第9話『金色の目覚め』1章 2章 3章 エピローグ
第一章:夢の中の声
夜。
金猫は再び“あの音”を聞いていた。
――カラン……カラン……。
封印の鈴の音が、胸の奥から鳴り響く。
> 『くんみょう……なぜ、目覚めないの?』
『あなたが眠り続ける限り、この世界は“喰われる”』
目を開けると、そこは闇の中。
無数の“金の糸”が絡まり、誰かの“記憶”のような映像が流れていた。
炎に包まれる寺。
泣き叫ぶ声。
首輪をつけられる幼い自分。
> 『封印の鈴は、あなたを守るための“檻”――』
金猫の瞳が、ゆっくりと金色の輝きを取り戻していく。
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第二章:現実への侵食
翌朝。
学校の校舎裏に、異様な紋章が浮かび上がっていた。
それを見つけた鋼牙が、眉をひそめる。
「……まさか、“観察者”の残滓じゃないよな」
その瞬間、空気が歪み、教室の窓が一斉に軋み始める。
金猫の首輪が光り、鈴が鳴った。
封印が――反応している。
「金猫!下がれ!」
鋼牙の叫びも虚しく、金猫の身体が宙に浮かぶ。
鈴の鎖が解け、髪が金の光を放つ。
> 『私を……閉じ込めたのは、あなた達……?』
教室のガラスが爆ぜ、空間が裏返る。
その中から現れたのは、仮面をつけた少女の影。
彼女は金猫を見つめ、微笑んだ。
> 「やっと会えたね、“封印の半身”。」
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第三章:第三の存在
鋼牙が構え、金猫を庇う。
「お前は誰だ!」
仮面の少女は答えない。
ただ、金猫の胸に手を伸ばす。
> 「封印を戻してはならない。あの男が……動き出す。」
その“男”という言葉に、鋼牙の表情が凍る。
“修羅院”の禁忌に関わる何か――。
光が弾け、少女は霧のように消えた。
残された金猫の首輪は、完全に壊れていた。
> 『……目覚めたのね、金猫。』
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エピローグ
月明かりの下、金猫は鏡を見る。
瞳が、淡く金に光っている。
髪の奥から聞こえる、鈴の音。
「……もう一人の、私。」
封印の鈴が完全に砕けた時、金猫の中に眠る“もう一つの魂”が完全に覚醒する――。




