表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/23

生贄

 理不尽・・・。


木の柱に縄でくくられた、妙はぐったりと俯き、すべてを諦めた。

「チッ、てこずらせやがって」

村の若い衆が捨て台詞を吐くと、村長が彼女を諭すように言った。

「妙よ。お主はこれから村を救う英霊となるのじゃ」

妙はゆっくりと顔をあげると、キッと村長を睨んだ。

「おおこわ・・・妙、どうか安らかな心で村の安寧を祈っておくれ」

村長はそう言うと、周りをみて頷き一同はその場から去った。

「糞っ!」

妙は村人の後姿に叫んだ。


今年は水害の多い年だった。

だからといって、昨日、いきなり私を水神様の生贄にすると決めて・・・。

逃げようとしたら、ボコボコに殴られ連れ戻された。

気を失っている内に、この有様・・・。

海の満潮が近づき、河口近くこの川の水位はいずれあがり・・・。

私は死ぬ。

・・・そんなのは嫌だっ!

なんで、なんで理不尽なっ。

こんなことしたって、絶対に水害はおさまらない。

だって・・・姉さんも生贄にされて・・・水害は収まらなかったじゃない・・・。

・・・足りないって・・・そんな馬鹿なことがあるかよ。

馬鹿だ、本当に阿保だ。

人って。

なんだ?なんなんだ!


徐々に水位があがり、妙の顎まで水が迫って来た。

殴られて口の中が傷だらけ、鉄の味をかみしめ彼女は恨む。

(ちきしょう)

やがて、水は妙を飲み込んだ。

・・・・・・。

水の中で妙は気配を感じた。

目を開くと、眼前に水龍がじっと彼女を見つめている。

「娘よ」

「・・・・・・」

「人が憎いか」

「憎い」

「そうか・・・村の安寧は望まぬか」

「誰が・・・私の命と引き換えにするロクでもない奴らに」

「・・・ならば」

「私は復讐したい」

「そうか」

水龍は妙の願いを聞き届けた。

妙は水龍に飲み込まれ一体となった。


水柱が次々と勢いよくあがり、村を襲った。

未曽有の水により、一瞬で村は流され壊滅した。

 


 そう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
宗教的な教育などで事前に納得して貰っているならともかく、無理矢理に人身御供にしてきた相手の思い通りになるわけもありませんよね。 治水工事のような合理的な対策をするのではなくて生贄や人身御供といった迷信…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ