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いわくつき。  作者: 山手みなと
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[ いわくつき。] 骨董市のタンス

[第9話] 骨董市のタンス


私たち親子の趣味は、骨董市やアウトレットで掘り出し物を見つけること。

アンティークな家具を部屋のどこに置いたらオシャレに見えるか想像しながら週末の骨董市を楽しみにしている。

私の家の家具は昔から全てアンティークに囲まれて生活しているせいか、最新の流行りは一つも興味が湧いてこないのである...。

そんな家庭環境で育った私は、もはやアーティークマニアかもしれない...。


そんな私は、もうすぐ新婚生活を迎えようとしている。

「これからの人生の門出にタンスを買わないとな!!」

「タンスと言えば、嫁入り道具として買うのが昔からの風習なんだよねぇ〜!!」

だから週末には骨董市で買い揃えるつもりだ。

時期は早いけど、せっかく買うんだから味わいのあるアンティークが良いと思っている。


だが...。

まさか、そのタンスのせいで...。

あんな事になるなんて...。

その時の私には全く想像が出来なかった...。


骨董市に出掛ける日、朝から天気は嵐ような大雨...。

流石に外に出るのは危険だけど、週末の楽しみを先延ばしするのは何か嫌だなと思い、半ば強行突破的な感じで店に向かう...。


無事に到着したものの、何だか幸先の悪い日だと少し違和感を感じた...。

店に入ると、お目当ての物がたくさん並んでいて、そこには一際異彩を放つ100年物のタンス...。

しかも海外直輸入のようで、かなり味わい深い印象!!

ヨーロッパ風のモダンなデザインが気に入った彼女は、何かに導かれるように即決...。


店主からは、「お目が高い!」と褒められる一方で、「20年の間ずっと買い手がいなかったんですよ。」と、付け加えた...。

タンスは後日、発送してもらえるので、あとは家で待つだけの形となった...。


しかし、約束の受け取り日になっても配達業者が来ない...。

心配になった私は業者に連絡すると...。

「配達の車がアクシデントに巻き込まれまして、遅くなります。申し訳ありません!!」

「タンスの方は無事ですので必ずお届けにまいります!!」


しかし1週間経っても来ない...。

待てど暮せど一向に荷物は届かない...。

流石にお叱りのクレームを入れようとしたその時、店主から連絡が入り...。

「事情が変わりまして、タンスに " いわくつき " が発覚しまして、購入の取り消しを出来ればお願いしたいのですが...」と、急な申し出を受けた...。

なんか、身勝手な事を言われても購入手続きしたし、これは大問題!!


私は居ても立っても居られず直接店に乗り込む...。

店の裏手には私に届くはずのそのタンスが、なぜか鎮座している...。

何が起きたのか尋ねると、

「あの時タンスを積み込もうとしていたら、お札が出て来て、何やら怪しい感じがしたので専門の人に調べてもらっていました...」

「 " いわくつき " なのか判明するまでは中途半端に連絡はしないようにと専務に念押しされてしまいまして...」

「大変申し訳ありません...。」


「それは当時、王妃とされる方が、嫁入り道具として使っていた記録がありました...」

「しかし結婚直前、王家の財産を狙う盗賊によって王妃は命を落とされてしまいました...」

「その後海外では、このタンスに関わる怪奇現象が確認されていて、これは王妃の無念の思いによるものだという噂が広まっていました...」

「だから、無念を晴らすべく新しい持主が現れると何かが起きるらしいのです...」

「なぜ日本にあるのかは分かりませんが、供養をした後にお札を貼りつけたんですが、何かの拍子に剥がれてしまったようなんです...」

と、説明を受けた。


だが、そんな話し...。

誰が信じるか!

と、疑った...。

私にはそんなに霊感があるとは思ってないから大丈夫だと気にしてはいなかった...。

「それでもいいから買います!!」と買いたい衝動の方が抑えられなくて、購入取り消しのお願いを撤回してもらった...。

「あとは霊的現象が起きても店側は責任は取れません」と最後に忠告をしてきた。

結局、私の要望が通り配達してもらうことになった...。


数日後、無事に受け取ることが出来た...。

早速、リビングに設置してみる...。

想像通り、部屋がオシャレな雰囲気に変わった...。


しかし、夜になると...。

タンスから「カタカタ!」と物音が聞こえて来る...!!

気付いた時にはタンスは転倒していて、床にはお札が散乱...。

仕方なく立て直すと、お札も忘れずに仕舞い直した。

次の日もまた「カタカタ!」と物音が聞こえてくる...。

今度は引き出しの洋服が床にぶち撒かれている...。

その次の日も同じような現象が起きてしまう...。

「3日連続は流石にヤバイよね...。」

店主の言う通り霊現象が本当に起きた出来事だった。

「これが王妃の無念の怒りなのか...?」

「次は王妃の霊が出現してもおかしくない...」

これ以上は何が起こるか分からない!!

自分の身が危ない!!


思い返せば、初めて店に行った日は朝から荒れる様な大雨...。

で、頼んだ配送業者が不運に見舞われる...。

そして霊現象を今、目にしている...。

あの時、天気による違和感はこれだったのか!

買うな!という天の声だったのかもしれない。


そんな事が起きた数日後、旦那になる予定の彼が突然行方不明に...。

後に分かるのだが、彼は仕事で地方に行った際に山道を歩いていて足を滑らせて滑落。

そのまま帰らぬ人になってしまったのだ。


私のせいで彼が...。

店主の言うことを聞いていれば、こんな事にならずに済んだのに...。

彼女は気付いているかもしれないが、噂通りに、このタンスを買った持主は結婚が叶わないという " いわく " があるのだ。

恐らく王妃が幸せになれなかったから、誰にも使わせないように念をかけ続けているんだ。

このままでは、一生幸せにはなれない...。

「よし、タンスを手放そう!」

「アウトレットに売りに行くわ!」

そう言って、運び出すと、業者に配送をお願いした。

だが、運んでいる最中にお札が外に舞い落ちる...。

誰も気付いていない...。

無事に買取をしてもらった彼女はホッとした。


この事がきっかけで彼女は、骨董市で良い物があっても、それが " いわくつき " ではないかチェックする様なった。

古すぎたり、見えない所にお札があったりしたら絶対に買わないようにした。

特に雨の日は無理に買わない!!

そう決めたのであった...。

その一方、お札の剥がれたタンスの奥に眠る王妃は次の持主を待っているのであった...。

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