プール開き
しっかり体操をしましょう。
待ちに待ったプール開き。
今年こそは25mを泳ぐぞと意気込む、小四のたけしは、いの一番にプールに飛び込んだ。
「こらっ!たけしっ!足からゆっくりと浸かれ」
先生の大声に、
「だいじょうぶだよ。先生」
と、どこ吹く風のたけしだった。
今日はプール初日、水に慣れようということで、プールの中を歩いたり、10秒数えて潜ったり、ビート版を使ってバタ足、最後はみんなでボール遊びとなった。
たけしは、ボール遊びはせず、目標で念願である25m泳ぐのをはじめた。
プールの中は混雑している。
だが、たけしはみんなの間をすり抜け、クロールで懸命に泳いだ。
「痛ッ!」
ふいに右足に傷みが走り、こむら返りを起す。
(しまった。体操しておけばよかった)
たけしはすぐ思いつつ、一旦沈みかかるが、左足で底を蹴り浮上する。
しかし、混雑する中、クラスメイトの足が、彼の顔面に直撃し、大量の水を飲んでしまった。
(くそっ!)
たけしはパニックに陥るが、なんとか水面に顔をあげ、がむしゃらに身体をバタつかせて、助けを求めるが、みんなはボール遊びに夢中で気づかない。
(おいっ!おいっ・・・)
ぶくぶくと水底へと沈むたけし。
(・・・ああ)
意識が消えかかる瞬間、先生が光の溢れる水面からやって来た。
(よかった・・・助かった・・・?)
だがしかし、ぼやけて映るたけしの目には不気味に笑う先生が見えた。
はりきりすぎないで。