(34) 優しい朝
「……うぅ」
重たい瞼を持ち上げる。
宿の飾り気のない木の天井が目に入る。
私は寝ていたようだ。
昨日の夜は、桜子に母親と会ったことを相談して……あれ?
その後の記憶が全くない……。
「起きたかい?」
隣から桜子の声が聞こえる。
そちらに目線を向けると、桜子が優しく頭を撫でてくれた。
「良く寝れたかい?」
「うん!」
「それはよかった!」
桜子は元気にそう微笑んでくれた。
でも、桜子の目元にはクマができている。
もしかして―
「桜子、寝てない?」
「やっぱりバレたか……」
「もしかして……昨日、私を寝かしつけてくれたの?」
「まあ……そうだね!」
私のせいで桜子が寝不足に……。
迷惑をかけちゃったな……。
でも、だからこそ―
「ありがとう!おかげで元気が出たよ!」
私は桜子に謝罪じゃなくてお礼を伝えた。
私だって、逆の立場になればお礼を言ってもらえた方が嬉しいはずだ。
「それはよかった!」
桜子がそう言ってガバッと私に抱きついてくる。
桜子が大型犬の様に私にじゃれついてきた。
「私は雫成分を摂取すれば元気になるから、寝不足なことは気にしないでくれ!」
本当にこの人は……。
「それで私が元気取られちゃったらどうするのよ!」
「私といちゃついたら雫も元気が出るだろう?」
「うっ……それは……」
「雫は私が嫌いかい?」
わざわざ言わせるなんて意地悪……。
でも、そんなところも―
「嫌いなわけないじゃん……。大好きだよ!」
「じゃあいいね!」
そうして、だらだらと朝の時間をベッドの上で過ごし。
私たちの新しい一日が幕を開けた。
◇◇◇
桜子と一緒に遅めの朝食を食べながら、私は今日の予定について話した。
「今日は夜に星を見に行くから楽しみにしててね!」
「そうだったね!私たちの住んでいる街じゃ、街の明かりが邪魔してなかなか見えないから楽しみだ!」
「だから、それまでの時間は、近くの喫茶店とかお部屋とかでだらだらしよ!」
私がそう言うと、桜子は少し気難しい顔をした。
「私が寝不足なことに気を遣っていないかい?」
そう思われても仕方ない。
でも、それは私のためでもある。
桜子と一緒にいると元気が出るのだ。
「私が桜子の傍にいたいの!」
「そういうことなら大歓迎だよ!」
暗い気持ちで夜を迎えたくない。
だって、今夜はこの旅行のメインイベントなのだから。
絶対に失敗したくないし、させるつもりもない。
「楽しみに待っててね!」
と、元気に言ったはいいものの、今日の夜のサプライズが上手く行くか緊張してしまっている私だった。




