第8話『鈴の残響(ざんきょう)』
封印の夜から数日。
朝の教室には、眩しい日差しと、いつものざわめきが戻っていた。
転校生──修羅院金猫は、
いつも通り金色の髪を編み下げ、首には小さな鈴のついた首輪を巻いていた。
「おはよう、金猫くん」
「おはようございます」
笑顔で返す金猫。
だが、彼の鈴は――もう“音”を立ててはいなかった。
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放課後。窓際の席でひとり本を読む金猫の耳に、かすかな音が響く。
カラン……。
どこか懐かしく、胸の奥を締めつける音。
それは、封印の夜に聞こえた鈴の音だった。
> 『――まだ、終わっていないよ。くんみょう。』
金猫の目が、ふと金色に揺らめく。
その瞬間、彼の周囲の空気が一瞬だけ“静止”した。
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「金猫、大丈夫か?」
鋼牙の声に我に返る。
「え? ああ……大丈夫。少し、鈴の音が聞こえただけ」
そう言って微笑む金猫の頬には、わずかに冷たい汗が伝っていた。
彼の手の中――
砕けたはずの鈴の破片が、まるで“呼吸”をするかのように脈動していた。
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静かな日常の裏で、金猫の中の“もう一つの存在”が目覚め始める。
その夜、教室の外壁に小さく刻まれた紋章が淡く光り、
闇の中で誰かが呟く。
> 「……封印の鍵は、まだ開いていない。」




