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社交界の噂話

あとから会話を足したせいで少し長めになってしまいました。

2000字以内で納めたかったのですが

 結論から言うと、お茶会はとっても楽しかった。主催者のマリエットさまは流石にあちらこちらのテーブルを行き来していてゆっくりとお話出来なかったけれど、その分ロザンナさまとシャーロットさまとはいろんなお話が出来た。


「ミシェルさまは初めての社交だとお伺いしましたわ。おうちではどのようなことをされて過ごされておられるのですか?」

「ええ、お恥ずかしながら体が弱かったもので、ほとんど家から出ずに過ごしておりましたの。

 幼いころは本当にすぐ熱を出していたので、家族とお茶をするか読書をすることくらいしか出来ることがなくて……庭に出られるようになってからはもっぱらお花の世話をして過ごしてますわ」

「さすが王家御用達の花卉農場をお持ちのご令嬢ですね。

 既に品種改良にも成功されていると聞いてます」

「有難いことに自分用に改良していた品種が王女殿下にお気に召していただいて、王立公園にも植えさせていただきましたの」

「リボン・フルールでしょう? とても可愛らしいお花ですわよね」


 お会いするのは初めてなのに、わたしのこともある程度は知ってくれていたようだ。そうするとわたしがまったく無知のまま来てしまったのが申し訳ない。ロザンナさまとシャーロットさまのおふたりは元々顔見知りだったようで、気まずくない程度にわたしにも話を振ってくれる。お陰でわたしはリラックスして会話を楽しむ余裕があった。

 そこでわたしは気になっていたことを訊ねてみることにした。


「あの、わたし社交が不慣れでしょう?

 本に出てくるようなイメージしかありませんの。

 実際のところ、社交界ってどんな場所なのでしょう? 流石に小説に出てくるほど人間関係がドロドロしているとは思ってないのですけれど、やっぱり少し怖い部分もあって……」

「ミシェルさまは初心でいらっしゃるんですね。

 そうですね、確かにどこの家のどなたが付き合っているとか、お別れされたとか、ご結婚間近といった話はよく聞こえては来ます。私たちのような年頃だと、特にね」

「でも、勿論それだけではありませんわよ。男性だけではなく女性のお知り合いも増えますし、恋愛小説ほど異性のことばかり気にしているというわけでもありません」

「あ、そうですよね。わたしってば頭でっかちで……」


 先にデビュタントした経験者から夜会やお茶会の感想をたっぷり聞けたのは幸いだった。なにしろわたしの社交界の知識と言えば、小説の中に書いてあるようなやたらとドロドロとした愛憎劇か、心配性の両親から聞かされる上っ面を撫でたようなものしかなかったからだ。

 いくら若い男女にとっては結婚相手を見つけることが最大の使命とは言っても、みんな自分の生活や仕事もあるから四六時中恋のさや当てに勤しんでいるわけはないだろうし、だからと言って利害関係のある人間たちが集められてダンスや食事を楽しんで終わりと言うこともないだろう。


「流行が生まれるのも夜会なことが多いですしね。

 そうだ。ミシェルさまのデビュタントのドレスもパーティで話題になってましたよ」

「あのドレスはとても素敵でしたものね。ミシェルさまが妖精姫と呼ばれるのも納得できる美しさでしたわ」

「妖精姫、ですか?」


 まさかの自分の知らない呼び名を出されて驚く。しかも、わたしは知らなかったけれど、シャーロットさまはデビュタントパーティにも参加していてくれたみたいで、二重に驚いてしまった。

 それどころではなく参加してくださったお客さま全員に挨拶出来なかったとはいえ、なんだか申し訳ない気持ちになる。


「今までほとんど人前に出ていなかったのでおとぎ話の中の存在のようだったのと、伝え聞く容姿が小柄でとてもはかない印象だというものが多かったので、そのイメージが合わさって妖精のようだと言われているらしいですよ」

「唯一存在していることがわかるのが、お花の新作を発表されるときのお名前だけなので、余計にそういうイメージになってしまったのもかもしれませんわね。

 外出を控えてらっしゃるからかお肌も白いですし、髪もとてもきれいな色で、物語の挿絵で見る妖精や精霊の姿に似ていらっしゃますから、間近で見ても名前負けされてなくて羨ましいくらいですわ」


 存在してるかわからない幽霊のような令嬢というのを、そのまま言うのは憚られるから同じように伝説の存在である妖精になぞらえて呼ばれている皮肉のようにも思えるけれど、名前負けしていないと容姿を褒められると悪い気はしない。少なくともロザンナさまとシャーロットさまは皮肉るつもりはないようなので、わたしは素直に喜んでおくことにした。


「まぁ、こんな風に大なり小なり誰かしらの噂話は聞こえてきますよ」

「どちらのご令嬢のドレスが素敵と言った話は同性同士でしか盛り上がれませんし、殿方だけとしか交流しなければ流行に乗り遅れてしまいますわ」


 そしてロザンナさまとシャーロットさま、それから途中で席替えをして令嬢だけで集まったテーブルで聞いた話によると、確かに婚約者のいない方はパートナーを探しに来てはいるものの、令嬢たちには令嬢たちの令息たちには令息たちのコミュニティもあり、その互いの間で流行のドレスやお菓子の話をする余裕もあるらしい。

 なにしろ夜会は長い。主催者が許せばいつでも帰れるとはいえ、朝方まで飲み明かしているような人たちもいるらしい。もちろん一晩踊ってはいられないので、間に仮眠をしたり、間食したりと結構自由に過ごせるようだ。


今週もありがとうございました。

お気に入りや評価をよろしくお願いいたします。

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