浪漫の代償
慢心それとも・・・。
ある海域で海賊の沈没船が発見された。
深海に眠る沈没船の捜索、そして金銀財宝を手に入れる。
実に夢に満ちた浪漫のある話だろうか・・・。
私は60を過ぎた。
揺るぎない地位と巨万の富を築き上げた。
そんな私が欲しいものは若い頃やってみたかった冒険と名声の獲得だ。
大枚をはたいてトレジャーハンターのジョニーと沈没船サルベージ計画を立ち上げる。
人生の集大成にこれほどふさわしいイベントはないだろう。
そして記念すべき初探査の日、私は孫とジョニー、そして専門家と共に海底探査船へと乗り込んだ。
深海に潜る探査船を、孫は目を輝かせて、海へと潜っていくモニターを見ている。
深く底へと向かう船だったが、大きな破損音とともに船が大きく揺れた。
「機械がやられた!」
ジョニーは計器類を見つめ叫んだ。
「チッ!浮上しろ」
私は叫ぶ。
「・・・無理です」
専門家は震える声で言った。
「なんだと!」
私は専門家の首を絞めてあげて怒号をあげる。
「水深3000m程度でこの異音・・・船が水圧に耐えられなくなって悲鳴をあげている・・・すべての電気系は使い物にならない・・・船の安全設備を怠ったな、こんな大きなプロジェクトを個人の力だけでやろうとするからだっ!」
専門家は絶句する。
「・・・じゃあ・・・どうなる」
私は締め上げた両手を緩める。
「海の藻屑だよ」
ジョニーは言い捨てた。
「貴様っ!十分安全だと言ったはず」
「そう思っていたよ。だが、トレジャーハンターは常に危険と隣り合わせなんだ」
ジョニーは達観した口調で言った。
「お前のことなど知るか」
「どうも」
ギギギギギ・・・。
恐ろしい音が聴こえる。
「いつまでもつか」
専門家が言った。
私は思わず、孫を抱きしめた。
(どうか、この子だけは)
私は祈りを捧げ続ける。
ギギギギギ・・・。
ギギギギギ・・・ギギギギギ・・・ギギ。
(お願いだ)
運命?