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あなたの人生を私に下さい  作者: タモリン
(第四章) 私たちの文化祭

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(26) 幸せの一枚絵

「桜子!お疲れさま!」


 私はそう言って、控え室に戻ってきた桜子に抱きついた。

 桜子も笑顔で受け入れてくれる。


「ありがとう!」


 周りにいる生徒は、私たちがそういう関係だということを知ってるので、もう気にする必要はないだろう。

 桜子は私を抱き締めて言った。


「今日は雫に無理をさせてしまってすまな……いや、来てくれてありがとう。本当に助かったよ!」


 私の頭が桜子の優しい手によって撫でられる。

 それだけで頑張った甲斐があったと思えた。


「すごく綺麗だったよ!」


「誰に褒めてもらうよりも、雫にそう言ってもらえるのが一番嬉しいよ!」


 そんな風に私たちがいちゃいちゃしていると、後ろから桐谷さんの声が聞こえた。


「ほらそこ!いちゃいちゃは家でしなさい!あと二十分くらいでここは別の企画の控え室になるんだからね!」


「はーい」


「分かりました!」


 私たちは片付けを素早く済ませ、外に出た。

 外はまだ雨が降り続いており、私たちは校舎内の文化祭展示を見てまわることにした。

 文化祭はまだ始まったばかりだ。

 楽しもう!



  ◇◇◇



 私たちが手を繋いで校舎内をまわっていると、周りの生徒たちは例外なく二度見していた。

 そりゃあ、学校のアイドルである桜子の隣に知らない女がいたら、アイツは誰だ?となるだろう。


「桜子、周りの人に見られちゃうから手を離さない?」


 私がそう言うと、桜子にやっと笑いながら逆に私に言った。


「雫は何を言っているんだい?見られるんじゃなくて、見せつけてるんだよ!」


「え?」


「だって、こんな時じゃないとかわいい彼女をみんなに見せつける機会なんて無いじゃないか!」


 かわいい彼女……。

 その言葉に思わず顔が熱くなる。

 これまでも何度も言われているのに、さっきの舞台上のかっこいい桜子を見た後だと、いつもよりもドキドキしてしまった。


「わかった……じゃあいいや……」


「おや、顔が赤くなっているようだね」


 こいつ……。


「うるさい!それ以上なんか言ったら手を離すからね!」


 私はそう言って、桜子を睨み付けた。

 すると、桜子は降参というように目を閉じて首を横に振った。

 桜子は続けて言う。


「ごめんごめん。でも、雫と付き合っていることをみんなにアピールしたいのは事実なんだ」


「どうしてそこまでアピールしたいのよ?」


「私のことを好いてくれている子たちを必要以上に傷付けないためだよ」


「傷付けないため?」


「自分で言うのもなんだが、私はこれから先も多くの子たちに告白されるはずだ」


「うん」


「私が雫と付き合っていると知らずに私に告白してきた人は、事実を知ったらきっと傷付くだろう」


 なるほど。

 だから桜子は……。


「それだったら、初めから私には彼女がいるという事実を伝えておいた方が、必要以上に傷付けないであげられるのではないかと、勝手に思っている」


 桜子も前の一件で学んでいるのだ。

 私の言った言葉をちゃんと覚えていてくれて嬉しかった。


「そういうことなら、私も協力するよ!」


 私がそう言うと、桜子は私の唇に人差し指を当てて―


「でーも、私の本心は初めに言った通りだよ。かわいい彼女と文化祭を楽しみたい、ただそれだけだ」


 そんなことを言われたら……嬉しいに決まってる。


「わかった……」


 私が再び顔を赤くすると、桜子は私の頭を撫でたあと、私の手を引いて走りだした。


「だから一緒に楽しもう!」


「うん!」



  ◇◇◇



「ここはコスプレして写真が撮れる場所みたいだね!」


「本当だ!いろんなお洋服がある!」


 私たちは一年生の出し物のコスプレ屋さんに来ていた。

 コスプレ屋さんには沢山の種類の洋服が並んでおり、来場者は楽しそうにコスプレをして写真を撮っていた。


「桜子先輩!お疲れ様です!」


 係の生徒がそう言って桜子に話しかける。


「お疲れ様、大盛況みたいだね!」


「そうなんです!桜子先輩もどうですか?」


「そうだね……どうする?」


 桜子が私に判断を委ねる。

 人前でコスプレするのは恥ずかしいが、せっかく文化祭に来たのだから思い出を残したい。


「いいですね!やりましょう!」


 私がそう答えると、私たちは別々の部屋へと案内された。

 担当の生徒が私に話しかける。


「お名前を聞いてもいいですか?」


「前田 雫です!」


「前田さんは桜子先輩のその……恋人さんなんですか?」


 やっぱり気になるよねー。

 たぶん、私でも聞くもん。


「は、はい!そうです!」


 私がそう答えると、どこに隠れていたのか分からないが、周りから数人の生徒が出てきて―


「すごーい!」


「どうやってあの人を落としたんですか!?」


「この学校の人じゃないですよね?どうやって出会ったんですか?」


 私は質問攻めにされた。

 人付き合いが苦手な私がその状況に目を回していると、ひとりの生徒が他の生徒に提案した。


「みんな!せっかく恋人のふたりが来てくれてるんだから―」


 その先はこしょこしょ話で聞こえなかったが、それを聞いた全員の目が輝いていた。

 私は一体何を着せられるのだろう?

 私が警戒していると、私の担当の生徒が()()()()を持ってきた。

 マジですか……。

 そうは思ったものの、年下の女の子たちがこんなに楽しそうにしているのだから、断るのも野暮だろうと思い、私は承諾した。


「お願いします!」


 私は覚悟を決めた。


「それでは始めますね!」



  ◇◇◇



 私は衣装を着せられ、撮影ルームで桜子を待っている。

 周りの生徒たちは、私と桜子が揃うのを今か今かと待っている。

 それもそのはずだ。

 だって―


「ウエディングドレスなんて初めて着たよ……」


 私はウエディングドレスを着せられていた。

 私の服装から考えると、桜子の服装もなんとなく想像がつく。

 きっとそういう衣装だろう。

 私がそんなことを考えていると、更衣室から桜子が出てきた。


「雫、お待た……せ……」


「……!」


 お互いの姿を見た瞬間、私たちは息を飲んだ。

 お互いに相手がどんな服装なのかは想像できたはずだ。

 でも、実際に目にするとやはり動揺してしまう。

 桜子はピチッとしたタキシードを着ていて、とてもかっこよかった。


「かっこいい!」


 私が桜子を称賛すると、桜子は照れ笑いを浮かべながら、私を称賛した。


「雫もよく似合っているよ!まさかこんなに早くその姿を見ることになるとは思っていなかったけどね!」


 桜子のその発言を聞いて、周りの生徒が歓声をあげる。

 それを言うなら私もだ。

 桜子のタキシード姿はあまりにかっこよくて、いつまででも見ていられるような、そんな魅力があった。


「ふたりとももっと近づいて下さい!」


 私が桜子のタキシード姿に見惚れていると、写真担当の生徒がそう指示を出した。

 私と桜子の距離が近づく。

 私は周りの生徒の視線が恥ずかしく、少し距離をおいて桜子と並んだ。

 写真担当の生徒がカウントダウンを始める。


「さん……にい……いち!」


 カメラのフラッシュが瞬いた瞬間、私の身体が桜子の方へと引っ張られた。

 桜子が私を抱き寄せたのだ。


「なんて素敵な写真なの!」


 撮れた写真を見た生徒たちが歓声をあげる。


「もう一枚いいですか!?」


 私たちは恥ずかしいながらもそれを了承した。

 今度は私の方から桜子に引っ付く。

 すると、桜子は満足そうに微笑み、喜んでくれた。


「それでは撮ります!さん……にい……いち!」


 その写真には私たちの幸せが詰まっていた。

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