第10話『修羅の寺に還る影』
第一章:呼び戻された者
金猫の首輪が壊れた翌日。
鋼牙のスマホに一通の古い暗号文が届く。
> 【修羅院へ戻れ 封印が綻びた】
金猫は迷いながらも、その言葉に導かれるように山へ向かった。
霧に包まれた山道。
幼い頃、何度も駆けた石段。
だが、懐かしいはずの景色はどこか歪んで見える。
> 「……お父様、本当にここに?」
「ああ。だが気をつけろ、もう“あの寺”は昔のままじゃない。」
境内に辿り着いた二人の前で、風鈴がひとつ鳴った。
それは封印の鈴と同じ音色だった。
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第二章:お父様との再会
本堂の奥にいたのは、白い僧衣をまとった住職。
かつて「お父様」と呼んで慕った人物。
しかしその瞳には、かすかな疲れと覚悟の色が宿っていた。
> 「金猫……その鈴を外してしまったのか。」
「外れたの……自分でもどうすればよいか……」
「そうか。ならば“もう一人”が目覚めたのだな。」
住職は静かに語り始める。
金猫がこの寺に預けられた夜――
籠の中にいたのは“赤子”ではなく、“二つの魂を宿した子”だった。
> 「お前の中には、“猫”と“人”の魂が共存している。」
「封印の鈴は、その二つを繋ぎ留めるための楔だったのだ。」
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第三章:兄弟子たちの真意
修羅院の奥から現れる、かつての兄弟子たち。
彼らはそれぞれ異なる修羅法を極めた者たちで、
金猫を“封印の継承者”として守ってきた。
> 「俺たちは、お前を守るために修羅となった。」
「けれど今、その封印を狙う“外の存在”が動き始めている。」
金猫の目が見開く。
> 「第三の存在……?」
「そう。“観察者”でも“封印者”でもない――“呼び覚ます者”。」
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第四章:崩れゆく寺
その瞬間、寺全体が震動し、結界が破れる音が響く。
外の空気が黒く濁り、修羅院の門が爆ぜ飛ぶ。
空に現れた黒い霧の中、仮面の少女が姿を見せた。
> 「やはり、ここが始まりの場所……。」
住職が立ち上がり、金猫に目を向ける。
> 「逃げなさい、金猫! “本当の修羅”を知る前に!」
だが、金猫の胸で――
砕けた鈴の破片が光を放ち、もう一つの声が囁く。
> 『……もう、逃げられないよ。だって私たちはひとつだから。』
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エピローグ
修羅院を包む炎の中で、金猫の瞳が再び金色に光る。
その瞳の奥には、
“猫”と“人”が共に映っていた。
> 「お父様……私、思い出した。
修羅院は、“封印するための寺”じゃない……“目覚めさせるための場所”なんだね。」
住職が微笑む。
> 「ようやく、その意味に気づいたか。……金猫。」
炎の中で、再び鈴の音が響く――。




