水掛け論
これを磨いて肉付けして・・・華麗なる・・・。
俺は当然の正論を彼女に言った。
「たまねぎは細かくみじん切りにして、飴色がつくまでしっかりと油で炒めるんだ。そうしたら美味しいカレーが出来る」
彼女は言い返す。
「お言葉ですけど、家庭のカレーってたまねぎやじゃがいもにんじんがゴロっと入っているのが美味しいじゃん」
「俺は玉ねぎが嫌いなの。だから溶かして欲しいの」
「私は玉ねぎが好きなの。だから固形が美味しいの」
「俺の為に美味しいカレーを作ってよ」
「あら、作らざる者、文句は言わざるだわ」
「俺は本格派カレーが好きなの」
「私は家庭のカレーが好きなの」
「なんでっ!」
「なんでって・・・家のカレーが一番だからよっ!」
「玉ねぎが嫌いなんだっ!」
「私のことが嫌いなの?」
「そんなこと言ってない」
「言った」
「言ってないって」
「・・・信じられない」
「俺だって信じられないよ」
「・・・・・・」
ばしゃっ!
冷たいコップの水が、俺に浴びせられる。
彼女を見たら、涙を流していた。
(こんなことで・・・)
俺はそう思いつつ、
「大丈夫?」
と尋ねた。
「・・・もういいわ」
さっきまでさめざめと泣いていた彼女は、吹っ切れたかのように鬼の形相で、玉ねぎを切っていた包丁を手にした。
「・・・なんだよ」
俺はたじろぐ。
「もう愛はないんでしょ!いいわ、お望み通り、みじん切りにしてあげるわっ!」
「・・・はじめっから・・・そうしとけば・・・って!・・・」
ずぶり。
俺の腹に傷みが走る。
ずぶり、ずぶり・・・二撃、三撃と・・・。
「な・・・に・・・を・・・?」
「だから、あなたをみじん切りにして、飴色になるまで炒めてあげるわよ」
ひきつる俺は、彼女の薄ら笑う顔をまじまじと見た。
包丁が俺の頭上へと振り下ろされ、視界が真赤になって消えた。
ん~自重しました(笑)。




