水
毎年ね。
それまで町だった。
人の営みがあった場所・・・。
それが一瞬の爆撃で一面が火の海と化した。
燃え盛る中、すべてを灰燼とする炎の中、ボクは歩く。
喉が渇き。
炎を吸い込み。
喉が疼く。
灼熱の業火を避け、みんなの後を追って歩く。
この先には、大きな川がある。
水だ。
そこには水がある。
だけど、そこで力尽きた人々の屍が累々と川一面に漂っている。
血と油まみれ水。
ボクは恐怖で足が震えた。
だけど、その川の水を飲む。
命の水を。
目を閉じ無心で・・・。
飲まなきゃ炎に飲まれてきっと死んでしまう。
一息ついて溢れる涙を拭った。
家族やみんなは大丈夫だろうか。
ここは地獄。
どうかどうか安らかに。
どうかどうか助けてください。
ボクはすべてに祈りを捧げる。
ゆっくりと立ち上がり、その光景を目に焼きつける。
ボクたちが何をした?
やり場のない怒りがこみあげる。
叫びたいが焼かれた喉が痛んで悔しすぎる。
足を一歩一歩進める。
ざぶりざぶり。
水を払う音がうめき声に混じり耳に響く。
何度も何度も首を振る。
前だけを見た。
ボクは町を離れようとするみんなを追った。
書かなきゃいけないと。