第一話 楪さんは、とても美少女
ラブコメを目指していますがコメディになるかは自信がない!
「りべー。はよー。」
渡部澄人。通称は「りべ」。変なあだ名だが、全員が幼なじみのようなこの田舎町では、もうほとんどの友人が俺をこう呼んでいる。
「はよー。よう起きれたな。マサは来んかと思ったわ。」
「ひっでぇ。入学式くらいちゃんと起きるわ。」
この山村雅哉も例外ではなく、保育所からずっと同じ場所で育ったご近所さんだ。
この町には二つの小中学校がある。どちらもひとクラスのみ。行事ごとは一緒に行うこともあり、町中みんな顔見知りだ。スポーツ推薦とかで街を出ていくか、よっぽど頭のいいやつ以外は、大抵同じ高校に進学する。
県立油良高校。この田舎町唯一の高校。偏差値40くらい。
まあ、多少頭がいい奴も悪いやつも全員進学するからあんま参考にはならない。
他の高校は1番近くてもバスと電車を乗り継いで片道2時間かかる。
そんなもの毎日やってられるか。
ひと学年2クラス約50人。そう、つまり
「うわ、てかあれあるじゃん!クラス分け!!俺めっちゃ楽しみだったんよな。」
「そうか。じゃあマサの椅子もう蹴れんくなるな。」
「どっちにしろ蹴るな。」
マサが”や”で、俺が”わ”だから、席順はずっと前後だった。それもあって俺たちは親友になったのだが。
そんな長年の付き合いも、今日で最後になるかもしれない。
高校についた俺たちは、下駄箱前の看板で初めてのクラス分けを確認した。
「やー、やー、やー...あった2組!お!!!りべも2組じゃん!」
「お、まじかー。...あれ、これ誰?」
初めて俺たちの間に、知らない人の名前があった。
「...なんだっけこれ漢字よめねえや。」
「マサ漢字ダメだもんな。ユズリハじゃなかったっけな。...南中にそんなやついたか?」
「しらん。これ下は”るか”だよな。...さすがに女子か?いや最近なら男子でもありえる...」
その時、俺の隣にスッと見たことのない美少女が現れた。
綺麗な黒髪ポニーテールが春風に揺れて俺の肩をかすめる。
銀縁のメガネ越しでも、切れ長の綺麗な目に被さる長い睫毛がはっきり見える。
少し時間が止まった気さえした。
彼女の白くしなやかな指が掲示板を縦につたい、すーっと名前をなぞる。
”楪 瑠花”
そこでピタッと指が止まった。
彼女は少し微笑んで、ハッとしたようになぜか俺の方を見た。
すると何故だか少し照れたように会釈をして、小走りで下駄箱へと去っていったのだ。
「やっべえ美女だったな...まじか...。」
「おう...。」
俺たちはこれ以上何も言えなくなってしまった。
田舎の思春期DTDKには刺激が強すぎた。会釈しただけなのにな。
俺と楪さんとの出会いは実にありがちで、一目惚れってこういうものなのかと、俺は思ったのだ。
まあ、それはのちに錯覚だったとわかるのだが。
楪さんはガチで可愛い。本当に可愛い。いつか必ずイラストをつけます。