表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

噂の神社と私の秘密

作者: 下菊みこと
掲載日:2024/07/05

「ねえ、知ってる?『見えない神社』の話」


「見えない神社?」


「あ、やっぱり知らないかぁ。りっちゃんは外で育ったもんね」


「お母さんはこっちの育ちだし、前から村に来たりはしてたけどね」


「もうみんなとお友達だもんねー」


お父さんが転勤することになって、ちょうどよくお母さんの地元に行くことになった。


お母さんの地元には元からたまに遊びには来ていたから、知り合いばかりで疎外感もない。


けれど、まだまだ知らないことはあるらしかった。


初めて聞く噂にとてもワクワクする。


「それで見えない神社って?」


「選ばれた人にしか参道も神社も見えないの!でもすごく景色が綺麗なところらしいよ」


「へー」


「行ってみたいよねー」


「でもちょっと怖いかもね!」


そんなことをダラダラ喋って帰宅。


帰宅した後は宿題をちゃちゃっと済ませて、自宅付近を散歩することにした。


今住んでいる家は、亡き祖母の遺したもの。


色々あったのだ、最近は。


私が謎の奇病にかかって、それが治療方法のわかっていない難病だと発覚して。


かと思えばなんの前触れもなく治って、けれどそれと引き換えのように祖母が亡くなって。


その後急に父の転勤が決まって、こっちに来て。


悲しくなったり、喜んだり、また悲しんだり。


本当に、色々あった。


「…あれ?」


色々考えながら歩いていたら、知らない道を見つけた。


この辺りの地理は把握してあったはずなんだけど。


「…行ってみようかな」


そっと知らない道を進んでみる。


しばらくすると大きな鳥居があった。


「…もしかして」


見えない神社?


「…失礼します」


そのまま、好奇心の赴くままに進んでみる。


ドキドキと心臓がなる。


そしてしばらくすると、白い曼珠沙華の花畑に出た。


「わぁ…!」


白い曼珠沙華自体、本物は初めてみる。


ましてやこんなに群生してるのはテレビでもみたことがない。


奥には立派なお社が見えた。


「綺麗…!」


「あれ?りっちゃん?」


ふと懐かしい声が聞こえた気がした。


振り向くと、神主さんみたいな格好の人。


「えっと、神主さんですか?」


「ん?ああ、そう見えるのか…そうだね、そういうことにしておこう」


「…?」


不思議な言い回しに首をかしげる。


「それで、この神社に参拝にきてくれたのかな?」


「えっと、知らない道が見えたから…」


「知らない道?そっか、ふーちゃんが君を連れて参拝にきたのはもっと小さな頃だったからね」


「ふーちゃん…おばあちゃんのこと?」


「そうだよ、りっちゃん」


神主さんは優しく笑う。


「ねえ、りっちゃん。少しふーちゃんの話を聞いていくかい?」


「え、いいの?」


「もちろん」


神主さんは話し出す。


「この神社は参拝客が少なくてね。けれどふーちゃんは昔からお小遣いを握りしめて遊びに来て、参拝してはその曼珠沙華を愛でていたよ」


「へえ」


「思春期って言うんだっけ?そういう時期になると恋の相談を私に持ちかけてね」


「…?」


ちょっと待った。


神主さんは何歳?


「ん。もう何千年と生きてるからなぁ」


「わあ、思考を読まれた」


「ふふ、ごめんごめん。でも、ふーちゃんと同じような反応だね」


「そうなんだ」


「怖がらないでくれるところ、好きだよ」


懐かしそうな神主さん。


いや、神様。


「神様はここでずっと一人なの?」


「ふーちゃんやりっちゃんみたいな子がいるから、一人でずっといるわけではないけど…まあ、一人でいる方が多いかな」


「そっかぁ…あ、おばあちゃんの恋愛相談って?」


「あ、話を戻すんだね。えっと、そう。ふーちゃんってば君のおじいさんと両片思いしてて、なんかこう…応援したくなっちゃう空気でさ」


「へー」


おじいちゃんと両片思いだったんだ。


「だから当たって砕けろってアドバイスしたら、ふーちゃんったらその日のうちにりっくんに告白してさ」


「あらぁ〜!!!」


「可愛いよね二人とも!で、りっくんも素直になって晴れて二人はくっついてさ」


「うんうん」


「そして二人は結婚して、君のお母さんが生まれた。君のお母さんは残念ながら参拝客にはなってくれなかったけど、すくすく育ってね。君のおじさんとおばさんもそうだった」


そうなんだなぁ。


なんかいい話が聞けたな。


「でね、君が生まれた。君は新たな参拝客に選ばれた」


「へー」


「ふーちゃんが君を連れて来た時、私はりっちゃんと呼ばれた可愛い君を絶対守ろうと決めた」


「…」


「けれど君は村の外の子だった。私の加護は上手く働かなかった」


…続きを聞きたくないと、私の中の私が言った。


続きを聞くべきだと、私の中の私が言った。


どちらに従うべきか、私にはわからなかった。


「君は病を患った。私の加護が及ばなかったから。ごめんね」


「えっと」


「そしてふーちゃんは私に祈った。りっちゃんを助けて欲しいと」


「…」


「ふーちゃんは、その選択を後悔することは最期までなかったけど…こんな形でしか力を発揮できなかった自分が情け無い」


…つまり、おばあちゃんは。


私のために。


「だから、これからは私が守り続ける。そのためにりっちゃんをここに呼んだんだ…私が嫌いになったかな」


「ううん、嫌いにならないよ。助けてくれてありがとう」


「…」


「ただ、悲しいね」


「人も神も、ままならないものだよね」


「ね」


白い曼珠沙華が風に揺れた。


「この曼珠沙華はね、何代か前の参拝客が用意してくれたんだ」


「…」


「また会う日を楽しみに、だって。花言葉。私はそれに縋って今日も明日もここにいる」


「…」


「りっちゃん。どうか『健やかに』」


その言葉を受けて、身体が妙に温かくなった。


嫌な感じはない。


「加護?」


「そうだね」


「ありがとう」


「うん。りっちゃん、また会えるかな」


「今度はおいなりさんでも持ってこようか?」


「私はふーちゃんの作ってくれた卵焼きが好きだった」


「練習してみるね」


こうして、一日にして私にはたくさんの秘密ができた。


とりあえず毎日参拝には行く予定。

ここまでお付き合い頂きありがとうございました!


楽しんでいただけていれば幸いです!


下のランキングタグに連載作品いくつかのリンク貼ってます!


よろしければご覧ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ