はじめてのお友達
先週は急な体調不良で更新を休んでしまって申し訳ありません。
胃腸炎が流行っているようなので、みなさんもお気を付けください。
どれも聞いてみればなるほど、となることばかりでわたしは感心したけれど、逆にわたしが何も知らなさすぎると驚かれた。普通は年の近い親戚など既にデビュタントを済ませた方から、それとなく聞いておくものらしい。
我が家はそこそこ裕福な伯爵家で、王城の庭園の管理を任されているという割には親戚付き合いは少ない家だ。原因はわたしが早産で生まれたせいで次の子を作るのを諦め、養子を取るという選択をした両親が当時の親戚とかなり揉めたせいらしいというのは、聞くともなしに知っていたのでこれについては両親には何も言えない。
わたしだってガブリエルを跡取りだと認められないと未だに言ってるようなおじい様たちと特にお話することはないので、特に気にしていなかったのだけれどこんなところに弊害があるとは思わなかった。
「みなさま、話題が豊富でいらっしゃるのですね。わたし、流行の話などはほとんど侍女やメイドに教えてもらうばかりで……」
「あら、でも今日のミシェルさまのお召し物とっても素敵ですわ。どちらのデザイナーのものですの?」
「これはマリア・フランのものですわ。子どもの頃から使っているので、わたしの好みや似合うものをよく提案してくれますの」
「まぁ、マダム・フランはこんなに可愛らしいデザインもお得意でいらしたのね。ご夫人向けのエレガントなデザインしか存じ上げなかったわ」
わたしは子ども服のときから仕立ててもらっていたので、特に違和感もなかったのだがわたしの行きつけのサロンはどうやらご令嬢にはあまり人気がないお店らしい。これは家に出入りする業者が増えるとわたしが体調を崩しやすくなるという理由で、お母さまのお洋服を作っていたデザイナーにそのままわたしやガブリエルの服も頼んでいたせいだ。
本来は貴族夫人の中でも当主夫人の着るようなエレガントで貫録のあるデザインが得意で、令嬢向けのドレスのようにコルセットやファージンゲールで体型を良く見せることよりも、ある程度の仕事にも耐える長時間着心地の良い服をモットーとしているらしい。
お陰でわたしはきつくて重い補正下着にぎちぎちと体を締め付けられなくとも、そこそこ見栄えのするドレスを身に着けることが出来ているのである。
でも、令嬢にとってコルセットやファージンゲールを外すというのは室内着と同義だ。なんなら寝るとき以外はずっとつけている人もいると聞く。なのでわたしが楽なドレスを好んでいるとは言えなくて、わたしはあいまいに笑って返した。
「もしよろしければ、わたしにお洋服やお菓子の流行を教えてくださいますか?」
「……わたくしで良ければお教えしましょうか?」
「私も、おいしいお店なら案内出来ます。服飾の話はシャーロットに任せた方がいいでしょう」
おそるおそる訊ねると、シャーロットさまが手を挙げてくださった。続いてロザンナさまも食べ物ならと提案してくれる。
シャーロットさまは見るからに令嬢風で、ロザンナさまはドレスとは言え乗馬用ドレスのような動きやすそうなものを身に着けている。多分、ロザンナさまの言うように、所謂流行のものを学ぶならシャーロットさまにお願いするのが良さそうだ。
「ロザンナさまはご自分のスタイルを確立されているのですわね。素敵だわ」
「ふふっ、お褒めに預かり光栄です」
優雅で華やかなドレスではないけれど、それがロザンナさまのスマートな雰囲気には似合っている。流行を学ぶのも大切だけど、自分に似合うものがわかっているのは強い。そういう気持ちを込めて褒めれば、ロザンナさまはまるで王子さまのように右手を胸に当てて微笑んでくれた。
「ミシェルさまはあまりうろうろされるのは得意ではありませんわよね。
我が家にお招きしてもよろしくて?
うちは姉もおりますから、いろいろなブティックのカタログが結構揃ってますわ。まずは絵図で流行の雰囲気を掴むのもよろしいかと思うのですけれど」
「まぁ、ご配慮いただきとても有難いですわ。お邪魔してもよろしいのですか?」
「ええ、一応両親にも確認しないといけませんけれど、多分大丈夫だと思います。
帰宅しましたら確認して、改めてお誘いいたしますわね」
「じゃあ、私はおすすめのケーキでも持ち寄ろうかな?」
「ロザンナさまもご一緒いただけるのですか? 嬉しいですわ!」
次はシャーロットさまとふたりで会うことになるのかと思っていたら、ロザンナさまも来てくれるつもりらしい。嬉しくておおきな声を出してしまったら、ふたりに声を合わせて笑われてしまった。
でも、それは馬鹿にするような雰囲気ではなくて、とても気やすいものだったから、わたしはどうやら初めてのお茶会で無事にお友達を作ることに成功したみたいだった。
今週から更新を再開しますが、体調不良でいろいろと予定が狂ってしまったので、もしかしたらしばらく週二回更新できないかもしれません。
少しずつ立て直していきますので、もしよろしければブックマークなどで更新を見守っていただければと思います。
また評価の方もよろしくお願いいたします。




