第11話『修羅ノ血、覚醒ス』
第一章:燃える修羅院
夜の山に、炎が踊る。
修羅院は崩れ落ち、結界の破片が空を舞っていた。
金猫は、倒れた兄弟子たちを庇いながら立ち尽くす。
> 「……お父様、兄さん達……もう、誰も傷つけさせない。」
瓦礫の向こうから現れる仮面の少女。
その背後に、黒い霧が蠢いている。
“第三の存在”――それは修羅院が恐れていた“封印の破壊者”。
> 「ようやく完全に覚醒したのね、金猫。
あなたの中の“もう一人”が、鍵を開けた。」
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第二章:もう一人の声
金猫の胸の奥で、声が響く。
> 『……わたしは、おまえの中の猫。
修羅の血を継ぐもの。封印の先に生きる存在。』
金猫の身体から金色の光が溢れ、髪が宙を舞う。
その瞳は“金と紅”の二色に輝き、背後に光の尾が現れる。
> 「……これが、私の本当の姿?」
『いいえ、まだ半分。修羅の血が完全に流れ出す前に、選ばなくてはならない。』
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第三章:封印を狙う者
仮面の少女が一歩進む。
その声は、どこか懐かしい。
> 「あなたの封印は、私の自由を奪った。
だから取り戻す。“猫”の力を。」
空気が裂け、周囲に禍々しい印が刻まれていく。
それは修羅院に伝わる禁術「魂喰」の印。
鋼牙が叫ぶ。
> 「金猫、下がれ! 奴はお前の“影”だ!」
しかし金猫は前に出る。
> 「……逃げない。もう、自分を閉じ込めたままではいられない。」
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第四章:覚醒
鈴の破片が宙に舞い上がり、金猫の身体を包む。
光が弾け、制服が裂け、金糸の羽織が現れる。
その姿はまるで――修羅の化身。
> 『修羅の血よ、我が名に応えよ――金猫。』
金猫が両手を合わせると、炎が金色に変わり、仮面の少女の術式を飲み込んでいく。
周囲に“封印の紋”が浮かび、少女が苦悶の声を上げた。
> 「……これが、あなたの選んだ“修羅”なのね。」
金猫の声が響く。
> 「いいえ。これは“守るための修羅”です。」
金色の光が爆ぜ、少女の仮面が砕ける。
そこに現れた顔は――かつて金猫が夢で見た“自分と同じ顔”だった。
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エピローグ
炎が消え、静寂が戻る修羅院の跡地。
金猫は瓦礫の中に立ち尽くす。
その首には、壊れた鈴の代わりに金の糸が巻かれていた。
> 「お父様……これで良かったのかな。」
風が吹き、かすかな声が届く。
> 『修羅とは、戦うためにあるのではない。
愛するものを守るために、立ち上がる者の名だ。』
金猫は目を閉じ、微笑んだ。
> 「……はい、“お父様”。」
月明かりが照らす中、
金猫の金色の髪が風に揺れ――その背後で、鈴の音が再び小さく鳴った。




