
> 『封印とは、終わりではなく、次の光を生むもの。
我らが命は巡り、願いは残る。』
焔牙の声が、風に溶けていく。
鋼牙は静かに倒れたまま、微笑んでいた。
「……金猫。俺たちが守りたかったものは、お前の“選ぶ自由”だ。」
涙が頬を伝う。
修羅としての宿命も、血も、憎しみも、すべて受け止めた今——
金猫はようやく“自分”という存在に向き合うことができた。
「私は……修羅ではなく、人として生きたい。
誰かの痛みを受け入れ、誰かの光になりたい……。
それが、お父様の願いであり、私の選ぶ道だから。」
封印の印が淡く輝き、金猫の髪が光を帯びて風に舞う。
首に巻いた金色の編み髪が、ゆっくりとほどけ、
空へと溶けるように光の粒となって消えていく。
> 「ありがとう……お父様。兄さんたち。私、もう迷わない。」
その瞬間、山全体を包むように光が溢れた。
封印は“滅び”ではなく、“循環”として姿を変えた。
修羅の血は浄化され、やがて朝日と共に新たな生命の息吹を運んでくる。
——修羅院の門前に、ひとつの籠が置かれていた。
中には、小さな赤ん坊。
そして、布の下に隠された一枚の札。
> 『修羅院 金猫
その魂、光となりて再びめぐる。』
住職の声が風に響く。
「……あの子は、また“選ぶ”ために生まれてきたのじゃな。」
光はやさしく揺れ、金猫の記憶の欠片が朝の空へと溶けていった——。
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完 ―Fin―




